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人類には早すぎた御使いが恋姫入り  作者: TAPEt
覇王と御使いで七日間の駆け落ち
77/149

最終日

華琳SIDE


ぴーぴー


車から出る例の音が二階にある私の耳にまで届いた


「んんっ……」


目を開けるともうかーてんの向こうに光が差している。

明らかに寝坊をしていた。


「一刀は…」


またいつものように先に起きて出かけているのかと思いきや


「……」


まだ隣で寝ていた。


そもそもなんで私たち同じ寝床で寝ているのかしら。

…あ、思い出したわ。昨日彼の看病をしていたら…眠くなったので……

……


「何で隣に潜り込んだの」


いや、本当に何考えてるのかしら、私。

看病に疲れて椅子に座ったまま眠ってた所上半身だけ布団に落ちたと言えば判るけど、なんで病者の隣に潜ったの?

しかもよくよく考えたら、夜明けに起きたのに、隣に彼が寝ているのを見て二度寝してた


「…っっっ!!/////」

「…華琳…」

「!!」


私は思わず当てていた枕を握って寝ている彼を叩いた。


「ぶっ!なっ!」

「寝言で!読んでんじゃ!ないわよ!馬鹿!」

「何だおい!やめろ!」


慌てた彼も枕を手に持って防御している間にも車の音はずっと鳴り続けていた。


「ん?おい、今何時だ?」

「へ?」


私と彼は時計を見た。

時計は8時半を過ぎていた。


「完全に遅れた。おい、急ぐぞ」

「え?ちょっと、今日どこに行くの?」

「後で説明するから先にシャワー浴びろ!」


彼はそう言って先に部屋を出た。

次に彼の部屋の門が開いてまた閉じる音がした。

…何なのかしら。


「あ、そういえば」


今日で七日目なのね。

この世界に居る最後の日…。


<pf>


「ふあああ……」


迎えに来たチョイの車の中で口を塞いで欠伸をすると運転席のチョイからクスっという笑い声がした。


「ちょっと…」

「あ、すみません、ソウソウさん。でも二人とも寝坊だなんて以外ですね。昨日何かあったんですか」

「「(…別に)何もなかった(わよ)」」

「…さようで」


私たちの声が見事にハモるとチョイの声が更に笑みが混じってきた。

何一緒に声だしてるのよ。まるで言い訳に聞こえるじゃないのよ。


「それで、今日はどこに行くのかしら。最後の日だから期待してもいいのでしょうね」

「最後の…?」

「今日が最後の日だ、チョイ。今日で俺と華琳は元の世界に戻る」


キィーーーーッ!!


「きゃっ!」


突然車が止まって私はびっくりした。

べるとをしてなかったら大事故になっていたわ。

(※後ろの座席でもシートベルトをしっかり締めましょう)


「おい!」

「社長!どういうことですか。ボクにはそんなことは一言も言ってなかったじゃないですか」

「言ってたらどうする!今日の昼ぐらいに言うつもりだったのだ。先に言ってもお前が泣きじゃくるだけで何の得もしないだろうが」

「だからって…!社長はいつもそうやって人の気持ちなんて考えないで勝手に決めちゃう所が行けないんです!」

「そう!そこは私も同意するわ」

「お前は話がまどろっこしくなるから乗るな」


何よ。あなたのその癖への犠牲者としての私の話も始めたら三日三晩話せるわ?


「はぁ…もう丹念していたのですから、煩く言っても仕方のないことですね」

「チョイ…」

「急に止まったりしてごめんなさい、それじゃあ出発しますね」


名前を呼んでもなんとつなげばいいか判らなくて戸惑ってる間チョイは再び車を動かし始めた。


というか、これってどこに向かってるの?


