二十一話(前編)
噛ませ犬。
※6/18 ちょっとミスがあったので修正。
13/5/17 韓国に逆収入しつつ修正。
張遼SIDE
ウチは今、虎牢関に撤退したうちの部隊と離れて一人である荒野のような場所に立っている。
それは、ウチが見たある手紙の真偽を確認するためやった。
汜水関で劉備軍の君主、劉備が華雄に打った矢には、一つの文章の手紙が巻かれとった。
『董卓の無罪を証明できる方法を知っている』
興味があれば指定した場所に来な、という話と一緒やった。
それを見てウチは血を引いた。
確かに董卓、月っちが十常侍の『張譲』ちゅう奴に嵌められて幼い皇帝を人質にして都を自分勝手にしているという流言が流されたことは知ったる。
その流言を機会と見て軍を集めたのがあの袁家の袁紹。
でも、幾らなんでも時間的に隙がなさすぎたんや。月や賈詡っちが張良に対応する術を考える間もなく連合軍は組まれとった。
時間的に都でのことが袁紹の反応を呼び起こすにはそれよりは長い時間がかかるはずだったんや。
つまり、誰かが先に袁紹にソレを知らせたる。
言ってしまえば、袁家が張譲と結託している可能性が出てくる。
それやったら、結局月は張良と袁家に嵌められて、袁家の名誉のために犠牲にされる役割になるっちゅうことになる。
華雄や恋はただ月が守れたそれでええと思ってたけど、ウチはそれだけじゃあ済まさん。
必ず月っちを利用しようとした連中をぶった切ったるわ。
そのためにも、この手紙を送ったやつをウチが自分の目で確かめたかった。
「北郷一刀だ。こっちは楽文謙」
「張遼、字は文遠や。先ず聞きたいんやけど、何でウチらを助けようとするん」
時流というもんがある。
天下はもう、月とウチらを敵を決めつけていた。
そんな中、どうして劉備軍という小さな勢力でこんな内通者のようなことをするんや。
「うちの君主は、とても戦嫌いな人でな。しかもそこに義もなく、民の笑顔もないと知ったら、きっとこの先大きな衝撃を受けるだろう」
「大した君主やな……」
「そうだな。そんな優しいだけで、自分を従う人を守る力もない君主が、この先に生き残れるはずがない」
「っ…!!」
一瞬私は顔をしかめた。
それが月のことを言ってる気がしたんや。でも、連合軍の連中は、月っちの顔すら知らないはず。
「なるほど。『董卓が善人』と」
「!!」
「!どういうことですか、一刀様」
「董卓が、この大陸を群雄割拠の時代に繋げるための『噛ませ犬』でしかないというだ、凪」
まさか、こいつウチの反応を見るためにわざと自分の君主のことを話してウチの出方を見たのか!
