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十五話

愛理SIDE


「それじゃあ、この方が以前一刀様にお使いしていた人なんですよね」

「そうなる」


今朝いつも通りに身嗜みを整えて部屋を出た所、いつもの時間に部屋から出てこられないことをおかしく思い一刀様の部屋に訪れたら一人用の寝床に一刀様とそこの小柄な男が密着して寝ていました。


昔塾に居た時朱里ちゃんの部屋から男同士で抱き合っている絵が描いてある本を見たことがあるのですが、後でそれが艶本の一種だってことを知りました。朱里ちゃんのこと尊敬しますけど、そんな絵を見ながら顔を赤くしてるのはどうかと思いました。


そもそも同性同士の触れ合いを不潔に思わせるような物言いは控えるべきだと思うのです。同性同士で愛があり得るというのなら雛里ちゃんの寝床の下には…。


「元直、戻ってこい。おーい」

「あの、ボク、何か悪いことでもしたのでしょうか」

「強いて言えばここに来て俺が酷く迷惑だってことぐらいだな」

「あっさりと!?」


そうです。何も不愉快に思うことなんてありません。ただちょっとだけビックリしただけです。


「それじゃあ、あなたも私たちと一緒に陳留に帰るつもりですか」

「は、はい。あ、ボクはチョイ・ガンと言います、チョイと呼んでください」

「…徐庶と言います。字は元直ですが、徐庶って呼んでください」

「……」


自分でも判りませんが、何故か刺が出てきます。一刀様が変な目で見られてます。素がこんな娘だと思われるとは思いませんけど…私も自分がどうしてこんな風にするのか判りません。


「…無駄なハプニングを起こしたせいで遅れた。さっさと出るぞ」

「はい」「はい」


声が重なったので一応その人と顔を合わせました。なんか気弱そうであまり頼りなさそうな顔なんですが、こんな人が一刀様の側に居たとはにわかに信じがたい話です。実力主義な方だと思っていたのですが……まさか、男女を問わずに小さい体型が趣味なのでは?


そういえば以前典韋さんも一刀様と一緒に居た頃には私ぐらいの小柄だったと聞きましたし、凪さんは小柄とは言えませんが、一刀様に凄く従順します。


もしかして華琳さまみたいに特殊な性癖をお持ちなのでしょうか。じゃあ私もそのうち……。


「あの、社長、先に行かれちゃいますよ」

「!……」

「あ、まってください」


私は隣で待ってくれていたその人を無視して一刀様を追いかけました。


※ ※ ※


<pf>


華琳SIDE


一刀が徐州に向かってから十日が過ぎ、昨日官渡港に着いたという連絡が入った。恐らく今日中に帰ってくるだろう。


彼が河北に行くと言った時、私は特に何も言わなかった。


「何をしに行くの?」

「桃香との条約を結ぶためだ。可能なれば、徐州を一時的に中立に置くことが出来るだろう」


それだけだった。


実際一刀が西涼を押したのは私が西涼を攻めたがっていることを知っていたから。元々なら桂花と同じく徐州を勧めるはずだった。だけど私の意中を察してデタラメでも西涼を攻める内部の名分を作ったことは私が彼に借りを作っているというわけだった。なので私のワガママを聞いた代わりにして置かなければならない措置などに文句は言えない。


確かに私が徐州を先に攻めようとしたら劉備は何も手出しが出来なかっただろう。だけど西涼攻めがどれだけかかるかはっきりと判らない以上、劉備に余裕が出来るとまず徐州から手に入れようとする可能性も否定出来ない。それを判っていた上の西涼攻め。


私には今西涼を攻めなければならない理由があった。


きっかけは連合軍だった。


戦は終わったものの、一刀は目を覚まさず、私も健康な状態だとは言えなかった。だけど、皆に心配を掛けたくなかったからちょっと無理して外に出歩いた時に西涼の馬超が話していることを耳にしたのだった。