<pf>


さーっ


「ふむ…」

「わー、ソウソウさん、綺麗ですね!ほら、社長もなんか褒めてください」

「いいえ、良いわ。今はちょっと一刀みたいに黙っていてくれた方が助かるの」


ありのままに今起こっていることを話すわ。

私は車でどこかに向かっているのかと思ったら、いきなり男二人の前で下着姿を晒すハメになったわ。

何を言ってるのか私もわからないわ。

なんで私がこんな恥ずかしい状況にあわされなければならないの?


「言っておくがそれは『水着』と言って水に入る時に着る服だ。特にお前の素肌を人に見せるために着せたわけではない」

「見られていることには代わりないでしょう?」


別に彼に見られるのは恥ずかしくなかった。

彼とは裸を見せ合ったことだってあったから……まったく恥ずかしくないと言ったら嘘だけど。

でも彼以外の男に肌を見せるというのはどうしても拒否感があった。

いくら相手がチョイだとしても……。


「そもそもなんで水着とやらを選ばなきゃいけないの?」

「判るだろ。これから行く所が水場だからだ」

「正確には海辺に行きます。孤児院の行事で、社長の個人別荘で一泊する予定です」

「…あなた個人の別荘もあるの?」

「お前だってそれぐらいあるだろ」

「いやそりゃあるんだけど……海辺にはさすがにないわね」


そもそも海見たことないし。


「すごいんですよ、社長の別荘は。マイアミの所とくらべても劣らないぐらいすごく綺麗な所で…近くに居たらそこに住んでいたいぐらいです」

「ああ、それは判ったから…もうちょっと肌の露出が少ないものはないの?」

「えー」

「…何でお前が嫌がる」


一刀が据わった目でチョイを見るとチョイはハッとして口調を改めた。


「わ、判りました。それじゃあ、こちらの方にしてみますか?」


今着ている本当に『下着』となんら変わらない面積の水着と、腹を隠してくれる一つに合わさった紫色の水着に着替えると、少しは恥ずかしさは軽減した。


「そこにこれとか付けると普段着と露出は大体一緒だな」


そこで一刀がどこからか水色の布をスカート見たいに巻くと、なんとか外に歩けるような感じにはなった。


「これならなんとか行けそうね」

「そうだな。それじゃあ行くか」

「何言ってるんですか。社長のも選ばないと駄目じゃないですか」

「俺は水には入るつもりないから別にいらな…」

「何言ってるの、必要に決まってるじゃない」


一人だけ逃げようだなんて許さないわよ。


・・・


・・



「…帰ったら先ず再活運動からだな」

「社長体全然整ってますよ?」

「お前の裸晒してから言え」


一ヶ月ぐらい昏睡状態だったことを考えると体の筋肉の衰退は避けられないことだったけれど、チョイの言う通り彼の外見は人に見せて恥ずかしいものではないと思った。


というより男は下しか隠さないのね。


「…見入りすぎた」

「え?あ、あら、そんなことはないわよ?あなたこそ私の時ジロジロ見ていたじゃない」

「……」


…なんで否定しないのよ。

いや、してもそれはそれで嫌な気はするけど。


ちなみに彼の水着は単調な藍色一色のものだった。

彼はそこに白い上着を見つけて羽織った。


「さて、後はチョイの水着を選ぶだけね」

「……へ?いえ、ボクは自前のが」

「ここまで来て自分だけ綺麗に終わらせられるとおもったのならお前はまだ俺を良く判っていない証拠だ」

「え?え?ちょっと二人とも待ったください!ボクは…!!」


それから約1時間ぐらい着せ替え人形遊びを楽しんだ私たちは、ようやく海に向かうことは出来た。

結局チョイの水着は買わなかったみたいだけど。


<pf>


青い空。

青い海。

黄色い砂場。


「うーみーだーーー!!」

「わーい!」

「ボクがいちばんのりだー!」

「みなさーん、駄目ですよー。入る前に準備運動しないとー」


私たちが海に着くと丁度孤児院の子供たちを連れた大型のバスも到着していた。

バスから降りた子供たちは既に水着に着替え済みで、扉が開いた途端に誰が先と言うまでもなく海に走っていこうとした。

だけど黒い『ビキニ』を着たヘレナの指示に皆従って、準備運動をは始めていた。


