俺の計画は続き物には不適合だ。
作者の思いつきによる執筆です。
登場人物
得居 奏太郎【とくい そうたろう】
得居 奏士郎【とくい そうしろう】
高校生活において、いや、学校生活全般において友情、恋愛というものは理解しがたいものである。
中学生活で大いに中二病をこじらしてしまった俺は見事に卒業式までに大くの友人を失ってしまった。しかし、中二病といっても自分に特別な力が宿っているような錯覚に陥るといううものではない。むしろ俺は他の奴らよりも何かが欠けている自覚さえあったし超能力や心霊現象なんてものは全く信じていなかった。なら何だったのか。何かの影響なのか、自発的なものなのか俺は中学二年生を境に人を信じる行為を否定しはじめてしまったのだ。それは闇の力や聖なる光よりもたちが悪くひどく残酷なものだった。
他人の目から見るとそれは中二病なのかと疑問に思う者もいるとは思うがこじらした時期が時期だからそう思わずにはいられなかった。
そう思うことが一番の失態であり、自分の脇下に槍を構えられてしまうような事態になるとはつゆ知らず俺は思春期真っ盛りの男女が入り乱れる高校生活に足を踏み入れるのである。
春。俺、得居奏太郎は宮愛中学校を卒業し地元から離れ地方の高校に進学することにした。
私立共逢学園。それが俺が進学した高校の名前である。二年前までは男子校で理事長のとてつもなく熱い意思で共学にしたらしい。それ以上のことは何も知らない。共学になったのが二年前なら女子が少なそうだという理由だ。別に男を恋愛対象として見ているわけではない。それに自分でいうのは何だが頭はいいほうだ。宮愛中学は受験制の学校で入学試験は満点で特待生で入学し、入学後も誰にも引けを取らずにいくつか満点もたたき出した。それもあり特待生をとっていなかった共逢学園で特待生制度を樹立させてしまった。だがしかし新入生挨拶を放棄できる権利が手に入ったのは無意識にも功を奏した。
「奏。忘れ物ないか。」
引っ越しのおかげで俺にとって生活に欠かせないものが何もなくなった部屋に体はたくましいとは言えないが若くして白髪のせいかどことなく存在感がある人物が入ってきた。得居奏士郎。俺の父親だ。
「手荷物にするものなんかほとんどないよ」
必要なものは一昨日すべて向こうに送ってしまった。と俺は言った。
「そうか。頑張って来いよ。」
「父さんはちゃんと食べろよ?レシピどおり作れば大丈夫だから。」
そう言いながら俺は数十枚に束ねたレシピを親父に渡した。
「ああ。ありがとう。お前は本当によくできた息子だな。」
料理はこの家において俺の仕事だった。親父が料理を作るとなればその日が何であろうと食卓にはカレーが出てきた。それに飽きてしまった俺は自ら料理は俺が作ると親父に宣言した。
「あんたが育てた子供だろ?もっと自信持ったらいいじゃん。じゃそろそろいくよ。」
「そうだな。それじゃ気を付けて。向こうについたら電話してくれよ。」
5歳のころ親父は離婚してから俺のことを男手一つで育ててくれた。何度か女のひとを連れてきたことがあったが結婚にはいたらなかった。どうやら女を見る目がないようだ。
「わかった。俺がいないからってあんまり女のひと連れ込むなよ。見る目ないんだから。」
「ははは。お前に言われるとはな。お前だって言えないだろう。」
「ぬぁ!?」
言ってやったりという顔に少し腹が立った。
「そりゃあんたの子供だからな!それじゃ!」
ポカーンと口を開く親父を背に俺は新しい道を歩き始めた。
俺に特異な学校生活は必要ない。ただ、平凡でのどかな生活を送りたい。そのために同じ中学の奴がいかないような高校を選んだのだ。あの恋愛脳どもと同じ高校になんて進むなんて考えられない。選んでからいい方向へのイレギュラーはあったもののそれが俺の平凡高校ライフに異常をきたすとは思えない。そうだ。共逢学園を受験すると決めたときすでに俺の平穏ライフフラグは立っていたのだ。そして平穏に卒業していいとこ就職して独身ライフを貫き通すのだ。これまで完璧なけいかくを立ててきた。しかし、それなに。
「しかし、それなのに・・・なんでお前がここにいるんだ。」
家から直行で駅に向かい、親父に渡された指定席の切符で電車に乗り込む。それまでは何もなかった。何もなかったはずだ。席番号を確認しながら車内を移動していると身に覚えのあるような、近しく見ていなかったというより見るの避けてきた人影が自分の席の隣に座っているのが見えた。
「あ!奏ちゃんひさしぶり~!あれ?なんでそんな生気抜かれたような顔してるの?」
これまで積み上げてきた平穏ライフ計画が崩れ落ちる音が聞こえてきた。
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