3000対20000を覆す能力。んなもんあるの?
私は長い事王宮で仕えている騎士だが、召喚者を呼び出すのは初めての事である。王族を安全に守るために召喚について書を調べたり召喚術に詳しいものから話を聞いたりした。召喚には様々なリスクを背負っている事が分かった。
まず、原型がとどめているかどうか。中には五体不満足で召喚に失敗することもある。他国では召喚に失敗したが聡明で知識が豊富な召喚者がいるという。
次に、言葉が通じるかどうか。召喚の慣れていないもので才能がある者は人型の召喚に成功するが、言葉が通じないことが多々ある。この場合、こちらと向こうの言語を統一するため長くて一ヶ月以上の期間がかかる場合がある。召喚されて言葉が通じないとなると暴れ出す召喚者もいるそうだ。
最後に、巻物の能力が使えること。これは王族の安全は確保されるが、達してないともう一度召喚となる。
この巻物は現世界で生まれ育った者には何も意味を持たない白紙の巻物である。誰が何のために作ったかいまだ不明であるが、いつの間にか白紙の巻物として市場に流通していた。判別の方法は巻物の最後に特定の印が押されている。なので使って最後に気づくこともしばしばある。子供の小遣い稼ぎで最後まで開いて丸める仕事もなんてのもある。
さて、今回の召喚はほぼ成功といえる。なにやら隠していることがあるようだが、知能もあるし礼儀の使いどころもわかっている人物である。ただ最後のこの巻物について使える能力であれば最高である。
使えない能力とは、調べたもので意味が分からなかったのが【直列回路を並列回路に変える能力】というものであった。もちろん私も何を言っているのかよく分かっていない。召喚者は声を大にしてその能力のすばらしさを語っていたが元の世界に帰したらしい。
「なにこの能力チートじゃね?」
巻物を渡して中身を確認しているキョウスケという召喚者の第一声は聞き慣れない能力であった。
「キョウスケ。ちーととはなんだ。」
「私たちの世界でズル。反則といわれるほど強力なという意味でよく使われます。」
それほど強い能力がでたのか、だが
「すまないがどんな能力なのだ。教えてくれないか?」
召喚者本人が強いと思っても我々の世界で通用するものかわからない。
「ちょっとまって、うお!マジで凄いなこれ。それじゃあ騎士さん?ほいっ」
そういって巻物をこちらに下手で投げてきた。もう少しで落とすところだったが中身を確認して愕然した。
「おい!これはどういうことだ!」
「どうしたライネット。何か不都合なことでも書かれていたか?」
「王様、こちらをご覧ください!」
そういって投げ渡された巻物を王様に広げて見せた。
巻物の中身は白紙のままだった。
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「それじゃあ、いまから私の能力を説明しますね。能力は【鏡の能力】だそうです。」
「鏡?とはあの姿を写す鏡のことか?」
「ええそうです。まず第一に・・・」
そういって特に何も言わずに目の前の騎士と同じ姿になれと念じたら、目の前の騎士が目を見開いた。
「私が目の前にいる・・・」
「ライネットが二人おるな・・・。」
「こんなことって・・・」
王様たちもびっくりしているようだ。自分も手や足下をみて目の前の騎士と同じ格好になっているのを確認した。顔は確認できないけど、髭はあるね。だけどこれはちょっとデメリットがあるんだよなあ。
「姿形が同じになるのですが声までは同じにならないようです。」
能力【鏡】だからね。姿はそっくりでもそれ以外は同じにならないよ!まあ、この能力だけでもかなり強いよな。他国の要人や側近になって暗殺も可能だ。
「ちょっとまってくれ。それじゃあこの巻物に説明が付かないじゃないか。」
「そっちを先に話しますか?まだこの能力の先があるのですが、まあいいでしょう。次の能力にも使えるし。」
そういって、今度は自らを鏡と思い折り畳まれると思いこむ。そうすると・・・
「・・・姿が消えていく。」
「この能力は・・・」
そう自らを透明にすることが出来る。鏡は角度を変えると姿が見えなくなる。そういうことらしい。
「姿は消えますが声は物音は消すことが出来ません。しかも、私の声のする足下をみてください。」
そういうとその場で足踏みを行った。その結果。足下の絨毯にしわが寄っていく。
「なるほど、そういう弱点もあるのか」
「キョウスケよ。貴様は先ほどこの能力の先があると言ったな。」
「ええそうです。この先の能力こそ、この国を勝利でおさめるのに必要な能力です。それは」
そういってライネットと呼ばれていた目の前の騎士に近づき、額からつま先まで手を触れないくらいでなで下ろした。
「ライネットが消えたぞ!」
最後の能力、この鏡の能力を他人に使うことが出来る。