「あんた、ほんま何者なん?」
「…北郷一刀、天の御使いなどをやっている」
「天の御使い……あの似而非占い師の占いの…?」
「エセかどうかは…この際どうでも良い」
「……せやな」
今ウチに大切なのはただ一つ。
月っちたちを助けることに、こいつが頼りになるかどうかや。
「一刀様、さっきの言葉、どういうことですか?董卓が善人などと…」
「戦に善人などない、凪。あるのは勝者を敗者。勝った方が正義で、負けたら悪だ。だが……どうだ、張文遠、董卓はどのような人間だ」
「……あんたの言う通りや。月は優しい奴や。優しすぎて自分を傷つけようとする奴らから自分を守ることさえも躊躇ってしまうほど」
月っちは、こんな戦争、最初はしたくないと言っていた。
自分だけ犠牲になれば、兵たちも死なずに、洛陽の民の無事だろうと、そう思って。
でも、
甘い、月。
甘いっちゅうねん。
「だからこそ、ウチらは月っちを守るためにこの戦、負けるわけにはいかへん。だから、頼む。月を…助けてくれ」
ウチは目の前の北郷一刀に頭を下げた。
<pf>
凪SIDE
目の前にいる張遼は董卓軍の将。
そして、自分の君主、董卓をたすけてくれと一刀様に向かって頭を下げてきました。
コレは……紛れもなく連合軍への裏切り。
下手をすれば、一刀様自身だけではなく、いや、必ずや桃香さままでもが火を受けるでしょう。
「一刀様、お言葉ですがコレは……」
「凪」
でも、一刀様は私を止める言葉を知っています。
「…俺を信じろ」
「……一刀様…」
そう言われてしまえば…私が何も出来ないと知っていて……
「張文遠、取り敢えずコレを読んでみろ」
そして一刀様は竹簡一つを張遼に渡しました。
張遼は月光にその竹簡を光らせながら内容を読み始めました。
そして、暗い中でもはっきり分かる程、張遼の顔が歪みました。
「……な、何や…コレ……」
「言っておくが、怒り狂って壊したりしないでもらう。原文だからだな」
「なんであんたがこんなものを持ってるんや!」
一体ソレがなんだったのか、私には判りませんでした。
「一つ…2つ聞いておくが、董卓は今どんな状況だ」
「今は安全な所に隠れてる。と言っても、洛陽まで連合軍が来たらまた長安に逃げるための準備中や」
「そうか…ならもうひとつ、董卓と今の皇帝は中が良いか?」
「!……それは…」
「…それを聞くと単なる傀儡と操ってる人間の仲ではないようだな」
「っ、月っちは…!」
「これから俺の言う通りにしてくれ、張文遠。そうすれば、董卓を救い、董卓を貶めようとした連中に天誅を落すことが出来る」
「…解ったで。ウチはどうすればええん?」
と、張遼があっさりと言うと、一刀様は微笑みながら私の耳にささやきました。
「他に聞いてる奴がいる」
「はい!?」
「振り向かずに聞け、凪。俺を信じるか?なら俺が何を望むか察しろ。俺がお前に何を望んでいるのが必死に考えて俺の元まで辿りつけそこに辿り着いたら…後はお前のお望み通りだ」
「……」
「他の奴らじゃなくお前を選んだのが正しいことを俺に証明してみせろ」
そう言って一刀様は張遼の方に行って、彼女の耳元何かを囁きました。
「……本当なん?」
「俺の腕は心配するな。あとはお前の腕次第だ。お前が主を助けたいと思う気持ちが本物なら、きっと俺の興味にも答えるだろう」
そして一刀様は張遼から振り返ってそのまま来た道を戻って行きました。
「帰るぞ、凪」
「あ、はい」
本当に短い時間。
私はこの時、一刀様の言う通り、もっと自分の目の前で起きたことが何だったのか悩むべきだったのかもしれません。
<pf>
華琳SIDE
一刀とのご対面があって一週間、何日も他の軍の口も聞かず攻めつづけていた麗羽が軍議を招集した。
「きぃぃーー!なんですの。あの城は!この袁本初が一週間も攻めたというのに落ちないなんてありえませんわ!きっと何かの間違いですのよ!」
「そうなのじゃ。妾の軍ももう攻められないぞ!」
そして現れては直ぐにコレだ。
呆れたわ。
策もなく、ただ関に兵を突っ込ませるだけだったあなたに落ちてやる関なんて、虎牢関じゃなくてもないわよ。
麗羽の軍も、袁術の軍も大きな被害を受けている。死んでいった兵たちが可哀想なばかりよ。
ところどころ、諸侯たちの口からため息が漏れる。
「一刀さん!私に虎牢関を攻めろって言ったのはあなたでしょ!なんとかしなさいよ!劉備は一体なにをしていますの!?」
そしては自分の肩を持っていた劉備軍に苛立たさをぶつける。
今日も劉備軍には、劉備の代わりに一刀が諸葛亮と凪を連れて座っている。
「………」
一刀は黙っている。
このままでは麗羽がまた劉備軍に虎牢関の攻めを任せようとするかもしれない。
………まさか、それが狙い?
