俺の彼女は幼馴染か義妹か
正直な話、勢いだけで書き上げました。
執筆時間わずか2時間……
「ずっと……小さい頃からずっと、お前の事が好きだった!俺と付き合ってくれ!」
今、俺は一世一代の告白を実行している。
相手は小さい頃からずっと一緒の幼馴染、河口優。勉強も運動も家事もできて、明るく社交的で男女問わず友達が多く、その上容姿端麗。二次元の世界にいる幼馴染を連れてきたかの様な、完璧な優。
……振られて今後の関係が悪くなるのは覚悟の上だ。完璧な優と違い、俺はどこにでもいる平凡な高校生。運動はそこそこ得意だが、勉強も家事もできず、容姿も平凡。両思いの可能性など、それこそ二次元的展開でも無い限り皆無だろう。
その優はと言うと、俺の突然の告白についていけないのか、キョトンとしている。
そして、言葉の意味を理解したのか、ボッ!という音と共に顔が一気に真っ赤になった。
「あ、え、えと、駿?あの、その……本気?」
ちょっと躊躇いがちに、上目遣いで見てくる姿が可愛い。
優の言葉に口を開かず、一回頷く。それを確認した優は更に真っ赤になる。お互い、顔が真っ赤になってる事だろう。実に熱い。
「あ、ぅ……その、嬉しい、よ……私も……私もずっと駿のこと……好き、だったよ」
「それじゃ……!」
優は恥ずかしそうに首を縦に振った。
奇跡が起きた……!
俺のテンションは一気にMAXまで達し、思わず優を抱きしめてしまう。
いきなりの行動に驚いたようだったが、振りほどかれることはなくそのまま受け入れてくれた。
冬の寒空の下、互いを温め合うように俺達は抱きしめあったままその場を動かなかった。
☆☆☆
「父さんな、再婚する事にした」「ママね再婚する事にしたの」
「「………………は?」」
嬉し恥ずかしながら手を繋ぎ、一緒に家へと帰るとそこには優のお母さん、通称河口ママがなぜかいた。
普段よりも早い時間なのに俺のオヤジもいたが、自宅なのでこれは良しとする。
でも、問題なのはその後、二人の言葉に。
俺も優も、一瞬聞き間違いだと思った。
「父さん達結婚する事にしたんだ」
「まてまてまてまてまてーい!何で!?いきなりそういう話になった!?」
「父親の恋愛状況は逐一息子に報告しなきゃならんのか?」
……そんなのは絶対に嫌だ。ウザすぎる。
「ママ……冗談でしょ?」
「冗談じゃないわよ?ほら、ゆーちゃんパパとの思い出がほとんど無くて憧れてたでしょ?」
「それは小さい頃の話!今は別にいなくても……まぁ、うん」
優の父親は優が小さい頃に病気で亡くなった。俺もほとんど覚えていないが、落ち着いた雰囲気の優しい人だった。
そして、うちの母親。母親だと思いたくないぐらいの最低な女だった。旦那と子供を置いて愛人とどこかへと姿をくらました。今どこで何をしているか、わからないがどうでもいい。
父子家庭と母子家庭、元々ご近所で仲の良かった両家だったが、それで更に一層絆は深まった。
小さい頃はそれでまぁ、河口ママが母親だったらいいなーと思ったりもしたが……それが今更現実になるとは。
「まぁそういう事で。俺達は結婚する。今日から駿と優ちゃんは義兄妹になるな」
確かに、俺が5月生まれて優が8月生まれだから……って、違う!俺は何を納得してるんだ!