「クソ!連合軍で功を挙げて母様を喜ばせる機会だと思ったのに何だよ!義だと思っていた連合軍が実は逆徒の群れだの…これじゃあ母様に合わせる顔がない!」

「落ち着いて、お姉様。気持ちは判るけど、でも私たちがどうにか出来たことじゃないよ」

「だからもっと悔しいんだよ。クソ!なんであたしはもっと早く母様の力になれなかったんだ!あたしがもっと賢い娘だったら母様もあんな風には…」

「お姉様、静かにして!誰か聞いたら…!」


私は静かにその場を去ったけど、あの馬騰の娘の言葉どうにも引っかかった。馬騰はあの日以来、突然姿が見えなくなり、西涼からも戦場に出ることがなくなったという。病を負ったという噂が流れてきたが、娘の話を聞くと何かそれ以上のものがあるかもしれない。私はそう思って馬騰に会いに行こうと思ったのだった。


だけど、馬騰はあの日以来私と顔を合わせるつもりはないだろう。だから彼女と会うには西涼を制圧し、彼女の元へ行って談判をつけるしかない。


春蘭と稟が一刀が河北に行く数日前に既に西涼に向かっていった。馬騰に長安を返せという内容の書を送るためだった。長安は本来司隷の一部で我々の管轄だった。ただ洛陽が燃えて管理が困難であることから長安を馬騰に任せる形になっただけだった。だから長安を返せと馬騰に要請する。長安が我々の手に入った場合、西涼を攻めるための前哨基地として役立つことは馬騰も重々承知しているはずだからこれを断るはず。ならそれを名分も挙兵するという算段だった。


こうして名分は用意できるはずだったけど、そのほかの問題はなかなか厳しかった。


何よりも問題になるのは西涼の情報がなかなか入らない点だった。


「少ないわね」


私は西涼に放った間者より送られてきた情報をまとめた報告書を読んで言った。


「はい、奥まで忍ばせた間者はほとんど帰ってきてほらず、西涼の境界に居る間者が何人か情況を知らせてきているぐらいなので確かな情報なのかもはっきりとしません。馬騰の健康についても確信できる情報は取れませんでした」

「それだけ警戒されているということね」

「今日中に春蘭と稟が馬騰に会っているはずです。彼女たちが帰ってくると西涼の状況をもっとはっきりと把握できるでしょう」

「そう…」


今回の使者は漢の家臣にしての正式な使者を送るものだった。そのため漢の官職のある春蘭が馬騰に会う必要があった。他の皆は漢の官職を持っていないため、馬騰への使者に出すことが出来なかった。


……一刀は例外に当たる。


「その件はとにかく春蘭たちが帰って来てから考えましょう」

「はい、それと華琳さま」

「何かしら」

「秋蘭の居場所が見つかりました。今漢中に居るそうです」

「!」


私は桂花に秋蘭の居場所を探せという命令はしていない。私は秋蘭が自分で帰ってくるまで待つつもりだった。


「申し訳ありません。ですがこの西涼攻めは決して我々が安心できるほど優位に立っている戦いではありませんので、場合によっては必要だろうと思いました」


…そう。一刀が劉備に行ったように彼女も万が一のための救済措置を作っておいたわけね。


「…彼女と接触したわけ?」

「いえ、ただ漢中に居ることが判ったまでです」

「そう。私が命じるまで誰も彼女に合わないようにしなさい。わかったわね?」

「判りました」


秋蘭が居なくなって早数ヶ月、遠い漢中にて秋蘭はどうしているのかしら。


「華琳さま、お兄さんたちが帰ってきましたよ」


その時、風が執務室に入ってきて言った。


「そう、ここで会うから来させなさい」

「それなのですが、何やら見知らぬ少年が一人ついて来たのですが」

「少年?」

「大丈夫。彼まで合わせて連れて来なさい」


チョイのことは既に書信にて伝わっていた。


もちろん桂花と風はチョイのことを知らない。チョイは一刀の世界で彼を補佐していた子だから当たり前のこと。どういうわけかこっちの世界に来てしまったという。一刀もどういう訳かは判らないと言ったけど、ヘレナもこの世界のどこかに落ちた可能性もあると言う。薬も止めた所に丁度いい頭痛源が現れたわけだった。