一刀はこう言っていた。
『虎牢関は落ちない』
と。
きっと何か仕掛けるはず。
でも、どうする。
こっちで虎牢関の攻めをすると言う?
それも悪くはないわ。あそこには張遼も飛将軍呂布も居る。是非とも欲しい人材だわ。
だけど、さすがに虎牢関を私たちだけで責めるというのは分が悪いわね。
「一刀さん、私の話を聞いていますの?!」
「……策もなく能もなく先代の名誉だけで座を得た小娘が…」
その瞬間、場が凍った。
「……一刀さん、今何か言いまして?」
「……たかが関一つも落とせなくて苛立って他軍に腹いせする小物だと言っているんだ」
「なっ!!」
麗羽が凍った。
「か、一刀さん」
隣にいた諸葛亮の顔が青くなって一刀に声をかけるが微動だにしない。
ちょっと…あれって本気?
幾ら一刀でも、キレる場面とキレてはいけない場面ぐらい分かるでしょう。
「桂花、アレって一体どういうことかしら」
「華琳さま、まずいかもしれません」
「どういうこと?」
「アイツ、目が本気です」
そう聞いて私は一刀の目を見た。
そして気づいた。
それは、黄巾党の本城を攻めた時、彼が逃した張三姉妹を私が先に読んでまた捕らえたと思って、それで私を見下すようにして帰っていった時のあの目つきだった。
本気だった。
昨日言葉とは関係なく、立場など考えず、一刀は本気で麗羽のことを思うがままに罵倒していた。
「あなた…今自分が言った言葉の意味が分かっていますの?」
「言葉通りの意味だ。お前が飛んだ出来損ないの君主で、連合軍の大将軍などには務まらないという意味だ」
「なーんですって!!斗詩さん!今直ぐあの無礼者を捕らえなさい!」
「一刀さん!それ以上の暴言は許しません!」
横に居た進行役の顔良がキレて立ち上がった麗羽の命令を聞いて武器を持った。
一刀の横に居た凪も構える。
止めなければ本気で不味いことになる。
「やめなさい、一刀!麗羽もよ!」
「華琳さん、あなたに私を止める権利はありませんわ!この男は私を侮辱したのですよ!この場で処刑しても文句は……」
「お前に何の権利があってそんなことが出来る?いや、寧ろ出来るものならやってみるといい」
「一刀!」
こうなるとわかっていたなら春蘭や秋蘭でも連れてくるのだったわ。
「斗詩さん、何をしてらっしゃいますの。今直ぐそいつを潰してしまいなさい!」
「虎牢関一つも落とせない馬鹿君主の下の馬鹿な武将にそんなことが出来るか」
「あなた、それ以上は許しません!」
「こっちの台詞です!」
顔良と凪がぶつける寸前……
「やめろと言っていると言ってるだろ!!!!!!!!」
「「「!!」」」
私の覇気の込めた一喝に、顔良も凪も動きを止めて、一刀も驚いてこっちを向いた。
「何をやっているの、麗羽。あなたはこの連合軍の大将軍よ!なのに勝手に虎牢関を攻めつづけては、落ちないからと言って弱将軍に腹いせをしたら逆に文句を言われたぐらいでキレてるんじゃないわよ!そんなのだから小物だなんて言われるのよ!」
「華琳さん、あなたまで私を侮辱するつもりなの?」
「今のあなたの行動は侮辱されるに値する行為よ!そして一刀!何の意味もなく麗羽を挑発しないで頂戴!この連合軍は瓦解させるつもりなの?!」
「…袁本初の無能さは明らかなものだ。彼女はこの連合軍の半分に至る兵を持ってしても虎牢関を落とせなかった。お前と俺が攻めていれば半日で落ちる関だ」
「だからそういう問題じゃないわよ。なんであなたは何時もそう時と場合も考えずに言いたい放題吐き捨て」
「……ちょっと待ちなさい、華琳さん」
その時、麗羽が私の話を止めた。
その顔は年も年で額に皺が見えている。
ってそうじゃなく
「今、なんと仰いまして?」
「は?」
「華琳さん、今なんとおっしゃいましたの?!」
何?
