13.第三の男・ダンディー黒岩
この頃、私たちには強い味方がいた。
ほほえみ社長、ジュンちゃんのダンナの日出夫に続く、夢を追うもう一人の男、ダンディー黒岩である。
彼はとある薬問屋の営業所の所長、この業界ではかなり偉い人である。どの業界でも、素人がいきなり始めてできる商売は無い。後日話を聞いてみると、どうやらこの人物がほほえみ社長に力を貸して、夢野薬局開業に踏み切れたらしい。
夢野薬局開局にあたり、機械の導入、薬の手配など、細かいところまで指導してくれたそうである。
給料の遅配とか薬剤師会の入会金の不払いなど、私たちがちょっと元気を無くしていた時に
「最近どう? 」
と、フラッと様子を見に現れた。沈みがちな顔の私たちに向かって黒岩は言った。
「俺は最初に会った時に、この社長が気に入った。この人の人柄を見て、この人なら応援しようという気になったんだ。なあに、いざとなったらここの薬の支払いの五百万や六百万くらい、俺の自腹を切ってやる。そのくらいの気持ちで俺は仕事しているんだ」
か、かっこいい!
男らしい!!
私はこの時、初めて本当に男らしい人物というものに出会った気がした。
「それに、ここで働いている人たち。この人たちなら大丈夫、うまくやっていかれる」
そ、それってもしかして、私たちは褒められている?
久しぶりに私は、かなり気をよくした。
その隣でジュンちゃんは
「毎月いくら返すとすると、ローンが終わるまでにン十年……」
考えることがちっちゃい。




