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十九話(後編)

韓国の5月8日は、親の日です。

日本では確かお父さんの日とお母さんの日が別々だったと思います。

韓国では合わせてます。

韓国ではひな祭りもなく、子供の日も男女問いません。

楽なのか、適当なのか判りません。


曹操SIDE


軍議に現れた一刀は、


それはもう山から水が流れるようにすんなりと自軍の意見を述べていった。

その意見に全くの突く隙もなく、異議を唱えることもなかった。

最も、主な内容は自分たちは連合軍にてこれ以上の功を望まない、という意味合いだったため、既に弱小勢力としては分に余るほどの功をあげたことを警戒している他の諸侯たちにとっては、それに異議を唱える理由もなかった。


しかし、一刀のこんな姿を見たことがない。

皮肉もなく、相手の気に障る言葉もなく話を進める彼には、少し違和感を覚えた。


後の話しだけど、桂花から一度だけ一刀がこんな風に接したことがあると言われて、私は思い出した。

それは確か私が彼と一緒にお風呂に入ってからのことだったと思う。

それからしばらく、彼は本当にある意味気持ち悪い程に清々しい人になっていた。

普段とはまるで人間になってるかの様子。だけどその才には相変わらず天の才だった。


「異議がなければ、劉備軍は後衛に下がって、虎牢関の戦いの先鋒をどの軍が出るかを決めようと思います」


麗羽の二枚看板とも呼ばれる武将の一人、顔良が会議を進める。

あの娘も居なければ本当麗羽のせいで会議が進められなくなるわ。


虎牢関、虎牢関の主将はかの飛将軍呂布。恐らく撤退した張遼もそこに居るでしょうね。

武勇はあるけど誇りが高すぎて劉備軍に打ち破れた華雄はともかく、神速の張遼と飛将軍呂布、この二人は是非とも私のものにしたい。

と思いながら隣を見ると、


「……」


桂花が無言で全力で否定してるわ。

確かに危険要素が多すぎるわね。

いきなり先鋒に立つことは被害ばかり受けて得する可能性は少ないもの。

誰か功を焦って出てくれないかしら。


「決める必要もありませんわ。虎牢関の攻め、わたくし、大将であるこのわ、た、く、し、が引き受けますわ」


…功を焦ったというか、ただ目立ちたい奴が自爆してくれたわ。


「異議はありませんわね?」

「それが妥当だな。四世三公を出した名家袁家の当主である袁本初さまの率いる軍が虎牢関を攻めるのなら、幾ら虎牢関なれどあっという間に落ちるだろう」

「あら、一刀さん、やはり良く分かっていらっしゃるではありませんか」


一刀、何故あそこで袁紹を褒めちぎったの?

これ以上の目立つ発言はあなたの軍においてもいい事ではないというのは以前劉備が証明したはずよ?


「ちょっと待つのじゃ!」


<pf>


孫権SIDE


その時、袁術が話を割って入った。


「麗羽姉さまだけいいところ持って行かれるわけには行かないのじゃ。妾だって袁家当主なのじゃ」

「ちょっ、美羽さま?」


本来四世三公を出したと言われる名門袁家は二つの派閥がある。

一つは河北南皮を中心とした一家、一つは汝南を中心とする一家。

河北の袁家の長は袁紹。汝南袁氏の長は袁術となっている。

従姉妹で、袁紹の方が年は上だけど、元を言うと嫡子の子は袁術。

必然的にこの二人を中心とした派閥間の競い合いがある。


「私たちの軍も先鋒に出るのじゃ」

「あら、いいですわよ。ただし、せいぜい邪魔にならない程度にしてください」

「それはこっちの台詞なのじゃ」


軍師である張勲が止める間もなく、袁術軍の出陣を決定してしまった袁術。

元ならこっちから袁術軍が被害を受けるように仕組むはずだったのが、自分で自爆してくれた。


……いや、自爆したわけではないか。


「冥琳」

「ええ」


私たちの目は劉備軍の彼に向いていた。


北郷一刀、天の御使い。

彼はわざとあそこで袁紹を立てる言葉を言って袁術を挑発した。


でもどうして?彼の軍にとって何の得にもならないはずよ。


・・・


・・



「北郷殿、少し待ってくれないか」


軍議が終わった後、私は軍議場を出ていく劉備軍の彼らを引き止めた。


「仲謀殿、お初お目にかかる」


頭を下げる彼は、まるで私を初めて見るかのような仕草だった。

そう言えば、あの時彼は個人的に来たと言っていた。私だって、あの時のことを冥琳や姉さまに話しては居ないし、ここは一応、あの時のことはなかったことにして接した方が良さそうね。