何故いきなり麗羽の怒りがこっちにも向いて来てるの。
私がなんと……
あ。
「……あなた方、二人がかりで私を愚弄するつもりですの?」
「証明してやろうか、袁本初」
「なんですって」
「曹孟徳と俺らで、あの虎牢関を半日で落としてやる。そしたら俺がお前に言ったことは暴言でもなんでもなく、ただの事実になるのだ」
「ちょっ、あなた何を考えてるのよ」
「良いですわ!あなたの言うとおりにしましょう。もし今日の日が落ちるまでも城を落とせなかったら、あなたの頸を切り落としますわ」
「…ふん」
「華琳さん、反董卓連合軍の大将軍としてめいじます。一刀さんの軍と虎牢関を落としてください。彼の肩を持ったのですから、それぐらい当然ですわね」
「……」
謀ったわね…最初から私が入ってくるように誘ったのね。
「そうと決まれば、もうこんな不愉快な所にいる必要はない。凪、そこに倒れてる孔明を連れてついて来い」
「は、はい」
そう言って一刀は軍議場を出ながら、ちらっとこちらを見た。
……仕方ないわね。
してやられたわ。
「とんだ噛ませ犬役になっちゃったわ……行くわよ、桂花」
「はい」
気のせいかしら。
桂花、あなたちょっと嬉しそうに見えるじゃない。
<pf>
愛紗SIDE
「一体何を考えてあんなことをしたんでしゅかー!」
気絶したまま軍議から戻ってきた孔明は、何やらいきなり北郷一刀に叫びだした。
一体何があったのだろうか。
「落ち着け、朱里。一体何が…」
「もうお終いです…桃香さま、ごめんなさい。私が…私がもっとしっかりしていたら……!!愛紗さーーん!!」
そして朱里は突然私に抱きついて泣き始めた。
私は慌てながら、戻ってきたアイツに聞いた。
「貴様、一体何をしたのだ」
「袁紹に言いたいこと言ってやっただけだ」
「は?」
「言いたい放題過ぎです!」
話が見えない。
それは泣いている朱里を見ながら慌てている雛里と、半分面白そうに見ている星も同じだった。
「しかし、一刀様、本当にどういうつもりであんなことを……」
「袁紹があまりにも遅いから苛立っていただけだ。おかげで前線に出ることになった」
……は?
「待て、貴様、今なんて言ったんだ」
「虎牢関を半日で落すことになった。曹操軍と一緒にな」
そこに居た皆は言葉を失った。
「…それで、どういう策なんですか?」
最初にそう言ったのは雛里だった。
「ない。言ったはずだ。苛立っていたんだ。ついカッとなって…」
「嘘です」
「………」
雛里は顔一つ変えずにアイツを見ながらそう言った。
「…何故そう思う」
「でなければ、この場で愛紗さんと星さん、北郷さんを捕まえるように言って、その頸を落として袁紹さんに謝罪した方がまだ私たちが生き残る可能性があるからです」
……確かに、それは雛里の言う通りだな。
「だから、北郷さんには策があるはずです」
「……興味深い答えだな」
そう言ってアイツは私と星の方を見た。
「どう思う、雲長。俺を殺すのと、虎牢関に命賭けて突っ込むこと。どっちが生きる可能性があるだろうか」
「……」
コイツ、また私を試すつもりか?