「二人は仕事に戻って頂戴」

「…判りました」

「はいー」


二人が出てきた後、私は一刀とチョイが来るのを待っていた。


<pf>


チョイSIDE


今ボクはとても複雑な気分で城門をくぐっています。ボクのことを助けてくれた鳳統さんたちの城からここまで来る三日間、この世界がボクが生きてきた世界とどれだけ違うかを思い知らされました。


木で造られた船に石で建てられた大きな城壁。そして何よりも人々の生活してる様子は現代とはまるで違うものでした。こんな世界で、社長は何年も生きてきて私の前には平然と現れていたなんて…。


「チョイ、早く来い。迷子になっても知らないぞ」

「あ、はい!」


賑やかな街で社長と徐庶さんを見失ってしまったら大変です。


「……」


社長たちに近づくと徐庶さんがすごい目でボクを睨んできます。


「…何だ?」

「いえ、何も…」


私に視線を固定しながら社長の袖を握ってる姿は、まるで「この人は私のだから渡しません」と言わんばかりの警戒心でした。


そんな徐庶さんの姿を知らないのか知らぬふりをしているのか社長は何も言わずに前に歩くだけでした。そしてやがて官庁らしき場所で到着しました。


くぐった扉から道に立っている警備たちがイギリスの宮殿を守護する王国近衛隊の人たちみたいに微動だにせず立っていました。だけどボクの視線が行ったのは、彼らではなく、行く先の石階段に座って居る長い金髪の少女でした。頭の上に人形を載せているその少女は両手で大きな飴を握りしめて居眠りをしていました。ひなたぼっこでも言えるでしょうか。


「……」


社長は一旦階段の前に止まってその少女を見ていました。起こすべきなのかどうなのか迷ってるみたいでした。数秒考えた先、社長は黙って階段を登り始めました。ボクと徐庶さんも何も言わずにその後を追っていくと、


「あうあー!」


突然隣に居た徐庶さんが奇声を挙げました。


「無視するとは酷いのですよー」

「やはりフリだったじゃないか」

「風さま!やめてください!落っこちて怪我するところだったじゃないでしゅか!」

「<<無視するアンタらが悪いんだよ>>」


頭に乗せている人形を首を動かしてフリフリとさせながら腹話術を使っていた少女は数段上に上がっていった徐庶さんの足首を掴んだまま体をふんぞり返っていいました。


思うと器用な動きです。


「…むっ、風より大人っぽい下着とはナマイキなのです」

「何見てるんでしゅか!」


足首を掴んだ手を振り払ってスカートを隠しながら徐庶さんは叫びました。


「変態オヤジみたいなギャグは良い。あまりサボると首にされるぞ」

「風はこれでも人並み以上働いていると思うので大丈夫なのです」

「お前の役職を考えろ。人並み基準で大丈夫と思うか」

「<<仕事馬鹿のアンタらを基準で言うんじゃねえよ>>」


社長とこんなスムーズに話せる人は、ソウソウさん以外には実際初めて見ました。レベッカの奥さんはあまり喋らなかった上に私やヘレナさんもこんな達弁で社長と話し合うことが出来たことがありません。


