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ほほえみ社長  作者: とみた伊那
25/54

25.ジュンちゃんとの仲が悪くなっていく

 このまま閉店して辞めるにしても、私たちは未払いの給料を受け取らなければならない。


「もっと強く社長に言いにいこう。借金は、強く言った方がもらえるものだから」

しかしジュンちゃんは、気が進まない様子で動かない。私は一人で事務所に突撃した。

「一体給料を払う気があるのですか」

もちろん社長はいつもの天性の微笑みで丁寧にあやまる。そして進展はない。それでも給料を払って欲しいという意志を伝えていくことは、意味があると思う。


また、労働問題などの本を読んで調べて

「こういう労働組合に相談に行こうか」

と、ジュンちゃんに提案してみた。しかしジュンちゃんは乗り気でないため、私が一人で組合に個人加入し、その後何回か相談に乗ってもらうようになった。


ここでジュンちゃんが動かなかった理由は

「ダンナがいるから」

だった。

「ダンナが今、社長とうまくやっているので、そこでいろいろ言って問題を起こしたくないの」

と、ため息をついた。


ジュンちゃんのダンナの日出夫は、今はここの二階で整体院を開いている。しかしお客さんはほとんど訪れず、ほぼ一日中ソファーに座り、社長と世間話をしている。日出夫の給料は歩合制だから、当然ほとんど収入は無い。

私は最初の頃は整体院に手伝いに行っていた。しかし、いくら手伝っても家族がお茶を煎れた時のように当然という態度だったので、日出夫に対してだんだん良い印象を持たないようになってきていた。

それに加えて何も働かず、ほとんど稼がない人のために、私が当然もらう給料の要求まで遠慮しなければならないのか。


「ジュンちゃんは薬局長とは名ばかりで、ダンナのことばかり考えている。一緒に働く人のことなんか、どうでもいいんだ」

ついに私は切れた。

そしてこの頃から、ジュンちゃんとの間に隔たりを感じるようになってきた。


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