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得居奏太郎は考える。

 教師はどうあるべきか。俺は教師ではないがあのくそ教師を見ていると考えさせられる。

 命を張ってまで生徒を守る教師か。

 学校のカリキュラムを無視して生徒のやりたいことをやらせる教師か。

 はたまた生徒に現実を押し付ける教師か。

 しかし、考えるまでもいかなくとも思春期の俺達をどうにかできる広い心を持った教師をを所望しているのは案外俺だけではないのかもしれない。

 もしかしたらそんな教師に教えを乞うたとしたら生存競争の激しい社会では生きてはいけないのかもしれないが、武之宇出茂由という教師を知る俺からすれば、出来るのなら今すぐにでもその教師の存在しない世界に転生したいものだ。

 武之宇がどのような教師なのかそれは今俺が置かれている状況を見ると大体の察しはつくだろう。


 「さて後輩君。君の推理を聞かせてくれたまえ~。」


 詳しいことは前話を見ていただくことにして。俺は今から寮へたどり着くための方法をその推理を聞きたいと言う彼女、しのりん先輩こと篠野木志野木にこの話の全貌あのくそ教師の出した課題のなぞ解きをしようとしているしている最中だ。


 「この際すでに答えは出てるのですが...。先輩が推理を聞きたいということなので少し話は長くなりますがいいですか?」

 「もちろんだよ。面白いものが見られるのなら私はそれで満足だ。」

 

 面白いものかどうかは俺にはわからないが、彼女がそれでいいというのならそれでいいのだろうと俺は思い話を続ける。


 「まず最初に武之宇がどんな奴か。」

 「頭つかって人を困らすことが好きな教師とは思えない屑だね。でもあいつが何かするときは何かの目的がある。」

 

 その通りだ。武之宇は人を操り人形としか思っていないような奴だ。それでも教師を続けられている理由。それは目を付けた生徒を将来日本を背負うことができるような人材に育て上げるその敏腕にあると言ってもいいだろう。

 そのほかにもたくさんの噂や説が流れているが今は関係ない。


 「今回のあいつの目的は俺をしのりん先輩に会わせることだったのでしょう。」

 「なるほどね。でも他の人っていう考えはなかったのかい?」

 「それも考えましたがありえない。いろんなところを聞いて回りましたが共逢学園を知っている人は少なかった。地元の高校なのになぜなのだろうと思いましたが全部武之宇の犯行によるものだろうという結論に至りました。」

 「それはなぜ?」

 「俺は一度受験のために武之宇に共逢学園に連れてこられました。そのときは車で道もなんとなく覚えていました。だからわからなければ人に聞けばいいと思って学校を探していました。」


 道はうろ覚えだったが何とか目的の場所に着くことができた。

 しかし、武之宇が共逢学園だと言って俺が変わった試験を受けさせられた場所は県立南野城中学だった。

 前に来たときとは校章も銘板も変わっていて俺はそこで武之宇の犯行であることを確信した。こんなことをするのは俺の知っている人間の中であいつしかいないと思ったからだ。

 そのあと俺は情報が集まりそうな、これを知った俺が行きそうだと武之宇が予想しそうな商店街に向かった。生憎そこは降ろされた場所の真ん前だったからすぐに確信した。答えはここにあると。


 「それで出てきたのが書店の娘。しのりん先輩です。」

 「南野城は私の母校だぜっていう豆知識はいらないかい?」

 「欲しいとは思いませんが一応覚えておきます。」


 それから俺は篠野木志野木と一緒に寮を目指した。

 

 「しかし、迷子の篠野木によって阻まれたってわけだね!ラスボスきた!?」

 「来てません。が、ある意味それが結論につながりました。」

 「最終局面きたね!それでどうなの!?」

 「いくら方向音痴でも迷い方が雑すぎるんですよ。それに地元で歩きなれた道を迷う馬鹿がどこにいるんですか。それにあなたは最初にぼろを出していた。」

 「あははそうだったかな。」

 「はっきりあなたの口から聞きました。俺が来るから家でくつろいでいてくれと武之宇に言われたと。」

 「いやあ興奮するとああなっちゃうんだよね。」

 「面白いもの見られたので良かったですよ。篠野木志野木生徒会長さん。」

 「あらまそんなことまで。幼馴染のピンクちゃんにパンフ見せてもらったってとこかな。」

 「そんなとこですよ。これで武之宇の目的の話は終わりです。」

 

 パンフを見るからに篠野木志野木は理事長の隣に顔写真が載っていた。校長やその他教員を退けて載っているということはよほどの権力者だということがわかる。篠野木志野木の他にも四人の生徒の名前と顔写真があったのだがその真意はわからない。

