蒸気機関
「もうここ、に住むって決めた。ここは快適だし、いいでしょ?」
「それはだめです、領主様の了承を得ての行動ですか。」
「新しいものについて調べるよう、領主による命令は受けているからだいじょうぶでしょ。」
領主の娘と、メイドの会話であった。なおメイドは代官の人間なので、代官の意見を含んでいるのだろう。
雲行きがおかしくなっているのを感じつつ、余っている家を貸すという方向に進めてきたい。
「住むということはこの家を借りたいということでしょうか。金額は一日1金貨でどうでしょう。」
「えっ金を取るんですか、しかも、タダ同然で手に入れたような家を借りるのに一日1金貨とかないでしょ。」
「設備に100金貨ほどつかったので、お手頃な価格だと思いますが。領主への説明のための経費として請求しましょう。」
「ああ、なるほど」
なんの商品が売れるのかがわからなかったので、元の世界そのママを持ってきた。結局の所、インフラが足りないので使えるものはやはり限られている。電気やガス、水道ごと持ってこれない。「領主よりいい生活をしている領民」と言われてきた。が、そもそも最低の生活が上がればそんな事は言われなくなるだろう。利用者が増えるとその分だけ使える電気が減るので、使っているうちに停電が起こるだろうな。水車以外の動力の確保が必要になってくる。
この世界に来て初めてなんとなく人間らしい生活ができるようになったと思う。健康で文化的な最低限度の生活。ただそれがこの世界の常識からかけ離れていた。この世界の常識を書き換えていこうと思う。
ただ、高価な機械については不満があるようだ。
「こんなものがなくても生活はできる。そんな贅沢は領主に対して金を奪おうとしているだけでしょ。私はいずれ、領主家から出なくてはならない。そうしたら領民と同じような生活になる。こんな物があっても買えなくなるのよ。」
「この機械が贅沢ならば、それはこの世界がまだ発展していないから。楽をするために技術は発展してきた、楽を目指さなければ世界は発展しないと思う。この世界は元の世界に比べれば技術は発展してない。それはこの世界の発展が全体的に滞っているから。」
「誰もがこれを利用することが可能になるのか。ところで、あなたは貴族や王族なのか、こんな機械を普通に使っているなんて。」
「ぶっ、私は貴族でも王族でもない。母国に王はいたような気もするが、貴族はいないはず。他の国にはいると聞いたことがあるがよく知らない。」
「つまり、あなたは自由民か平民ね。丁寧ではなくもっと粗雑に扱うべきだったのね。職業は何なのかしら、それとも金持ちなのかしら。」
「(理工学部の大学生といっても通じないのか)技術者を養成する学校の生徒だ(と言っておこう)。」
「ちっ職人階級、それで身分証が見習工ね。」
地球でも、世界は貧富の差があって問題にする人やそうでない人もいる。でも、この世界では単純にエネルギーや金銭の問題で貧富の差があるのではなく単純に技術がないだけである。誰かが言っていた気がする、奴隷が必要なのはその次代の技術力が低いからである、技術が上がれば奴隷は必要がなくなる。ならば技術を無理やり発展させてしまおう。
「実は作って欲しいものがある、けれど作れる人がいるかが気になっている。」
そう言って、蒸気機関の模型をとりだした。
「こういう玩具を作ってるところならば知っているけど」
「この大きさではなくて、もっと大きくしたものを作って欲しい。大きさでいうと家ぐらいかな。はじめはもっと小さいのだで試してから徐々に大きくしたい。」
「そもそもそんな大きさのもの何に使うのよ。」
「燃料は必要だけど、水車の代わりになるはず。水車と違って水路がないところでも使えたり、出力の自由度が大きい。」
機械を導入して一気に発展させるという目標もあるが、使う人がいなければ、修理する人がいなければいずれは廃棄されるだろう。この世界の技術で作れるもの、新しい知識を導入すべきものを選択する。
水車動力にはいずれ限界があるが、蒸気機関を作るにはまだ問題がある。歴史的には大砲と時計が先にできていた。
参考
精密への果てなき道:シリンダーからナノメートルEUVチップへ、サイモン ウィンチェスター (著)
コロナの影響で資料集めが難しいのと、どうも楽しい気分で書けないので間が空いてしまった。やや不定期になるかもしれない。




