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ほほえみ社長  作者: とみた伊那
34/54

34.金のペン・銀のペン

さてここがABC薬局となって、ジュンちゃんに変わる新しい薬剤師がやってきた。中堅の男性である。今度はこの人と一緒に仕事をすることになる。


「よろしくお願いします」

新しいABCの人と一緒に仕事をしてみて、この夢野薬局で働いていた数か月の間に、すっかり自分の身体に貧乏が沁みついてしまっていることに気づいた。


「窓ガラスはこうやって古新聞を濡らしてこすると、ホラ、それだけできれいになる」

「ヤメロー! ちゃんとしたガラスクリーナーを買ってこい」


「薬局の郵便で来た封筒はのりしろの部分をきれいにはがし、ひっくり返して糊で貼ると、ホラ、もう一度使える」

「ヤメロー! 本社宛ての書類をそんな封筒で出すな」


「裏が白いチラシを家から持ってきてコピー機に入れると、コピー用紙が節約できる」

「新しい紙を使え! 」

というやりとりが何度かあり、今までの生活がいかに貧しいものであったのか、この頃になってだんだん分かってきた。


そんなある日、その薬剤師が

「ほら、これをあげる」

と二本のボールペンを差し出した。


おおお! まぶしい。

それは金と銀のインクの入ったボールペンだった。その時はそのボールペンで何をするというのではなく、その金と銀の輝きが貧乏から抜け出した象徴、借金の無い生活の鍵のように見えた。


かと言ってそのボールペン。

金と銀のインクなど、普段ほとんど使わない。今は私の机の引き出しの厄介モノとなっている。ボールペンは変わらないのに、今はちっともキラキラしていないように見える。

そろそろ捨ててしまおうか。


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