「先ほどのこと、礼を言ってもらおう」

「礼?何のことだ?」

「袁術のことだ、雲長。詳しい話は後でする。周りの目があるからな」

「やはり、さっきのは態と言ったのだな」


冥琳が彼を警戒しつつ言った。


「同盟を組んでいる中だ。少しの手助けをしたまで。貸しと思うこともない些細な切っ掛けを作っただけだ」


切っ掛け。

そう、考えてみると少し話しただけ。

それも対応した本人に直接言ったわけでもない。そんな何の考えもなく口にした言葉だと思ってもおかしくない言葉。

だけど、そこには確かにこういう結果を引きずり出すという意図があった。


「ただ、袁術軍が先鋒に出るということは、必然的に孫策軍も先鋒に出される可能性も高まる。そこに関しては俺たちは助けることが出来ない」

「…そこは、我々がなんとかするべきだろう」

「…では、俺たちはこの辺で失礼する」

「ちょっと待って」


一つだけ、聞きたいことがあった。

何故私を…


「申し訳ないが、こっちはご主人のことが心配な人が多い。私的な質問はそのうち解る時が来る」

「え?」

「それじゃ……」


そして、彼は他の二人を連れ帰っていった。



<pf>



北郷SIDE


「あれで良かったのか?他軍の将に失礼ではないのか」


戻る脚を急ぎながら雲長が言った。

口ではそう言いながらも、口調からして心では向こうのことがあまり好きではないことが分かった。


「そういう心配はない。どっちにしろ向こうは俺に関しての情報がない。不安定な要素に反応して行動することは危険なことだ。周公瑾がそんなことをするとは思えない」

「逆に言えば、これから向こうでお前を監視するということだな」

「そのために凪が居る。向こうにできるだけ俺を隠した方が良い。俺という不安定要素があることで、孫策軍が玄徳をただ甘く見ないようにすることができるだろう」


玄徳はその性格上他の軍に甘く見られる可能性が多い。

君主の足元が見えていれば、軍全体が見下される。

玄徳には悪いが、全て晒し出すと言って必ず相手の信用を得られるわけではない。

ある程度は爪を隠しておかないとな。


「それよりも早く戻ろう。玄徳のことが心配だ」

「…お前いつまでそんな風にしているつもりだ?」

「少なくとも一週間が続く。延長するかはその時決める」

「…慣れそうにないな」


思い切った策は雲長にはどうも悪評だ。

まあ、別に俺自身もそれ程続けたい訳ではない。


……


・・・


・・



<pf>


曹操SIDE


軍議が終わった後、直ぐ様一刀の後を追うつもりだったのだけど、行く途中で彼らが袁術の客将、孫策軍の者を話している様子を見かけた。

割って入ろうとも思ったけど、どうせ道中で話す内容じゃなかった。

ダダるも聞かず春蘭を先に陣に返すと、私は先に彼の陣に行って待っているつもりで桂花と一緒に劉備軍の陣地へと向かった。


…のだけれど…


「あはっ、鈴々ちゃん、こっちこっちー!」

「にゃはーっ!」


……劉備が自分の陣内で妹に見える娘(たしか張飛だった)と遊んでいた。



「桂花、私は幻覚を見ているのかしら」

「そうでしたら、恐らく私も同じ幻覚を見ていることになるでしょう」

「そう。あなたも私も疲れてるのね」

「そのようです」

「……」

「……」



頭が痛くなってきたわ。


「なーにやってるのよー!!!」

「ひゃーっ!!」


これは突っ込まざるをえなかった。


「あ、あなたは確か、曹操さん?どうしてここに」

「それはこっちの台詞よ。あなた軍議で重傷負って倒れてることになったのに、何元気よく遊びまわってるのよ」

「え?……ああ!」

「にゃにゃっ!忘れてたのだ!」


劉備も、張飛も驚いた顔で互いの顔を見た。


「どうしよう。バレたら一刀さんに怒られちゃうかな」

「今は大丈夫なのだ。あの二人にしか見られてないのだ」

「でもあの人曹操さんだよ?他の軍の君主だよ」

「他の軍の人だから大丈夫なのだ。雛里が忙しい間に戻ってると大丈夫なのだ」


なんかなかったことにしようとしているらしいけど…


「北郷、私の目がおかしくなっているのだろうか」

「君主を見る目のことなら、あながち間違いでもない」

「……そうか」

「後、趙子龍のことは任せた」

「ああ、死なない程に殴ってやる」

「はわわ…二人とも目が恐いです」


後ろからそんな会話が聞こえてくるのだけれど、

私と桂花はもうSAN値が減ったというか(それが何かは知らないけど)、とにかく凄く疲れたから、一刀に会うのはまた今度にしておこうかなぁと思ったらそうも行かなさそうな雰囲気になってるわ。