 武之宇との待ち合わせが商店街前だったのはつまりはこういうことなのだろう。

 家に居た篠野木志野木と商店街の人たちに事情を説明。そのあと迎えに来た小池野先生の車まで行き顔を見せたところで俺が逃げると読み、自分はそのまま車に乗って帰ったということだ。まさにこれは受験前から考えられていたことなのだろう。こんなめんどくさいことを平気な面してやってのけるあいつは俺にとって脅威でしかない。

 

 「そじゃここからは寮への話ですが。単刀直入に聞きますしのりん先輩。」

 「なんだい?」


 篠野木志野木は不気味に笑う。何でも知っているというようなその目を見ながら俺はなぞ解きの答えとなるのだろう言葉を口にした。


 「溺合寮は存在するんですか?」

 「ぶふ!あははっはははは!!さすがだよ気に入った!あのくそ野郎の言う通りだ!」


 篠野木志野木は人が変わったように笑い始めた。どうしてなのかはわからないが俺はそれに恐怖を覚えた。


 「そこまで来たなら全てを話さないとね。そうだ今晩君の部屋にお邪魔するよ。」

 「いや。でも寮は...溺合寮は存在しないんじゃ。」

 「いんや存在するよ。正確にはまだ住めない。」

 「えっとそれじゃ。もしかして...。」

 「ああそうだ。あれが溺合寮となる建物だ。」


 そう言って篠野木志野木が指さしたのはここから百メートルは離れているであろうビルとビルの間にそびえる白い工事用カーテンに囲まれた大きな建物だった。かろうじて頭の部分だけが見えていた。

 溺合寮の完成は七月下旬とのことだった。寮に向かうと言っていたがまさかできていないとは思わなかった。あの小池野先生が武之宇と手を組んだとは考えられないなら弱みを握られて無理やりやらされたのだろう。小池野先生俺は先生の見方だぜ。


 「溺合寮が完成しないうちはみんな元からある相楽寮ってところに住んでるんだ。この寮に住むのは選ばれた変人の中の変人たちだよ。」

 「この寮に住むのが怖くなってきました。」

 「住めば都ってもんだよ。住んでみなくちゃわからないからねえ。それじゃ寮に向かおっか。」

 

 そういって先輩はポケットからスマホを取り出し誰かに迎えに来るようにと連絡した。

 電話持ってんじゃんと思ったがさっきまで試されていたのだから当たり前なのかと肯定した。これもまた武之宇の計画のうちだったのだろう。

 俺を篠野木志野木に会わせ交流が深まるように何らかの指示を吹きこんだのだ。

 あいつのやることには何か意味がある。たぶん篠野木志野木は共逢学園の生徒会長は俺の学園生活に大きな影響を与えることになるだろう。俺は覚悟を決め迎えに来た小池野先生の車に乗り込んだ。そこには俺を置き去りにした張本人の姿はなく代わりにしなしなに萎れた箕城実の姿があった。察するに奴に絞り込まれたのであろう。ひと時の同情の終わりとともに俺たちを乗せた車は走り出した。



 <><><><><><><><><><><><><>



 さて時間は進み俺達は寮に着き各自自分の部屋に入った。

 俺は少ない荷物の整理を終わらせ、来る七月に楽に引っ越しできるように持ち物を整理した。

 部屋は綺麗で文句を言うところは何もない。冷暖房付きネット回線有りである。

 自分の部屋を出るとしのりん先輩が待っていて、案内をしてあげるよということなのでありがたくついていくことにした。

 飯は朝晩一回ホールで食べることができる。食費は寮費に含まれており食べないとそんということらしい。金銭の無駄遣いを防ぐことができるから俺にとっては嬉しいシステムだ。

 風呂は大浴場。トレーニングルームも完備と来た。なかなか豪華だが俺は食費以外の寮費を支払わなくてもいい身なのであまり進んで使う気にはなれないのだが一度使ってしまえばそんな罪悪感も消えることだろう。

 それにしてもさっきからすれ違う生徒が女子ばかりなのが気になる。特に俺を見てヒソヒソする仕草は見えないので女子限定エリアではなさそうだ。

 

 「どうだ?後輩君。なかなかいい設備だろう?初めて来たとき私は興奮が抑えられなかったよ。」

 「ねえ、しのりん先輩。一つききたうお!?な、なんだ!?」


 俺がしのりん先輩という言葉を口にしたとき周りにいた女子たちは書店での篠野木志野木のように物凄いスピードで俺に迫り口々にこう言った。


 「篠野木先輩とはどういったご関係で!?」


 その篠野木先輩はまたあとでとだけ言ってその場から去っていった。

 一体この先に何が待っているかなんて俺には創造さえもできなかった。



 得居奏太郎は考える。俺はこの先どうなってしまうのだろうと。

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