信じたいもの
リアルのプライベートが全く非充実です。
外に出た私を待っていたのは人々が逃げ惑う声と、それを楽しむように人やモノを襲うモンスター達の姿だった。ある人は壊れていく我が家をただ茫然と眺めており、またある人は逃げることに必死になって道端に落ちている食べ物を踏み潰している。今のところ道端に死体は転がっていないが、この様子だと私の想像が現実になるのも時間の問題だろう。
「警備兵は、街を守る部隊は?」
「いるよ!仕事してないんじゃないの!?」
「そんなことって!…あ!」
遠くを見ると、一人の男が狼男と攻防を繰り広げていた。人間の方は戦い慣れしていないのだろう。狼男の攻撃を流すことができず、傷を増やしている。それでも逃げることなく戦い続けているのは、後ろにいる家族たちを守るためだろう。
「加勢する!」
「バカ!赤子以下のあんたが突っ込んで行っても意味なんてないでしょ!?」
愛剣のシルシを手に取った私は男達の戦いに突撃しようとするが、少女に腕を掴まれて、正論で止められる。
「でもあのままじゃ、あの人死にますよ!?」
「あんたが突っ込んでも死ぬでしょ!ここはアタシに任せて、あんたは逃げ遅れた人をさっきの教会に避難させること!」
そう言うと、少女は剣を握り二人の間に割って入った。
…少女に言われたことは正論だ。実際のところはわからないにしても、この世界で観測した私のデータは赤子以下だという。
適材適所という奴だろう。私には私の、彼女には彼女の役目がある。そうやって、納得することに。
「きゃあっ!」
…納得しかけた私の耳には、先ほど突っ込んでいった少女の悲鳴が届く。
色々言われたが、彼女の攻撃も狼男には有効ではなかったようで、少女は攻撃に押し負けて建物に向かって吹き飛ばされてしまう。
建物にぶつかった彼女は一瞬意識が飛んだのか、目が開いたままではあるものの握っていた剣を落としてしまっていた。
──まずい!
狼男は舌舐めずりをしながら少女へと歩み寄っていく。辺りを見渡すが、少女を助けることができそうな人間は見当たらない。もし、何かできるとすればそれは。
…私だけだ。
ならば、何を考える必要がある。目の前で散りそうな命があるとして、それを守れるのが私だけだとして。
だとしたら、だ。やることは一つしかないだろう。
駆けろ、城花。命を懸けて!
「わぁぁぁぁっ!!」
シルシを手に、狼男に突撃する。適材適所の判断をしろというのならば、これが的確な判断という奴だろ!
結果がどうなろうと知ったことか。私は、私の判断を信じてやる──!!