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少し怖い短いお話

ロビーにて

作者: 浅井一希

子供の頃、家族旅行でホテルに行った時の話です。

ロビーの一角だけ妙に暗かったのを覚えています。


そこには老夫婦が立っていました。


私と弟は騒いでいましたので、怒られるかも、と受付をしている両親の影に隠れて、様子を伺いました。

夫婦は弟を見ているようでした。


うるさかったのが気に障ったのだろう、と私は両親と共に部屋へ向かいました。

私達の部屋は4階でした。

部屋へ入ると父は椅子に座ってくつろぎ、母は部屋のあちこちを見ています。

私は弟の姿がないことに気付きました。

それを母に伝えると、母はとても変な顔をして

「何言ってるの?」

と言いました。


私は旅行鞄を開けました。

弟の分の服があります。

私には弟がいる。


私は部屋を出ました。

ロビーに行くと、私は弟の名前を呼びました。


しん、と静まり返っています。


植木の影に老夫婦が立っているのが見えました。

その足元には弟がうずくまっています。


私は弟の肩に手を掛けようとしました。

ずしり、と体が重くなり、振り返ると老夫婦が私の肩を両側から掴んでいます。

弟を見ると、弟の側にも老夫婦。

もう一度振り返りました。

同じ顔をした二組の夫婦。

訳が分からなくなった私は何か叫んだような気がします。


気付くと制服のお姉さんが笑顔で私のことを見ていました。

弟は私の膝で眠っています。

「ちゃんと戻れたんだね」

とお姉さんは言い、弟を背負って私を部屋まで連れて行ってくれました。

両親はちゃんと弟のことを思い出していました。


戻れなかったらどうなっていたのでしょうか。

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