「あら、一刀、遅かったわね」


心ではそう思うものの、なんとか威勢だけはいつものように振る舞うつもりで後ろを向いて一刀と対面した。


「…とうとう来たか、孟徳。……孔明が二人を俺に部屋に案内してくれるだろうから、そこに行っててくれ。俺は先にやっておきたいことがあるので、済まないが待っていてもらおう」

「はわわ、私がですか?……こちらです」

「そう…分かったわ。行きましょう、桂花」

「はい、華琳さま」


桂花は一度一刀の顔を見て孔明の後を追った。


私は関羽と一緒にその場に座って小動物のように震えている劉備に向かう一刀の背中を見送ってから、その後を追った。



<pf>



諸葛亮SIDE


はわわ…どうして私がこの二人を案内するはめに……


それよりも、桃香さまのあんな様子を見られたのはまずいですね。

下手したら、北郷さんが立てた作戦が裏に出るかもしれません。


「ここです」

「!華琳さま、桂花さん!」


お二人さんを案内した北郷さんの部屋には、楽進さんが待機していました。

二人を見た楽進さんは背をその場で氷のように固まりました。


「凪…あんたね……」

「っ……」

「いいわ、桂花。彼女が決めたことよ。それに、そういう話は一刀が帰ってきてからにしましょう」

「…はい」


何故北郷さんは、楽進さんが居るこの部屋に先に二人を来させたのでしょうか。

どんな形であって、引き抜いて来たということには間違いないわけですし、連合軍が終わった後ならまだしも、戦いの真っ最中に引き抜いてきたのですから、向こうからすると迷惑極まりないです。

私はぶっちゃけ、この二人が来た理由も楽進さんが原因だと思ってたのですが…そういうわけでもないみたいです。


となると、やっぱり狙いは…北郷さんでしょうか。

北郷さんを帰らせるために?


何日前までだと私も愛紗さんも、多分それに反対しなかったかもしれませんけど、今は状況が違います。

北郷さんと仲良く出来る糸口が出来た以上、ここで北郷さんを奪われては、我が軍において大きな損です。


「この軍はお客にお茶も入れてこないのかしらね」

「は、はわわっ、すみません。直ぐに持ってきます」

「私が行きます」


つい自分の考えに夢中だった間にそう言われた私は、急いで外に出ようとしたのですけど、私よりもこの場に居るのが息苦しかった人が先に出て行きました。

って、私一人でこの二人と対面してなければ行けないのですか!?


「諸葛孔明、確か劉備軍の軍師だったわね」

「は、はい」


曹操さんが一人になった私に声をかけました。

北郷さん早く来てください。


「単刀直入に聞くけど、北郷一刀は、今この軍においてどんな存在なのかしら」

「……」


私は考えました。

でも、鑑みると、私はこの質問に答える程、北郷さんについて詳しくありません。

北郷さんに会って数ヶ月が経ちますけど、私は北郷さんについて知らないことが多いです。

それは北郷さんが自分自身を晒し出さなかったせいでもあって、私がそれを知りたがらなかったせいもあります。


今曹操さんのその質問に答えられる人は、この軍には桃香さまか、それとも雛里ちゃんぐらいしか居ないでしょう。


だけど、


そもそも何故私がこの質問と対面しなければいけないかを考えると、それは北郷さんが原因です。

つまり北郷さんは、桃香さまでも、雛里ちゃんでもなく、私にこの質問の答えをして欲しかったのです。


なら私は……


「この軍には、桃香さま、劉備さまによって将の皆が守る第一の原則があります」


この軍の誰もが言えるただ一言、それだけで十分です。


「桃香さまの夢、その理想を向かって歩いていく皆は、『仲間』です。君主と部下も、上も下もなく、同じ道を歩いていく仲間です」

「……」

「個人的な目で見ると、北郷さんはとても有能な人ですし、そして同時にとても危険な人物です。その危険さは、例えば今から北郷さんがその気にさえなれば、この軍を滅ぼして、残った者を全て自分のものに出来るぐらいです。でも、そういう危険さを知っていても、同じ理想を抱いて桃香さまを支える者として、北郷さんは私たちの仲間です。故に、例え今曹操さんがこの軍の誰かを求めるとしても、易々と行かせるつもりはありません。」


それが誰であろうと、例え北郷さんであろうとも、あんな危険な人であろうとも、手放してしまうほど、この軍は軟じゃありません。







「随分と重い話をしているようだな」


そう言ったのは、私の後ろでお茶とお菓子を持ってきた北郷さんでした。


「北郷さん」

「随分遅かったわね。凪が出て行ったわよ」

「『凪』のことなら気にするな。それよりも、孔明、そこに座れ」

「はわわ、私もですか?」


私、まだここに居なくちゃいけないのでしゅか?