「まったく、お昼寝時間を割って帰りを待ってくれていた人に酷い物言いなのです」

「寝てただろうが」

「ぐぅー」

「起きろ。そして華琳に伝えに行け」

「仕方ないですね。所でこっちの小さなお兄さんはどちらさまでしょうか」


立ち上がっておしりの埃をポンポンと叩いた金髪の少女はボクを見つめながら言いました。


「華琳には既に伝えてるから判るはずだ。こっちもちょっと準備したいことがあるからさっさと行け」

「お兄さんはもう少し日輪のような温もりを学ぶべきなのです」


ちょっと負担になる視線でボクを見つめていた少女は、では行って参りますと言いながらゆっくりと階段を登り始めました。


「呑気な奴だ。桂花の苦労が思い知らされる」


社長はそう呟いて徐庶さんの方を見ました。


「元直、今回の河北でやったことを報告書にまとめて今日中に俺の机に置くように」

「あう?!そんなはやくですか!?」

「だから今から始めろ。さっさと行け。帰った報告は俺とコイツだけで行く」

「でも……むぅーっ」


徐庶さんは一度私をむっと睨み、荒い歩きで階段を登って行きました。


「社長、ボク、彼女に何か悪いことでもしたのでしょうか。会ってからここに来るまでずっとあんな調子ですけど…」

「…知らん」


興味なさそうに答えた一社長は階段を登り始め、私もその後を追いました。


※ ※ ※


ある部屋に行くと門の前にさっき会った金髪の少女とまるで猫耳みたいな頭巾を被った娘が立っていました。


「あんた、また変なのを拾ってきたわね」


猫耳頭巾の少女が社長に言いました。変なの扱いされてます。


「失敬だな。広く(?)いえばお前も俺に拾われた猫だ」

「誰が猫よ!しかもアンタなんかに拾われてなんかないわよ!」


まるで猫の毛並みを逆撫でした時の猫みたいに脅威の姿勢を取りました。


「<<まあ、まあ、落ち着きたまえよ。仔猫ちゃん>>」

「誰が仔猫ちゃんよ!」

「文句は後でいくらでも聞いてやる。今はこいつの関しての相談が先だ」


社長がちょっとヒステリック気味のネコミミ頭巾の娘をスルーしてその後ろの門にノックをすると中から聞き覚えのある声がしてきました。


「入ってきなさい」


扉を開くと社長が私に視線をやって先に入りました。私もその後を追って中に入りました。


「ソウソウさん!」

「久しぶりね、チョイ」


そこには3年前と変わらぬ、しかしまるで違う姿のソウソウさんが威厳ある姿勢で机の前に座ってボクと社長を迎えていました。


「来る間大変なことはなかったようね。私が覚えてる姿とあまり変わっていないわ。とりあえず座りなさい」


ボクたちが机の反対側に用意された椅子に座ると私は同じ目線でソウソウさんを見ることが出来ました。


ストレートだったソウソウさんの髪は、この時代でそうやってあんな髪型が作れるのかクルクルと回っていて、骸骨の髪飾りなどが物騒というよりは威厳をもたらすように感じてきました。


ボクたちの世界で聞いた通り、本当に王様だったのだとボクは思いました。


「大体のことは一刀が送った書信で聞いているわ。しかし、こんな風に向こうの世界の人間がポンポンとこっちに流れてくると思うと、少しぞっとするわね」

「そう何回も起きてたまるか。俺があのタイムマシーンを作るにどれだけ苦労をしたと思っている。訳の分からない古代のオーパーツなんかに比べられるぐらいなら自分の手で壊す方がマシだ」

「あら、丁度いいわね。真桜がアレを解剖してみたいそうだから彼女に任せなさいな」

「え?!そんなダメですよ、社長!レベッカさんの形見のようなものを…」


ボクが驚いて社長を止めようとすると、ソウソウさんと社長がお前が何を言っているのかって聞きたそうな顔でこちらを見ました。


「冗談に決まってるだろ」

「そうよ、チョイ。そんなこと彼がするはずないでしょう」

「へ?あ、あぁ…そうですよね」


一瞬気まぐれな社長ならそんなこともしちゃうのではないかとそわそわしていました。


「まあ、来れた理由が判らなくたって別に構わないわよ。帰ろうと思うのならいつでも帰れるわけだし…」

「で、ですが…」

「ヘレナのことはこちらが出来るだけ手を回すけど、なにせ天下は広いわ。必ず探せるという保証はないのよ。万が一彼女が探せなくなったとしたら、残った子供たちを養えるのはチョイ、あなただけよ」