「お前がやったことだ。何か考えがあるだろう」
「根拠は?」
「そんなものない。だが、お前という人間の人柄を信じるだけだ」
「私も同じ考えだな。それに、北郷殿の頸を差し出して、桃香さまが泣く姿を見るぐらいなら、虎牢関に一人で突っ込む方がまだマシだろう」
「……そうか」
話を聞いた奴は今度は桃香さまが居る天幕の方で歩いていった。
「朱里ちゃん、もう大丈夫?」
「………ごめんね、雛里ちゃん」
「朱里ちゃんのせいじゃないよ。私だって、そこにいたらきっと朱里ちゃんみたいな反応すると思う」
軍議場で一体アイツがどのような状況を作ったのかは知らないが、朱里がこれほど取り乱す程なら、とてつもないことをやったということは間違いないだろう。
「楽進殿、あなたには分かるか。アイツが何を考えているか」
「…判りません。私にも説明してくれませんでした。でも、私は一刀様を信じます」
「………」
そうだ。
アイツが何の考えもなく何かをしたわけがない。
そしてその考えがどんなものかは知らないが、それが桃香さまに害をなすはずはない。
そう思いながら、私は桃香さまの天幕へと向かった。
<pf>
桃香SIDE
「おい、玄徳、起きろ。朝だ」
「うみゅ……うぅ~ん?何?」
「ぷはぁ……まだ眠いのだ……」
寝床の上に居るばかりですることがなかったから昼寝しちゃったら、一刀さんに起こされちゃいました。
確か、今日軍議があったはずだよね。そこであったことについてかな。
「おはよう、一刀さん」
「……虎牢関をこの軍だけで落すことになった。半日でな」
「…ふえ?」
「どうする」
どうするって……え?虎牢関って、今袁紹さんが攻めてる関だよね。
なんで私たちがまた出るの?しかも、半日で落すって……
「そんなこと、出来るの?」
「………」
一刀さんは何も言いませんでした。
でも、顔がいつもより少し暗い気がしてました。
「…仕方ないよ。やるしか」
「……!」
状況は良く分かりません。
軍議で何があったのかな、もしかしたら前回の汜水関の前での軍議の時みたいに、無理矢理任されたのかもしれない。
でも、それでも私たちは諦めるわけにはいかない。
私たちを信じてくれた人たちのために精一杯頑張って…やっていくしかありません。
「一刀さんも手伝ってくれるんだよね?」
「…状況は絶望的だ」
「そんなの幾ら私が馬鹿でも分かってるよ。でも、一刀さん、約束したでしょ?私のこと助けてくれるって。私に天下を見せてくれるって」
「……」
「愛紗ちゃんや皆もきっと精一杯頑張ってくれると思いますから……だから一刀さんもそんな暗い顔しないで頑張って」
私はちょっと眠気が覚めてなくて良く見えない一刀さんの顔に触れようとしました。
でも、思ったより一刀さんが遠くに居て寝床から中心を崩して倒れそうになりました。
「うわぁっ!」
「…!」
そんな私を、一刀さんはなんとか支える感じで抱きしめてくれました。
「ふぅ……ありがとう、一刀さん」
「………」
「…あ、あれ?一刀さん?」
もう、放してくれないかな…?
「……おい、翼徳」
「ふにゃ……らんらのだぁ?」
一刀さん?
「虎牢関で戦うことになった。どうする?」
「にゃ…?にゃっ!戦えるのだ?やったのだー!鈴々退屈すぎて死んじゃいそうだったのだー!」
「………ふっ」
「あのー、一刀さーん?さすがにちょっと恥ずかしいんだけど…」
本当にそろそろ放してくれませんか?
「玄徳、天下が見たいか?」
「ふえ?そ、そんなことより、一刀さん、もう放し…」
「嫌なのか?」
「ええっ?!」
え、何?なんでいきなりそんな風に聞くの?
