第1話-少年の自殺-
朝、砕衆高校前。
結月が生徒に完全に溶け込む形で通勤してくる。が、敷地に入ろうとするところで、急に聞き覚えのあるバイクの爆音。音速で来たバイクは、昨日バスターミナルで見たものと一緒だった。結月はすぐに気付いた。
彼が昨日のあの変態野郎であることに。
バイクに乗ったまま音速で敷地内に入って行った彼は、バイクを降り、ゆっくりと校舎に入って行った。
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丁度その頃、問題の3年B組では・・・
全員がいくつかのグループに分かれて集まり、騒いでいる。あるグループは、スマフォをいじり、また別のグループは昨日のドラマについて話し、これまたとあるグループは、エロ話に花を咲かせていた。その中で、孤立している一人の男子生徒がいた。名前は山澤天尾。彼が一人で、話に入りたがろうとするが、なかなか中に入れない。そんな彼のところに、3人の女子生徒(同級生)がいかにも悪いカオで近づいてきた。その一人は、桜庭。
「ねぇ、ちょっとこっち来てくんない?」
そう話しかけたのは、大内摩耶だった。
「えっ、いや、…今は…」
と、彼は答えた。もっといい答え方があるのには誰でも気付けると思うが、彼にはそう答えるしかなかった。それに構わず胸ポケットからカラー写真を取り出す桜庭。
「これを、男子全員、いや、クラス?いや、全校に張り出しちゃうけど……い、い、の?」
「いや!…それだけはやめてください。行きますから…」
と、突然に焦りだす山澤。3人は彼を連れ去って行った。クラスの人達は、ずっと呆れた顔や、ざまぁ、というようなカオでその様子を見ていた。
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---------------------5分後---------------------
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荻原と結月は、3年B組へとつながる廊下を歩いていた。
「荻原っていうんですね。へぇ。…あの!荻原先生、3年B組は物凄い問題クラスで、1年…っていうか、なんで来たの!この変態野郎!」
などと結月が喚いている間に、彼はもう教室に入って行ったのだった。そして、彼は生徒の方を見ずにチョークを持ち、生徒の方を見ずにこう書き殴った。
GTO
「今日から、ここ、3年B組の担任のォ、G・T・O‼Great Teacher Ogiwaraだぁ‼」
そしてここまで言って、やっと彼は生徒がいるはずの方を見たが…そこには誰もいなかった。荻原が流石に驚く。結月は、あ~あやっちゃったよこの人バカじゃないの?、という顔。荻原が焦っていると、向かって右側にある窓から、1基の紙飛行機が入ってきた。荻原が気付き、紙飛行機を開く。するとそこには、“グラウンドに来い”の文字。荻原は思わず興奮した。
「おもしれぇ~!俺こういうの好きなんすよ、結月せ~んせい!」
結月は驚いた。毎回新しくこのクラスに就く先生に、生徒達はこれをやって初っ端からバカにしようとして、先生は大抵キレるのだが、この人はキレなかったし、それどころか興奮して、喜んだのだから。考えずとも、驚くのは当たり前の話である。
「行こうよ。結月先生。」
と言って、グラウンドに行くと、そこには34人の生徒達。誰かが、せーの!、と言ったと思うと、屋上から帯が垂れてくる。帯には、
Ⅽ
T
O
歓
迎
‼
の文字が書かれていた。それを見た荻原は、さらに感激。すぐ、生徒達に近づき、礼を言った。
「スッゲェ‼みんな、ありがとう!ってか、Cやない、Gやけどな。」
生徒達はほぼ全員困っていた。理由は先ほどの結月の驚きともちろん一緒である。その時、すっかり調子に乗っていた荻原であったが、屋上にいる生徒らしき人物を見逃すことはなかった。
「あれ?あれ、生徒じゃないか?」
生徒達は見て見ぬふりをしている。結月もそれに近いが、正確にはこの場から離れようとしている。荻原が屋上の生徒に語りかける間もなく、その生徒は、屋上からグラウンドの横の芝生に、……………………落ちた。荻原が急いで駆け付けた。
「おい、やめろ!自殺?なんでだ?おいっ!おい、大丈夫か?おい!おい‼」
荻原が生徒の体を必死にゆすり、どうにかしようとしたが、彼がそれに反応することはなかった。
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病院で、彼は目を覚ました。荻原が気付き、嬉しそうな顔で、おぉ気付いたか!、と言う。
「えっ?…………………………………
なんで俺、生きてるんだ?」
その時、急に足音が聞こえてきて、病室のドアが勢いよく開いた。その勢いでドアがはずれ、廊下に倒れた。さらに窓ガラスが割れ、通りかかった看護師に当たる。その時彼女は叫んでおり、それを0.001秒後に訊いた医師が急いで駆け付け、彼女を助けようとしたが、その走ってきた勢いのあまりに、彼は移動式の心拍計の脚に引っ掛かり、破片のたまり場にスライディング。心拍計とともに時速150キロで廊下を滑って行った。さらに、その先に通りかかった別の看護師にぶつかって看護師が倒れ、彼の頭がトイレのドアを倒し、便器に勢いよくアタック。その結果、汚水が大量にピュッピュとあふれ出ていた。
で、入ってきたのは理事長の斎藤香奈美だった。
というところで今回はおしまいです。読んでいただき、ありがとうございました。
次話はおそらく少しあと(3日)です。お楽しみに。