プロローグ―拳聖ファウスト―
星の数程ある世界のひとつ、ゼナトの世界では人類対亜人の戦いが繰り広げられていた。
その戦いは幾千年にも及び、多くの命が失われた。死神もその多さを処理しきれず、行きどころを無くした魂たちは、ただ荒野を彷徨うばかりとなった。
その魂のエネルギーを使って神暦7984年、亜人の一種『魔族』に絶対的な力を持った王が誕生した。
魔族は他の亜人を裏切り、世界征服に乗り出した。数こそ少ないが、魔族は強力な種である。 止むを得ず人類と亜人は協力するものの、彼らは順調に世界を蝕みついには世界の3分の2が魔族に支配されてしまった。
そんな世界に、創造神が干渉し、人類や亜人、魔族の全てに『ステータス』や『ジョブ』といった概念を生みだした。
これにより、人類亜人連合は勢いを取り戻すことになる。
ごく一部に強力なジョブを持った者が現れたのだ。中でも、世界に一人しかいない『勇者』は強力で、魔王にも対抗しうる力をもって魔族を殲滅していった。勇者は仲間をつくり、ついに対魔王戦に臨んだ。
が、勇者は他の魔族の不意討ちに遭い、地に伏してしまった。
勇者の魂を吸収した魔王は更に強力になり、勇者の仲間を全滅させ、人類や亜人に絶望をもたらした。
しかし!ここで一人の英雄が登場したのだ!
彼の名はファウスト。ジョブは拳闘士。後に『拳聖』と呼ばれる人物である。
突如戦場に現れた彼は魔族を殲滅、いや蹂躙していった。勇者のレベルが999であったのに対し、彼もまたレベル999。しかし、彼の武術は尋常ではなかった。彼は圧倒的な強さを見せつけ魔族を壊滅状態に追い込んだ。
そして、神暦8000年、ファウスト対魔王の一騎討ちが起こった。いわゆる頂上決戦である。
結果、辛うじてファウストが勝利した。しかし、魔王が消滅する際、ファウストは呪い(ギアス)を掛けられてしまい、彼はその影響により10年後に亡くなった。
ファウストの活躍によって、人類亜人に平和がおとずれた。人類と亜人の戦いは起こらなかった。友好的ですらあった。
ゼナトには『ファウスト教』という宗教が興った。彼は永久に崇められ、讃えられることだろう。