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異世界勇者の人助け  作者: 鳥羽こたつ
1章
3/125

失礼、はしゃぎ過ぎました

とりあえず失踪はしませんでした。

引き続きよろしくお願いします!

「魔王を倒した勇者ぁ!?」


洞窟を出て、案内されるがままやってきた街の喫茶店で。

私はここまで連れてきてくれた少女に軽く自己紹介をすると、名前や出身なんかよりそのことに驚かれた。


「はい。自称ですけど」

「そりゃそうでしょ…。え、それ本気で言ってる?本気で言ってるなら笑えないんだけど」

「笑えるか笑えないかはわかりませんが、本気です」

「わー…」


少女はまるで可愛そうなものを見る目で私を見る。

何となく、そんな反応はされるんじゃないかと思っていた。ここに来るまでの道中を振り返るが、洞窟から街までの道も、ましてやこの街さえも私は見たことがなかった。

一応世界を回ったが、こんな人で溢れかえるような賑わった街ならば記憶に残っているはず。それなのに全く知らないということは、ここは私の知る場所じゃないってことだろう。それこそ、死後の世界って可能性だってある。

ともかく、ここは魔王がいない世界だというわけだ。そんな世界で勇者だのなんだの素っ頓狂なことを言う人間なんか、変な妄想癖がある奴に違いない。目の前の少女にとって、それが私なのだろう。


「えっとね。じゃあ、その、勇者さんとでも呼べば良いのかな?」

「いえ。公共の場でそう呼ばれるのは恥ずかしい思いをすることになりそうです。城花(シロカ)でお願いします」

「あぁ、そういえばそんな名前だったね。ところでシロカ」

「何です?」


先程までの可愛そうな視線が止み、少々真剣な瞳で私を見つめる少女。


「ちょっとでいいからシロカのステータスを見せてもらえないかな?」

「え?カスタード?」

「言ってないから。ステータスだよ、ステータスウィンドウ!」


何なんだろう、その何だかウィンドってのは。風の魔法か何かだろうか。


「何だかよくわかりませんが、浮いてみせれば良いですか?」

「さっきから何の話をしてるの?ほら、こうやって…」


少女は宙をなぞるように指を動かし始めた。すると、『ふぉん』っという間の抜ける音と共に文字が書かれた透明な板が現れる。


「おぉぉっ!?」

「流石にできるでしょ?」

「え、え、え。凄い!今のどうやってやったんです?」

「こうだけど」


指を動かすたびに出てくる謎の板。どんな魔法なのだろう。効果はよくわからないが、とにかくかっこいい!


「凄いです、かっこいいです!その板触っても?」

「別にいいけど。…そんなに興奮すること?」

「わぁぁシャワシャワしてるぅ!」


まるで水面に手を入れたときの感触だった。何だかそれが楽しくて、私はその透明な板に何度も手を突っ込んだ。おかげで満足した時には、少女以外のお客さんにも冷ややかな目線を向けられることになったが。


「…失礼、はしゃぎ過ぎました。それで、その何とかウィンドですけど」

「ステータスウィンドウ」

「そうそれ。それってどうやって出すんです?」


少女がやって見せたように指を動かすが、あの透明な板は出てこない。やる気が足りないのだろうか。それとも、他に条件があるとか。


「どうやってって、親から教わったりしなかったの?その歳で?」

「教わったことの中には含まれてないですね」

「教育放棄?」

「違います。とにかくわからないので、教えてください」

「普通に出そうと思えば出るでしょ。やってみ」


その普通がわかれば聞いていないんだけども。

ともかく言われた通りにやってみる。透明な板よ、出ろ。そう祈りながら必死に指を上下に動かしてみるが、私の目の前には何も生まれない。


「…これって、誰かが私の分の板を出すことはできないんですか?」

「板?…あぁ、ウィンドウね。そうだなぁ、鑑定士の人がいれば出してもらえるんじゃないかな」


鑑定士だと?また何かよくわからない言葉が出てきたな。さっきのうぃんどうとやらを品定めする人がいるということだろうか。

とにかくだ。自分ではそれを出せない以上、その鑑定士とやらを探すしかない。見せろと言うことは、あの板がこの世界では重要なのだろうし。


「わかりました。それではその鑑定士とやらを探しましょう。恐らくそうしないと、私のうぃんどうは見せられない」

「本気で出し方がわからないってんだ…。いいよ、じゃあ行こうか」


私と少女は席を立ち、飲み物の代金を支払おうとする。

が、それはできない。


「あの」

「どうしたの?何だかすっごく情けない顔をしてるけど」

「お金、出してもらえませんか…」

「……」


わかってる。わかってるからそんな冷ややかな視線を向けないで。仕方がないんです。手元にはどう頑張っても使えなさそうな私の国の貨幣しかないんです…。

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