嵐の夜に
初投稿なので
ちょっとしたものでテスト投稿です。
中身はよくわからない人のよくわからない状況のよくわからない話です。
……雨……
雨が降っていた。
どんよりとした暗い空から絶え間なく、雨粒が落ちては地面を叩いて弾ける。
規則的な雨音はどこか機械的で、冷たかった。
今夜は冷えるかもしれない。
そんな雨を、窓際に置いた革張りのソファーに腰掛けて眺める。
何をするわけでもなく、何を考える訳でもなく、ただこうして窓から外を眺めていた。
「……メアリー様……」
不意に聞こえた名前を呼ぶ小さな声。
部屋の扉のところに少女が一人。
「……どうしたのリーフ。何か、用事かしら?」
「あ……」
こちらから声を掛けると彼女はどこか嬉しげに顔を綻ばせ、窓際までやってきた。
「雨、やまないね。」
そして彼女は窓の外、冷たい雨に濡れる町並みを見つめて小さく呟いた。
「……そうね。」
答えてまた、視線を窓の外に向ける。
いつのことだったか……リーフと名乗った彼女と町の路地裏で出会ったのは。
何の気紛れか、彼女を拾って帰ったあの日も、こんな雨の日だった。
彼女を拾って、何の得が有ったのか……
拾われて、彼女に何の得が有ったのか……
「雨、きらい……」
「そう」
「うん……あ、雷……」
降り続く雨の中、空が明滅する。
遅れて響く雷鳴。
少女の肩が微かに揺れた。
「なぁに、貴女雷が怖いの?」
「…………」
彼女は無言で首を振るが、彼女のために買ったもう一つのソファーには座らず、こちらのソファーの肘掛けに腰掛ける。
そうしておずおずと腕を絡ませてきた。
どうやら怖いらしい。
「メアリー様、温かい。」
先程よりも密着した彼女が小さく呟いた。
「そうね。あなたも温かいわ」
「ん……」
雨はいつしか景色が霞んで見透せないほどに強まり、空は明滅を繰り返しひっきりなしに雷鳴が響いていた。
絡まる彼女の細い腕に、少し力が入った。
「……ねぇリーフ?」
窓の外を見つめたまま、響く雷鳴の隙間に声を掛ける。
「?」
「いつだったか、私があなたを拾った日に言ったわね。
私と一緒にいると、いつかもっと冷たい雨に打たれるかもしれないって」
「うん」
きっと彼女は、言葉を額面通りにしか受け取っていないのだろう。
何故あの時ちゃんと伝えなかったのか。
あの時からこれまで、伝えることはいつでも出来たはず。
なのに何故……
「……その時が、来たみたい……」
「……その、時?」
彼女の声すら掻き消すほどの激しい雨音に混じって、重いエンジンの駆動音が聞こえる。
「……あなたを巻き込んでしまったわ……」
「メアリー様?」
明滅する稲光とは別の、人口の光が複数向けられる。
「冷たい、とても冷たい雨が降ってくるわ」
その雨は冷たい。
その雨は重い。
その雨は痛い。
その雨に打たれれば、体も、心も、冷たく凍える。
二度と、温まることは出来ない。
「家の中にいれば?」
「多分窓ガラスを割って降ってくるわ。
もしかしたら天井とか壁も抜けてくるかもしれない」
「じゃあ傘……」
「この雨をしのげる傘を持ってないの」
「……そっか……」
腕に感じる彼女の体温が温かい。
「ごめんね」
「うん」
彼女を抱き寄せる。
片腕に感じていた彼女の温もりを全身で感じる。
「きっと寒いわ」
「ううん」
腕の中、彼女が首を振る。
「……メアリー様と一緒にいれば、寒くない。温かいよ」
そんな彼女の一言が合図であったかのように、窓ガラスが砕け散った。
横殴りで部屋の中へ降り始める鈍色の豪雨。
途切れることなく轟く稲妻。
「……そっか……あなた……そうね。
確かにこうしていれば温かいわね」
「うん」
胸の中のこの温もりを失いたくない。
あぁ、感情なんてもう遥か昔に捨ててきたはずだったのに、まだこんな感情が残っていたとは……
「ねぇリーフ?」
雨が部屋のあらゆる物を抉る、砕く。
「雨が止んだら、駅前にご飯食べに行きましょうか」
何となく買ってみた高価なティーセットが粉々になった。
「うん。ハンバーガー。」
本棚の本が無数の紙切れになって舞い上がった。
「もっと贅沢言って良いのよ?」
もう部屋の中はめちゃくちゃだ。
「ハンバーガー」
ここまでされたらもう建て替えだ。
「そう。じゃあハンバーガーにしましょう」
「うん」
降りしきる雨の中、私達は顔を見合せ笑った。
よくわからない人のよくわからない状況のよくわからない話でした。
取り敢えず投稿してみたがどうでしょう。
続くのか?
また試行錯誤しながらやってみます。