私たちはチョイが設置してくれた日除け用のパラソルの下でその様子を見ていた。

海の太陽は熱かった。


「そういえば、チョイに渡されたものを忘れていたな」

「何?」


本を読んでいた彼はそう言いながらそこにあった鞄から瓶を出した。


「それは?」

「サンオイル。肌が焼けないために塗る油だ」

「ちょっと、そういうのがあるならさっさと出しなさい。ほら」

「あ」


一刀の手から瓶を受け取って油を手に出してまずは腕から塗りはじめた。


「……」


一刀はそんな私を見てるかと思いきや持ってきた本を読む作業に戻った。

何?ちょっと機嫌損ねたみたい…?


「そ、それにしても、ヘレナは一人であの人数をよく引率できるわね」

「…しっかりしてるからな」

「助けなくていいの?」

「子供たちの世話は彼女の役目だ。俺は別荘を貸しただけで、別にそこまで手を加える義理はない」


きゃーっ!

ヘレナさん!

先生が砂場で倒れちゃったー

救急班いそいでー


「……」


しっかりしてるのって、先生の方のこと?それとも子供たちの方?


「…皆まで言うな」


<pf>


子供たちの水遊びが一端終わったのは午後2時ぐらいだった。


楽しく遊んでいたあまりに空腹を忘れていた子供たちも一人二人海から出てき始めた。


「みなさーん、ご飯にしますよー」

「「「「はーい」」」」


ヘレナの引率に従ってまだ遊んでいた子供たちも一人二人水から出てきた。


「お昼はどうするの?他に用意して来たようには見えなかったけれど…」

「そろそろ来る時間だ」

「来るって、食事が?」

「社長、連絡来ました。別荘の前に到着したそうです」


チョイがそう言うと思いきや向こうから十数人の男たちが何かを運んでくる様子が見えた。

日除けのための簡易な屋根のようなものを設置しはじめた男たちは、その後その下に数々の料理が入っている大皿を運んできた。


「なるほど。外で別に用意したのね」

「料理を他にする時間がなかったので。せっかくですしたまにはこういうのも良いかと社長が…」

「…チョイ、お前ちょっとこっち来い」

「え、社長?」

「華琳、悪いが食事は院長としてくれ。俺はこいつちょっと話があるからあとから行く」

「え、ええ……」


一刀が何やらすごい剣幕でチョイを連れて行ったので私は文句を言える間もなかった。


「…さて、どうすればいいのかしらね」

「お姉ちゃん、一緒に食べよ?」

「え?」

「早くいかなと美味しいの全部取られちゃうの、早く!」


その時孤児院の娘たち二人が一人になった私を連れに来てくれた。

ヘレナがやらせたのかと見てみると、ヘレナは子供たちの監督で疲れていたのか食事を取りにも行かず向こうのパラソルで一休み中。


「ええ、院長先生の分もとってあげないとね」

「それはもう他の子がやってる」


なんて出来た娘たちなのかしら。


子供たちの様子を見ると並んでいる大皿の料理の中好きなものを自分が持っている皿に移していた。

なるほど。ああやって食べたいものを食べたいだけ食べるという寸法ね。

座って出る料理を待つのとは違って自分の嗜好を挟めるところがいいところね。


「さて、料理がなくなる前に早く私も行きましょうか」


子供だと安心していたら食べる量が半端じゃないわね。


<pf>


「痛っ」


座る椅子もなく、さっきまで居た傘の下でヘレナと一緒に食べていたら急に首の裏側に虫が刺さったかのような痛みが走った。


「あら、どうしましたー?…あー、これは…焼けちゃいましたね」

「へ、本当に?」


上着があったから大丈夫だろうと思っておいるちゃんと塗らなかったのがまずかったのかしら。


「マイクちゃん、悪いけど別荘に行って氷のパック持ってきてくれるー?」

「ふぁーい」


ヘレナが口の中に食べ物を頬張っていた男の子にそう頼むとその子は嫌な気色も見せずに別荘に走っていった。


「ひどくはないみたいですけど、少し跡が変に残るかもしれませんねー」

「はぁ…困ったわね…」


帰ったら誤魔化すことが増えたわ。


「社長さんにしてはー、ちょっと以外なミスですねー」

「へっ?」


なんで一刀が出てくるの?