「俺は……俺たちはな、今日ようやくな──」
「しゅ、駿!」
今日の出来事を思わず口にしそうになったが、優に腕を引かれたため口にする事はなかった。
俺はそのまま、優に引っ張られて俺の部屋へと移動する。
相変わらずゴチャゴチャとした部屋。普段掃除を一切せず、優に度々掃除しろと言われたが全くやっていない。最終的に優が呆れながらもやってくれてたから、ついついそれに甘えてきてしまった。
「きたなーい……まったく、か、か……彼女……を連れ込む部屋じゃないじゃない」
恥ずかしそうに顔を赤らめてるその姿に、思わずドキリとしてしまう。そうだ、俺と優は今までの幼馴染じゃなく、恋人同士なんだ。
そう思うと一気に恥ずかしくなってきた。いつも見られてるのに、汚い部屋を見られるのが嫌だ。そして、いつも以上に部屋に二人きりということを意識してしまう。
優も同じなのだろう、パチリと目が合うと逸らされてしまう。
「あ……いや、その……」
「………………」
「……オヤジにも困ったもんだよな。いきなり河口ママと再婚するって言い出して、優を……義妹にして」
義妹と口にした瞬間、優の体がビクリと震えた。長年の夢がようやく叶ったんだ、そんな義兄妹で終わりたく無いのだろう。その気持ちは俺も同じだ。何たって俺は優の事が──
「大好きだからな……」
「ふぇ……?」
ハッと気づいた時には既に遅し。
心の声を思わず口にしてしまっていた。優はこれまた顔を真っ赤にし、俺の事をジーッと見つめてくる。やめてくれ、恥ずかしさで死にそう。
「………………………………だよ」
「え?」
「私も……駿の事、大好きだよ。世間的には私は駿の義妹になるんだろうけど……幼馴染として、女として、彼女として……駿の事が……好き」
うわああああああああああああああああ!
俺もう死んでもいい。幸せすぎて死にそう。嬉し恥ずかしくて死にそう。でもやっぱり死にたくない。優と一緒にいたいからな!
あまりの出来事に口元の笑みを抑えきれない。優も照れながらはにかむ。
そんな幸せな空気をぶち壊す、謎の泣き声が聞こえる。明らかに男の声であるそれは優ではない。当然、俺でもない。
じゃぁなんだ?まさか、幽霊!?
そんな考えが浮かんだ時、気付いた。
部屋のドア、入り口の隙間から二人の人影が見える事に。今この家には俺と優、そして残りの二人が──
「オヤジ!?河口ママ!?いつからそこに!?」
「あらあら、駿君。お母さんって呼んでいいのよ?」
「気にする所が違うよ、ママ……」
「我が息子よ!こんにゃろー!俺の可愛い愛娘を奪い取るとは……いい度胸だな」
「うっせぇ!何いきなり父親面してんだ!」
「小さい頃から知ってるんだ。実質もう一人の子供……と言うか、優ちゃんだけでいいな」
「血縁関係否定された!?」
「うちの娘につく害虫め……どっか行け!」
「うるっせぇ!俺は優が好きだ!大好きだ!だから、あんたが何と言おうが、義妹に手を出したとか言って社会が冷たい目で見ようが、俺はずっと優のそばにいる!!!」
そう宣言した瞬間、三人の反応は正に三者三様、それぞれ違った。
優は顔を真っ赤にしながら嬉しそうにし、河口ママは「若いわねー」とか言いながら他人事のようで、オヤジは肩を震わせながら何かを呟いている。
「……す……ろす……ころす……駿殺す!」
「殺されてたまるか!」
即座に走り出してその場を逃げ出す。シャー!とか言いながら追いかけてくるが、捕まる気が全然しなかった。
その様子を見て、河口ママはやれやれと呆れており、優は苦笑していた。
「頑張れ、駿」
「おぅよ!」
ずっと好きだった幼馴染と想いが通じ合った日、彼女となった幼馴染は────義妹となった。
一応法律上は結婚もできるとはいえ、仮にも妹だ。世間ではそれを「悪」だと言う人もいるかもしれない。
それでも俺は優が好きだ。
彼女となった優の事が。
でも、その俺の彼女は──
「幼馴染か義妹か、わかんねぇけどな!」
ま、どっちでもいいけどな!
設定だけは前からあったとはいえ、だいぶ雑な出来になってしまいました。
義妹の設定なんて、無いに等しいですね。短編で詰め込みすぎましたかね……
でも、後悔はしていない!
……にしても、初々しいのかラブラブなのかどっちなんだろこの二人。