「……」


最悪の状況を考えるとすればそうなってしまうかもしれません。ボクまで帰らなければ残った孤児院の子供たちは居場所を頼れる大人を皆失ってしまいます。


「…時間の概念は無視しても構わない。こちらにタイムマシーンがある。明日探そうが十年後に見つかろうが消えたその日に戻すことも出来る。気が済むまで探せば良い」

「社長…」

「まあ、さすがに十年は言い過ぎだけれどね。そんなに経って帰ったら子供たちがあなたたちの姿を見て誰だか判らなくなるかもよ」


ソウソウさんの冗談交じりの言葉にボクは苦笑しました。


「でもね、チョイ。勘違いをしてはいけないわ。私は何もただで私の大事な人力を使ってあなたの妻を探してあげようってわけではないの」

「へ?」

「あの頃は一刀の世界だから自重していたけどね。私は自分の目に適わない者を近くに置くほど呑気な君主じゃないの。完全実力主義。信賞必罰、それが私の軍の第一の規則よ」

「…つまりヘレナを探すまでここで働けということだ」

「あ、あ!はい!もちろんです!」


タダで宿食しようだなんて思っても居ませんでした。それにこの世界の技術で人ひとり探すのにどれだけの苦労がかかるかは知れたことですし。


「ボク、まだこの世界に来たばかりでどんなことが出来るかよく判りませんけど、任せてくださればなんでもします」

「…言ったわね?」

「…へ?」


な、何故か華琳さまの目つきが突然艶めいて…


「道具もいいけど、やっぱり生物を仕入れると盛り上がりそうなのよね。あの娘の歪んだ顔が目に浮かぶわ」

「え…へ?!」


ソウソウさんは机に膝をおき、机を越えて手を私の顎を撫でてからどんどん下におろしていきました。


「あ、あ、ああああの、ボクには妻子があって…!」

「冗談よ。……だからその虫けらを見るような目はやめて頂戴、一刀」

「…丁度目に虫けらに似たものがあったのでな。つい…」


いつの間にか相手への最大の軽蔑の意を持った視線で机の上に乗っかっているソウソウさんを見ている社長を見てソウソウさんは視線を避けながら席に戻って行きました。


「相手の弱音を握ってお前の性癖のためのおもちゃにしたら楽しそうか?」

「いや、冗談だったってば…」

「冗談で済まされる限度があるとは思わないか」

「いくら私でも家族のある者に手を出したりなんてしないわ」

「お前が人の結婚式で嫁を盗んで逃げたという話は冗談ではなかったと聞いているが」

「どこからその話を聞いたの!」

「事実かよ…」

「なんてことをしてたんですか?!」


ソウソウさんの性癖について聞いたのはその後の話です。これは、ああ、だからかと社長の反応が理解できました。後でチャンスがあればソウソウさんに言ってあげた方が良いかもしれません。


「まあ、生のおもちゃにするというのは冗談だとしても働けということは冗談じゃないわよ」

「とはいうが……正直な所今のこいつあまり出来ることってないからな」

「そんな!ボク有能ですよ!有能人材です!」

「あら、自分で言うぐらいならさぞ自信があるんでしょうね。どんなことが出来るのかしら」


ソウソウさんがなんだか期待に満ちた目でボクを見ていました。いえ、期待っていうより、孤児院で学芸会を開いた時それを見ているヘレナさんがしている目に似てます。言ってしまえば子供扱いしてます。


