第二話
雪は先に進むにつれ激しさを増し、先程まで何もなかった道に雪が積もっていく。
事前に足駄には爪革を掛けていたのが幸いだった。
「見て志貴、煙がたってるわ。民家の証よ!」
ようやく目的地が見えたのか、安心したように顔を綻ばせるサヨリを見て志貴も形の良いふっくらとした唇を上げた。
そして視線の先には確かに民家が炊いたと思われる煙が一つ、二つと立っていた。
「サヨリ、あんまり浮かれすぎてヘマをするんじゃないぞ」
その言葉にサヨリはむぅっと唇をへの字にし、眉をあげて志貴を睨みつけた。
被衣を被っていてもサヨリが怒っているのは見てわかる。
「そんなヘマしません!今まで一度でもしたことあった?」
サヨリはぷい、とまた前方を向きまだ何も汚れていない雪道に足あとをつけていく。
そんなサヨリに対し志貴はふぅ、と一つ溜息を吐き、また薄っすら微笑みを浮かべサヨリの後を追うのだった。
それからも暫くサヨリはブツブツとだいたい志貴はーとか、志貴なんてーと相方に対する文句を言っていたが志貴は何ともないようにそれを聞き流していた。
そんな志貴の態度が気に入らなかったのか、はたまた自分の子供っぽさに腹が立ったのかサヨリは寒さで真っ赤に染めた頬を膨らませてまた黙りを決めたようだった。