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ほほえみ社長  作者: とみた伊那
53/54

53.それから・後編

桃屋の『ごはんですよ』にそっくりの男。何のためにやってきたのか。

 

そう思っていた時、本社から業務連絡のFAXが流れてきた。

     退職……中くらい部長

         薬局長M

さらに追記として、今後はこの人たちと仕事に関しての話をしないように、という注意が書かれていた。


こういうことが起こったらしい。

Mさんが薬局長をしていた店は、この会社では一、二を争う売りくらい上げが良い。

そのMさんが会社を辞め、その店のすぐ近くに自分で店を出した。患者さんの多くも、そのMさんの新しい店に移ってしまったらしい。そしてそれに対して資金を出し、共同経営者となったのが中くらい部長である。


また反乱軍か。


今までMさんとはそこそこ仲良くしていたので、そのFAXを見て私は一度、新店にお祝いを持って訪ねていった。別に仕事の話をする訳ではないので、これは問題ない。

Mさんの新しい店はぴかぴかで、あちこちにお祝いの花が飾られていた。

「あの会社だと、やはりできることに限界がある。僕は他にやりたいことがあるから、自分で薬局をやることにした」

そう語るMさんの目は、子供のようにキラキラしていた。

男は夢が無いと生きられないのだろうか。


いや、そうではない。ここにいた。

なぜか私はこの男から、その生き方の中に夢のカケラも感じられない。

   『桃屋のごはんですよ』


あれからこの男は、反乱した中くらい部長の後釜に収まった。

あちこちの店に顔を出しては、職員をアゴで使っていくようになっていった。そして私はそれ以来、散々この男に苦しめられるようになっていく。

しかしこのことはこの話とは関係ないので、ここでは触れないことにする。


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