「ボク、これでも社長の秘書する前では向こうの業界では有名な産業スパイだったんです!どの時代でも情報戦は命懸けです!」

「そういえば、一刀からそんな話も聞いてたわね」

「そんな事実があった気もするが…」


ソウソウさんはともかく社長は絶対わざとです。


「とは言っても、お前が現役だったのはもう何年も前だ。あまり役立つとは思えないが」

「身に付いた技というのはそう簡単に落ちるものじゃありません。それにボクは社長が居なくなった後現役に戻ってるんですよ。子供たちの養子にしようと来た人たちの裏調査にも役立ちましたし」

「…ほう」


ボクの話に社長は目を輝かせました。


「華琳、どう思う?丁度いい人材だと思うが」

「そうね。丁度うちの間者に限界を感じていた頃よ。しかし、この世界での常識がないのが困りどころかしらね」

「それは学んでいけばいい。もっとも、現代の諜報術がこの時代でどれくらい通用するかは俺にも判らないが」

「人との触れ合いと言うのは時代とはあまり関係ありません。この時代の文化などが判ればボクが現場に行かない限り他の者たちに経験などを教えることは出来ます」

「…いいわね。じゃあ、とりあえず一刀と一緒に居ながらこの世界について学びなさい。その後間者の育成をあなたに手伝わせてもらうことにしましょう」

「はい」


こうしてなんとかボクがここで何をするかが定まってきました。


「…俺に頼るとこの世界に馴染むのに無駄に時間がかかるようになるだろう」

「ただめんどくさいだけでしょう?」

「こっちは元直の世話だけでも手一杯だ。桂花に任せればいいだろ」

「はダメよ。忘れてるようだから言っておくけど桂花は男嫌いなの。それに風もまだ修習中みたいなものだからこれより負担をかけさせたくないわ」

「なら凪に任せよう。丁度助っ人がなくて死にそうだったからな」

「…そうね。警備隊ならこちらの生活を肌で実感できるでしょうからいいかもしれないわ」


ソウソウさんと社長がそう話し合っている姿を見て、ボクは不思議な気分になりました。


ボクが知っている社長は普段何かを決める時にこう誰かと相談するような人ではありませんでした。誰かに相談と言ってもほぼ自分の言いたいことばかり言って、結局自分がやりたいように決めるのは同じでした。それがソウソウさんとはこうして話し合っている姿を見るとなんだか微笑ましく思えてきました。