「塗ったのは私だけど」

「……へ?」

「…何?」


何かまずかったのだろうか。


「……お二人さん、もしかして喧嘩してますかー?」

「へ?いえ、そんなことはないけれど……何故私の体に私がおいるを塗ることが彼と喧嘩したのかって話につながるの?」

「だって…普通こんな時にくるとー、サンオイルは相方の人に塗ってもらうものですよー?」

「……そうなの?」


知らなかった。

普通に自分で塗ろうと思っていただけなのに。

だからさっきあんな機嫌悪そうな顔だったのね。


「別に喧嘩したってわけじゃないわ。私がそういうのあまり知らなかっただけ」

「そうですかー。喧嘩じゃなくてよかったですねー」

「そもそも彼を喧嘩なんてしていたらここにも一緒に来なかったわよ」

「それもそうですねー。なんか食事もこちら側でしていましたので、もしかしたらと心配しましたけどー、奇遇でしたねー」

「……」


そういえば、アレの後に今食事も別に取る状況になってるってことは…。

いや、それは私のせいじゃないでしょう。だってチョイが用事があるって言うから…。


「あー、社長さんとチョイさん帰ってきますね」


ヘレナがそう言うから見てみると、向こうで二人で何か話し合っていた一刀とチョイが皿を持ってこちらに来ていた。


「ただいま戻りました」

「お帰り。で、どんな話をしていたの?」


私が尋ねると無表情だった一刀の顔が少し曇った。


「べ、別に大したことは…」

「チョイがカミングアウトした」

「ってえええええええええええ!!」

「あらあらー」

「へ?」


かみんぐあうとって…何?


「ち、違います!ソウソウさん、ヘレナさん、違いますから!」

「隠さなくても大丈夫ですよー、チョイさん。私昔からチョイちゃんのことかわいいと思ってましたからー」

「だから違いますってば!社長!変な八つ当たりはやめてください!」

「……」

「ヘレナ、チョイは何をあんなに慌てているの」

「ああ、ソウソウさん。カミングアウトというのはですね」

「説明しないでくださーい!!」


久しぶりに慌てた顔で必死にヘレナを止めるチョイがかわいいと思ったわ。


「あ、そうだ。院長。言ってなかったが今日俺たちは…」

「はいー、向こうへ行かれるのですね。ソウソウさんから聞きましたー」

「…そうか」


彼らがいない間ヘレナにもすでに話してあった。

おそらく、もう帰ってくることもないであろうことも。


「子供たちが寂しがりますねー」

「チョイがいる。後援の方は以前どおりに行われるだろう」

「ありがとうございますー。でも、そうじゃなくて、子供たちが社長さんのこと見たがると思いますー」

「…そんなことはないだろう」

「いえー、あれでも皆社長夫婦のこと好きでしたからー。レベッカちゃんに限った話ではないのですよ」

「……」


彼はそれ以上否定もしなかったが、嬉しそうな表情でもなかった。

今更知った所で、彼の決定が変わることはないだろうけど、後味が悪いという意味では彼にとっては知りたくなかった情報なのかもしれないわね。


「いつでも辛くなったらまた帰ってきてください」

「…院長」

「待っていますからー」

「……」

「ヘレナさん…」


ヘレナはにっこりを笑いながら一刀にそう言い続けた。


恐らくもう二度と帰って来ないだろう彼に対しても悪あがきなのか。

純粋にいつでも待っているという小さな願望なのかはわからない。


私に対してヘレナもチョイも何も言わなかった。罵倒したりも、暴言をハイたりもせず、ただ私が信用できる者か否かを見極め、その後には彼をよろしくお願いすると言ってきた。

