蒸気機関を作る
王妃に送ったドレスの査定が出たらしい、贈り物だったので金銭がもらえる期待はしていなかったのに。10万円で買った商品を送ったら、代官のもとに金貨3000枚が送られ、代官が手数料や税金の分を抜いて金貨1000枚が帰ってきた。金貨一枚が一万円なので、100倍になって帰ってきた。10倍になればいいかなと思っていたのでだいぶ多い。領主は農村の開拓のための借金を返済し終えた。金貨1000枚は、新たに事業をしていくための予算になる。このまま王族や貴族相手の商売をしているだけで目的とする金額まであっという間に貯まるのではないか。向こうの査定では、金貨一万枚という考えもあったが多すぎるという意見があった。
王女の「では、他に作れるところがあるのか」との問いに答えられなかった。
元の世界への帰還に必要なエネルギーを貯めるのが当初の目的である。ただ、この世界で使われるエネルギーが少なすぎるので、なかなかエネルギーがたまらない。なので強制的に産業革命を起こして、帰還に必要なエネルギーを作ろうとしている。元の世界からこっちの世界へ物の移動はできるが、代わりに代金を要求されている。1kgを送ってもらうのの1万円が必要になるし、その商品の価格も上乗せされる。そのお金はこっちの世界での商売で貯めるしかない。変わりの代金は金貨で払っていて、1グラムを一万円として元の世界に送っている。
どうやってエネルギーを貯めるのか、当初は水車による発電で賄おうと考えていたが、このままでは何年かかるかわからない。蒸気機関による、蒸気タービンを回して発電させるのが最終的な目的になる。そのためには鉄を量産する必要がある。一度蒸気機関にかかる費用を告げると代官に断られているので、利用しやすいものを作る必要がある。
この資金の使いみちは、商品の流通のスピードを上げるための車を量産する。といってもエンジンが作れないので、人が曳くか馬や牛に曳かせるかというもの。そのために製鉄の人員を増やして大量生産することにある。この世界での鉄は鍛鉄である、鉄を完全に溶かし切る事ができないのである程度柔らかくなれば叩いて目的の形にしていた。もっと高い温度にして鋳型にはめて整形する鋳鉄を作る必要がある。
ベアリングとタイヤは元の世界から買うとして、それ以外の部分を全部作ることで一定の需要を賄おう。溶接機と送風機、放電や電熱器で鉄を加工する。
エコール・ポリテクニクつまり、親方のもとに徒弟制度として学ぶのではなく、共通する部分を学校という形式で一様に学ばせる。それを教えるのを神官に押し付けよう。
集められた農民は照明を見て、神官に疑問をぶつけていた。この農村では新しいものを見てもまたかといってあまり驚かなくなっていた。よその農村から来た人にとっては、LED照明がたいそう珍しかったようだ。「あれは悪魔の魔術による光か」と怯えて神官に詰め寄る一幕もあった。
神官から照明について説明を求められることになる。
「農民が照明を見て不安に駆られている、だから納得する説明をせよ」とのことだった。
今まで照明で驚くことがなかったので、近くにいた農民に聞いてみると。
「驚かないことを諦めると自然と驚かなくなった」そうだ。
照明に使っているのはLEDだったが、その説明することの困難さから白熱電球の説明でお茶を濁した。現代の照明の歴史でいうとガス灯、アーク灯、白熱電球、蛍光灯、LEDという順番で発明されている。
改めて神官が説明を求めてきたので答える。
「ものが熱くなると光を発する、それはオイルランプと同じようなものだ」
「つまりあの明かりは熱くなって光っているのか」
「いや、あれは2世代後のもので、仕組みはもっと効率的になっていて違うな」
「では一体何なのだあれは、ちゃんと説明をするのだろうな」
「ちゃんと説明しようとすれば、光とはなにか、物質は何でできているか、エネルギーとはについて語らなければならない」
「では、今すぐ教えろ」
と話があったが、教え得る代わりに交換条件を考えた。
領主に押し付けられた各地の農村から追い出された人びとがいる。その人々は織物工場の人員に当てるつもりではあった。だが、適性から外れる人が出てきた。織物工場では長時間同じことを正確にできる適性が必要になる。そういった仕事に向いていない人をなにか別の仕事を与える必要があった。その適性からハズレた人を、神官を先生にして学校で学ばせてみようと考えた。ただし、神学校ではなく教える内容は物理と数学と工学の基礎だ。
それらを鍛冶や大工などに徒弟として送り込み、作りたいものを作らせよう。
神官は、何かに付けて物理の話を神の言葉として知りたがっていた。なので、神官は断れなかった。
参考
エジソンと電灯 (世界の伝記 科学のパイオニア) 玉川大学出版部
やっと必要なパーツが揃いそう。