も、もしかして一刀さん……
「か、かか一刀さん、あの、私まだ一刀さんとそんな関係になるのはちょっと早いかなぁと思うんだけど…そもそも最初に出会った時とかお互い裸同然になってたこともあったけど、それはあくまでも状況が状況だったからそうしてただけで…一刀さんをそんな目で見たことは……」
「…お前は何を言ってるんだ」
「え?!」
あれ?これってどういう状況なの?
私告白されてるんじゃないの?!
「一刀様、桃香さまを抱きついて何をしているのですか」
そんな時、凪ちゃんが入ってきました。
愛紗ちゃんたちも居ます。
「ん?玄徳が落ちそうになって支えただけだ」
「……それで、いつまで抱きついていらっしゃるおつもりですか」
凪ちゃん、目がなんか沈んでるよ。
何?私眠くてまだ状況が良く解んない。
「…凪?怒ってるか?」
「怒ってません」
「お前は俺が信用出来ないのか」
「出来るか出来ないかは関係ありません!とにかく離れてください!」
「あ、あぁの一刀さん、もう私良いから…」
私はなんかまずい空気を感じて一刀さんから離れました。
「…一人ぐらいは怒って怒鳴り付くだろうと思ったのに、孔明以外は全部ハズレか。つまらん。孟徳をからかった方がまだ面白みがあった」
「やっぱり何かあるんだな。お前、どうする気だ。どうやって虎牢関を落す」
「落とさない」
………あれ?
さっき私に言ったのと話が違うよ?
「…お前たち、全員俺を信じると言ったな。一人除いて…ならこれから俺が言うことを良く聞け。これから興味深いことが起きる、
虎牢関は落ちない。落ちるのは……」
<pf>
華琳SIDE
「…自滅?」
「はい、自滅します」
陣に戻って開いた軍議で、桂花はそう説明した。
「どういうことだ。半日で虎牢関を落すなどと言っておいて自滅するって…北郷は劉備軍を潰すつもりなのか?」
「もしかして、兄様は劉備軍を潰して私たちの所に戻ってくるつもりなんですか?」
流琉が自分の希望が篭ってる考えを言う。
でも、幾らなんでもそんなはずはないわ。
「一体誰が自滅するというの?劉備軍?それとも虎牢関が?」
「自滅するのは…袁紹です」
「麗羽が…?」
判らなかった。
麗羽を挑発して虎牢関を攻めるようになることが、どうして麗羽の自滅に繋がるのか……
「説明して頂戴」
「華琳さま、今前線にはどの軍が配置しているか、お分かりですか?」
「馬鹿かお前は。そんなこと私も分かる。袁紹の軍だろ?」
春蘭が代わりに応えた。そうね。幾ら馬鹿でもそれぐらいは分かるわね。
………
それで?
「今まで袁紹軍、及び袁術軍は、何日も続いた攻城にも関わらず何の戦果もあげずに被害だけを増していました。つまり、軍の士気を地面を這い寄るほどです。そして、袁紹軍は、この連合軍にで一番多い数の兵を持った軍隊です」
「…それが?」
「アイツ、一刀の挑発に乗った袁紹は今からでも『全軍』を引いて私たちを前線にあげようとするはずです。そしたら、前線には大きな穴が空くことになります」
「…!!」
まさか…!
「桂花、一刀に斥候は付けたはずよね。何か分かったの?まさか……」
「はい、報告がありました。アイツは『内通』しています。そして、士気がガタ落ちしている袁紹軍の『後退』の動きを見た瞬間、虎牢関は関の門を開くでしょう」
神速の張遼。
飛将軍呂布。
この二人の将の名は、実に関の中で守ってばかりで居るには不相応な名だ。
この名の本当の意味が分かるのは……
彼女らが地面に立つ時。
「この連合軍、噛ませ犬になるのは劉備軍でも、私たちでも、董卓でもありません。本当の噛ませ犬は……」
<pf>
「「袁紹だ(です)」」