それなら彼らの期待に応じることこそが、私の役割。

もちろんそれは誰かに頼まれたからではなく、彼を迎え入れることに置いて当然のことだったけど。


「変な期待はさせたくない」

「……」

「帰る時にお前らの前で死んだように装うと考えたこともあったが、こうして休みを兼ねた時期で言うのは、お前らの感情が少しでも和らぐようにを仕向けただけだ」

「社長さん…」

「だけどだからと言って妙な期待を抱かせたくはない。もうお前らは自分たちの道を行け。もうお前らとすれ違うことはないだろうから…彼女のことももう忘れたつもりだ」

「…そう簡単に忘れられるものでは…」

「俺は忘れられる。そういう人間だからな」

「……」


ヘレナは肩を落としながらため息をついた。

でも彼女もチョイも結局彼を手放すことはないだろうと思う。

一度彼を失っていた私がずっと彼を探し続けたように。

願うことは、ただそれが彼らの破滅につながらないこと。

それだけだった。


<pf>


それからも海水浴は続いて、夜にばーべきゅーばーてぃなどもあって、その後は花火大会が行われていた。

その間一刀はずっと正気に戻れずにいたので特にこれといった事件は起こらなかった。

彼とまともに話を交われるようになったのは花火大会も終わって子供たちが別荘に戻って時だった。

夜になって海に吹く風が爽やかに感じる頃、私は彼を一緒に海辺を歩いていた。


「気分はどうだ?」

「…ちょっと食べ過ぎちゃったわ」

「薬飲むか?」

「そこまでではないわ。ありがとう」


で…


「今日帰るのよね」

「あぁ」

「…帰る日なのにわざわざこんな遠くまで来ちゃって…」

「お前にとってはせっかくの休みだったからな。最後ぐらい本当に休みみたいな雰囲気出してやりたかっただけだ」

「そう……で、建前はそうとして本音は?」

「……月が綺麗だな」


私の問いには答えず彼は足を止めて藍色の空を見ながらそう言った。


「……?」

「…華琳、いや、曹孟徳」


しばらく月を見上げていた彼は再び私を見た。

突然真名じゃない名前の方を呼ばれると何故か緊張感が湧いてきた。


「な、何?何で突然また名前で呼ぶの?」

「……孟徳」

「…まさか、今更一緒に帰らないとか言うんじゃないでしょうね」


ずっと真名で呼ばれていたから突然名前に呼ばれて私は不安になってそんなことを言ってしまった。


「お前の世界では真名を呼ぶことで互いの信頼を確かめた。が、こっちの世界ではこっちの世界で互いの信頼を確認する方法がある」

「…それは…どうすればいいの?」


私がそう聞くと彼は懐から小さな箱を出した。

それを開けると、中にあふ一双の銀色の指輪が月光を浴びて輝いている。


「一度誓えば、その盟約の期限は『死がふたりを分かつまで』……」

「……」

「この指輪は互いに無制限の信頼を付与する。これ指にはめられている限り、互いを裏切ることは出来ない」


そして彼は箱の中の指輪のうち一つを取って、箱を握った左手で私の左手を取った。


「これからお前の前からまた消えることがあるかもしれない。それは俺にとってもどうしようも事だ。制御がきかない。だけど、また俺が消えた時に、周りがなんと言おうが、お前がこれを指に嵌めている限り、俺は必ずお前の元に戻ってくる」

「…私があなたを信じてあげる代わりにあなたは何をしてくれるのかしら」

「……お前が俺に望む全てを…」

「ならこうしましょう。ずっと私の側に居なさい」

「……」

「私が嬉しい時も、悲しい時も、辛い時も、楽しい時も、ずっとあなたは私の側に居なさい。そうやってあなたとこれからの道をずっと一緒に歩いてくれるのなら、この誓いをあなたと交わりましょう」