「…なんだ、その気持ち悪い笑みは」

「ふえ!?いえ、な、なんでもありませんよ」

「……やっぱり帰らせるか」

「うわあ!違うんです!あざ笑いとかじゃないんです!!」

「一刀、あまり意地悪なこと言うものじゃないわよ。チョイ、疲れてるでしょうから今日は与える部屋で休みなさい。桂花!聞いているの解ってるわよ!」


ガタっ!と扉から大きな音がしました。


ああ、そういえば気にしてませんでしたけど居ましたね。


三人ほど。


「も、申し訳ありません、華琳さま…」

「風はダメって言ったのですよ?桂花ちゃんがどうしてもって言うから」

「何一人で抜け抜けと…!」

「…元直、報告書は書き終わったようだな」

「あう!?…まだ始めてません…」

「ならお前がチョイを連れていけ。俺の隣の部屋が空いてるからそこに案内すれば良い」

「一刀様の隣の部屋……ですか?」

「何だ?」

「いえ、何でもありません。こっちです」


徐庶さんがボクを見て据わった声でボクを呼び、廊下を歩き始めました。


「ああ、徐庶さん、待ってください。社長、ソウソウさん、ありがとうございます」

「明日にお前の上官に合わせる。以後はそいつの言うことに従えば良い」

「期待してるわよ、チョイ」

「はい、では」


ボクはぺこりと礼を徐庶さんの後を追いました。


<pf>


華琳SIDE


「さて、主の命を無視して盗み聞きなんてした悪い仔猫ちゃんたちにはどんな罰を与えるべきかしらね」


チョイが行った後、私はずっと盗み聞きをしていた二人を見ていった。


「とは言っても華琳さま、今回ばかりは風たちにも言いたいことがあるのですよ。何やら華琳さまはさっきの人と初対面ではない様子でしたけど」

「そうです、華琳さま!華琳さまがコイツだけじゃなくて他の男まで知っていたなんて私も知りませんでした。しかも、わ、私をあんな男の慰み者にしようだなんて…」

「…そこまでは言ってなかったと思うが」

「アンタは黙ってなさいよ!息もすんな!華琳さまの部屋の空気が汚いあんたの吐息で汚れるじゃない!」


桂花が顔を真っ赤にしながら震えてる様子を見るとどうしてもお望み通りさせてあげてみたくなる気持ちが浮かぶのだけれど、残念なことにそんなことを一刀が許すとは思えないし、そんなことをしたらヘレナに申し訳が立たない。


「一刀が私に付き合ってくれれば万事解決だけどね」

「華琳さま!?」

「……」


…だからその人を虫けらのように見るのをやめなさい。


「まあ、さっきの会話を聞いていたら大体判ったとは思うけど、説明すると彼は一刀と同じ世界から来た者よ。あそこで彼の補佐についていたわ」

「お兄さんの世界だと…あの小さな兄ちゃんも天の世界から来たのですか」

「天の世界にはアンタみたいな奴しか居ないのかと思ってたわ」

「…しばらくの間ここに居させる。用事が済んだらいつでも帰るだろうから戦力としてはあまり期待しない方が良い」


まあ、それもヘレナが早く見つかった場合のことだけどね。


「彼に嘘を言ったつもりはないわ。出来る限りヘレナを探す。だけどどこかに保護されていない限り生きている可能性は低いわよ。この世界だと」

「あいつはあれでも意地っ張りだ。死んだなら死体でも見つけてやらない限り納得しないだろう」

「あんたらしくもなく人の事を考えてるのね。向こうも結構あんたのことを頼りにしてるように見えたけど」

「何処かもしれない所に突然落ちてみろ。知り合いが居たら何があっても離さないぞ」

「まあ、ちょっと年の離れた兄弟みたいな感じでいいじゃない」


それでもチョイの一刀への気にし具合はあっちの世界でも結構なものだったと思うけど。


そして桂花、そんなに彼には似合わなさすぎって顔をするのは失礼よ。ああでも彼は下に子供(孤児)が数十人居るのだから。


「それじゃあ、まあ、詳しい話は後で報告書で送るとして、俺も先に帰らせてもらう」

「そうね。あなたも疲れてるでしょうから今日はもう休んで良いわよ」


そう言って一刀は私の部屋を出ようとしたがふと脚を止めてこういった。


「ああ、一応これ言っておくか」

「??」

「…あいつ、俺より年上だから」

「……は?」


彼はそう言って部屋を出た。

北郷一刀 現在の年齢二十一ぐらい

チョイ・ガン 現在の年齢二十六、七ほど


ホルモン不調かな(すっとぼけ)


北郷一刀がCEOになったのがだいたい十五あたりなので、チョイはその時既に社会で名高い産業スパイである必要がありました。実力のあるハッカーはだいたい中、高校生の時に学びますからね。一刀が十六、チョイが二十一、二才の時にチョイを秘書にして、約二年秘書をさせた後タイムマシーンで恋姫の世界に跳び三年間居ます。そして華琳を連れてこっちの世界に帰ってきたのが現代から一刀が消えてから一ヶ月後の時。約一週間ほど過ごした後元の世界に戻って現在約4ヶ月ほど経っています。そしてチョイの時間列は一刀が再び消えてから三年後なので大体年の差は合っています。


華琳:秋蘭=一刀:チョイという比例式が成立します。


ちなみにヘレナ・スミスもチョイと同年輩です。


そろそろ西涼との戦いを開始させたいのにチョイの話がこのままだと物足りない感じがするから悩み中…あまり長引かせたくないんですけどね…。


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