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おばけざくら  作者: 水溜まり
序章:桜の化身
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第一話

昔々、ある山にはどんな病気や怪我をも治す万能薬と呼ばれる美しい桜が咲いていたと言う。

その桜は一年中咲いており、雨の日も、風の日も、雪の日も

決して散ることはなく咲き続けるため

山の(ふもと)に住む村人達は桜を求めに山へ登るのだった


しかし、山に登った者で無事に戻れた者は一人もおらず

代わりに願いが叶ったのか戻らなかった村人の家族の病気や怪我はみるみるうちに癒えたと言う。


ある日村を訪れた吟遊詩人がその話を聞き、興味本位で桜が咲いている山へ登った。

しかし、吟遊詩人が見たものは恐ろしい姿をした妖怪だったと言うのだ。


吟遊詩人は難を逃れ村に戻れたが、その話を聞いた村人達はあまりの恐ろしさにもう二度と山に登ってはいけないと決心したのだった。


そうしていつしかその桜は「おばけざくら」と呼ばれ人々に受け継がれるのであった。




月日は流れ、ある日のこと。

寒明けてから旬日経たぬその日はまだ寒空が残っており外を歩くものは少なく、息を吐けば真白な息が大気に広がる


そんな中清らかな白い被衣(かずき)を被った女であろう旅人が黙々と目的地に向け足を運んでいた。

被衣を被った者の後ろには数歩遅れて男が付いており、どうやら旅人は二人で行動しているようだ。



それまで会話をしなかった二人だったが、空から真白な雪がチラチラと降ってくるのを見て、とうとう男の方が声をかけた。



「おい、サヨリ。雪が降ってきた」


男に声を掛けられ、たった今「サヨリ」と呼ばれた女はチラリ、と一瞬振り返り空を見上げ浅い溜息を一つ吐き被衣を深く被り直した。


「本当ね。山の近くだけあって天候が読めないわ。急ぎましょう」


少々急ぎ足になったが男は簡単に追いつきサクサクと音を立てながらまた二人は黙々と道を急ぐのだった。

寒明け:二月四日頃

旬日:十日間

被衣:旅装束で使われる頭から被る着物のこと

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