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「晴明どの!書状が来ておりますぞ!!」

「ああ、ありがとう。・・・む、町の長者様ではないか」

「それでは、某はこれで」

「うむ、ごくろう」


ここは安倍晴明の勤める宮中陰陽寮。昨日のうちに都の見回りや宮の占いなどを終えた晴明に手紙が届きました。



『お久しぶりー。町の長者だけどー、なんか面白そうなもん手に入れたんだー。いいだろー!んでさ、昔の貸しを・・・ってわけじゃないんだけど、ソレについて色々聞きたいんだ?ちょっと調べてくんない?そっち送るから。あとよろ(意訳)』


「ふむ・・・」

安倍晴明はイラっとしながらも考えます。

『もう送ってんじゃねーか』

と。


「ごめんくださいませ!安倍晴明さまにお届け物にございます」


「あぁこちらです。中身はなんでしょ・・・」

絶句。

「『桃』とのことですが」

まぁ確かに。

臭いも見た目も、まぁ桃だ。

でかさ以外はなっ!


「まぁ、桃ではあるか」

しかし世に名前を轟かす安倍晴明は落ち着いて受け取ります。胸中を色んな思いが渦巻いても面には出さないのが世渡りのコツでもあるからです。



そうして、安倍晴明は存在感のある桃を受け取るとそれが何かを調べることにしました。

「ふむ、中を開けて見たいが、まずは外から調べるか」

幸い宮には植物に詳しい薬師や作物に詳しい百姓などもいます。

そんな彼らにも意見を聞きつつ出した結論は

『でっかいけど、ただの桃』でした。


「ふむ・・・例えば中に人でも入っていたら面白いのだが」

安倍晴明はやや残念に思いながらも、その存在感のある桃を帝に見せました。危険がないのであれば珍しいものですからね。


「のぅ晴明や。陰陽道には鬼を使役する術があると聞いたのだが、鬼をつくることは出来ぬのかね」

「はっ。式神と申しまして意のままに仮初めの下僕を作ることは可能でございます」

「では、もしこの存在感のある桃で式神を作ったら、どうなるのかの」

「桃とは本来聖なるもの。鬼を払い、長寿をもたらし、都をより立派に導く存在になるやもしれません」

「では、そのような式神を作ってはもらえぬか」

「尽力いたします」



それから安倍晴明は桃を自宅に持ち帰ると式神化の術を使いました。

しかしすぐには生まれてこず、幾年もの年月が流れました。



ーーーーーーー


「なんだろね、この干物」

説明書には『触るべからず』とありますが、蔵の掃除のためにはどかさないといけません。


「壊れないようにそぅとやるしかないね」

その時です。

ぴし。


干物から嫌な音が。

「ん?なんだい?」


近づこうとした瞬間

ばりん!


と干物が砕け散り、中から全裸の青年が現れました。

「我が名は桃の化身、桃太郎。この世に巣くう鬼を祓うものなり」

「は、ははー!ありがたや!ありがたや!」


掃除のお婆さんは平伏して桃太郎の誕生を見届けたのでした。

後にお婆さんは語ります。

「それはそれは桃太郎は立派だったよ」

と、にやけ顔でしたけどね。



ついに桃太郎が誕生!

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