空いている私の右手で彼の顔をなぞった。


「もちろん、あなたの言った通りに時にはあなたがそっと消えるかもしれない。だけどそうならないようにするのは私の役目。だけど、もし消えたとしても、帰ってくるのはあなたの役目」

「…誓おう」

「ええ、誓うわ」


彼はその指輪を私の左手の薬指にはめた。


そして残ったもうひとつの指輪を自分の左手にはめた。


「…華琳」

「一刀」


「「これからもずっとあなたの側にいれるように…」」


<pf>






<pf>


それから、私たちはそのまま近くの道路まで行ってタクシーを呼んでは家に戻った。

チョイとヘレナにお別れを告げることもなく。


彼はその方がいいだろうと言った。


「涙流しながら別れる別れ方は嫌いだ」


その涙が誰から流れるものを指してるのか聞きたかったけど、さすがにやめておいた。

チョイとヘレナはどう思うだろうか。

彼のことを長く知っていた彼らだから、恐らく昼のあれで最後だろうとすでに気づいていたかもしれない。


「妙才のことは決まったか?」

「……まだよ。ただ、そうね……」


私は一度自分の指にはめられている指輪を見た。

趣向には合わなかったけど、彼からもらったということに意味があった。

そして彼との約束の証としても。


「何なら俺が妙才と決着をつける事もできる」

「いえ、これはあくまでも覇王としての私の仕事だわ。あなたには手伝わせない」

「…そうか」


彼は倉庫の扉を開けた。


中央には七日前と同様たいむましーんが置いたあった。


「今更いうが、実は充電は会社に向かって高速充電させて三日前に既に稼働できる状態だった」

「?なんでわざわざ……」

「万が一お前が早く帰りたいということもあると思ったからだ。まあ、予定どおりに最後の日まで来たが」


私が彼に関して探るようになったのは4日目からだった。

もし私が早く帰りたいとなんて言っていたら、彼についてこんなに知ることはなかったでしょうね。


「中にお前の服と薬など既に入れてある。服はここは暗いから適当にそっちで着替えてくれ」

「ええ…」


私はたいむましーんの中の席に畳んである私の元の服をその場で着替え始めた。

でも、着替えていた所ふと何かを思い出した。


「ねえ、ちょっと来てくれない?」

「何だ?着替え終わったか?」


彼が振り向いてたいむましーんの近くまで来た。

たいむましーんの中で立っている私と、外に居る私とで、ちょうど目線が合った。


「……」

「何だ?」


呼んだ理由をまだ気づいていないのか無表情な彼の顔に私は自分の唇を近づけた。


「!!」


彼は驚いて後ろに去ろうとしたけどそういう経験においては明らかに上な私がそのまま返すわけがなかった。

私のは両腕を彼の首に絡めて彼が離れるの止めた。


「んっ…」

「………ん」

「!!」


と思ったら思いの外彼の反撃が激しくて驚いた。


「ん……っは!」

「……はあ!」

「…初めてじゃないわね…あなた」

「悪かったな。マグロじゃなくて」

「意味はわからないけど一筋縄ではいかないということはわかったわ」

「わかってくれて助かる」


ほんとに何一つ思い通りにはできない男ね。


「って、一刀?」


ふと彼の腕が私の腰を回った。


「一回は一回だ」

「ちょっ…んっ…!」


それから長い攻防が始まるけど、これ以上の説明は省くわ。


そしてこれが、私たちの七日間の駆け落ちの結末。

これから更に深まるだろう乱世の荒波の前に、私は彼と二人で立ち向かう。

隣に誰かが居る。

それだけでも負ける気がしない。

今まででも自分が負けることなんか考えたこともなかったけど。

彼と一緒にいる私に、


もう怖いものは何もないわ。


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