とんでもないポンコツ
ようやくあらすじ部分に追いついた気が…
喫茶店で会計を済ませてもらい、その後連れられたところは大きな教会だった。高級感のある階段を一段ずつ上って中に入ると、奥にある神様らしき人の像と目があった気がした。
「ほら、こっちだよ。勇者様」
結局少女の中で、私のあだ名は『勇者様』に決まったようだ。特別恥ずかしくはないものの、むず痒い気持ちになるのは考えものだ。呼ばせるのを辞めさせるべきか、私の方が慣れるべきか。
少女に呼ばれるがまま付いていくと、そこには大きな水晶があり、その向かいに胡散臭い格好をしたお爺さんが椅子に座っていた。
「この方が?」
「そう、鑑定士って人。本来は赤子とか体が動かせない人に代わって他人のステータスウィンドウを見てくれるの。ほら、ステータスなんて個人情報の塊なんだから見られたら困るでしょう?」
そうなのか。前に見せてもらったときは中の文字なんて見てなかったからな。
説明を受けながら、私は言われるがままに水晶の上に手を翳す。すると水晶は虹色に輝き、やがてその上に見覚えのある透明な板が浮かび上がった。
「これが、私のうぃんどうなんですね」
「だろうね。で、肝心の数値は…」
文字は読めないが、何だかバツ印が一杯ついている気がする。まさか丸かバツかしか書いてないのだろうか。
「ステータス、オールX!?」
バツ印の数を数えていると、鑑定士のお爺さんが椅子から飛び上がるほどに驚いていた。何が何だかよくわからないが、バツ印を見て「えっくす、えっくす」と呟いている。この世界ではバツ印をえっくすと言うのか。妙に小洒落た名前を付けるんだな。
しかし、こんなに驚くということは余程特別なすてーたすという奴なんだろう。平均より高いのだろうか、低いのだろうか。
「おーるえっくすって、どんな感じ何ですか?良いんですか、悪いんですか?」
少しわざとらしく尋ねてみると、お爺さんは口をワナワナと震わせながら言葉を紡いだ。
「わ、わしも長年鑑定士をやってきたが、こんな数値など見たことがない…」
「はい」
「Xはな、測定不能という意味をもっておる。大抵赤子でも、三つ以上はきちんとした数値を持っているというのに…」
「…はい?」
「あんたはオールX、全てが測定不能、数値にもならないステータスしか持ってないということじゃ…」
「あの、それって一言でまとめると?」
嫌な予感を抱きつつも、一縷の望みをかけて問いかける。お爺さんは震える口で一度深呼吸し息を整えると、大きな声でこう伝えてくれた。
「あんたは、赤子以下のとんでもないポンコツってことじゃ!」
…。
……。
何ということでしょう。
どうやら私は、この世界では赤子以下の存在らしいです。