<pf>



桂花SIDE


「『凪』のことなら気にするな。それよりも、孔明、そこに座れ」


それを聞いた時、私は驚かざるを得なかった。

アイツは、私たちの所に居た頃でも、一度も私たちのことを真名で呼んでくれたことがなかった。

なのに、今『凪』と平然と呼んだ。


隣に座ってる華琳さまには、これには驚いた様子だったけど、直ぐにいつもの顔に戻ってらしゃった。


「へー、凪のことを真名で呼ぶのね」

「言ったはずだ。俺は俺が信用する人しか真名で呼ばない」


つまり、今の凪は信用できる者になったと…

理屈は分かるわ。自分のために親友と立場まで捨てて来てくれたもの。

そこまでしたのに信用出来ないとしたら、この世に信じられる人なんて居ないわ。


「まあ、お茶でも飲んで話そう」


そもそも、こうして劉備軍の陣に突入したのも、軍議でアイツがあの姿になったのを確認したからだった。

いつものアイツなら、会った所で中にまで入らせてもらえるはずもないし、その場で幾度が話を交わって終わりだったはず。

北郷がどういうつもりで『今の状態』になったのかは判らないけど、ゆっくりと話がしたかった私たちにとっては好都合だったわ。




しばらく話もなく、ただお茶を啜る時間が続いた。

たまにアイツが自分が持ってきた菓子を手を出すぐらいで、それ以外の動きもなかった。

なのに、そこで信じられないことが起きた。


「はむっ」

「「!!」」


北郷の隣でとても息苦しくしていた諸葛孔明が、アイツのお菓子に手を出したのだった。


「……」


しかも何も言わない!?


「…ありえないわ」


華琳さまがぼそっとそう言ったけど、

そう、幾らあの綺麗な状態でも、あいつが自分のお菓子を人に譲ることなんてありえないわ。

華琳さまでさえアイツが食べてるお菓子には手を出せたことがないのに……。


「で、どんな用件で来たんだ、孟徳」


そして、この時期にアイツが口を開けた。

アイツ絶対態と見せつけるためにやったのよ。


「どういう用件が分かっているでしょ、一刀」

「はて、どういう用件だろうか。言っておくが、凪は返さない。俺が帰らせようとした所で、帰ろうとするはずもない」

「なら、あなたが戻ると言ったらどうなるかしら」

「面白い話だな。だが今はそれよりも興味深いことがある」


勘違いだっただろうか。

華琳さまと話しあうアイツの顔が、少し悲しそうに見えた。


「あの手紙が本当に私が書いたと思ってるの?」

「その手紙がなければ俺が戻ると思っているのか」

「少なくともあなたの我慢(注:悪い意味で)はへし折ることができるわね」

「……」



沈黙していたアイツは微笑みながら言った。



「………俺の命を狙う輩が居る」

「私の軍に?」

「孟徳の軍に限らず…俺はこの世界全てを敵に回している」

「…それで?」

「俺が死ぬことを望む連中がどういった奴らなのか分かるまで、帰るつもりはない」


つまり、帰るつもりはあるけど、危険だから出来ないと言いたいわけ?


「ばっかじゃないの?」

「……」

「帰りたければ帰って来ればいいじゃない。どこに居ても危険なのは同じだとしたら、こっちに戻って来なさいよ。こんな所に居るよりも、あなたにとってそれがいいはずだわ」


孔明が居るにも関わらず、そう言ってしまった私は驚きの顔で私を見る華琳さまと北郷に対面しなければいけなかった。


「……嬉しいことを言ってくれる」

「ほ、北郷さん?」

「なら荀彧、お前に聞こう」

「何よ」

「お前らに俺を守る程の力があるか」

「それはもち……!」


もちろんあると言おうとした途端、ひっかかるものがあった。


手紙……。


「公の場で俺に届いた孟徳の絶縁状、そう、それが孟徳が書いたものでないとしよう。なら今頃お前たちも、その原因を探ろうとしたと思う。それで、何か手がかりはあったか?」

「……それは…」


なかった。全く、手がかりなんてなかった。

その手紙を送った者も、一緒に付いて行った使者も、誰一人姿が見つからず、手紙からも、それが華琳さまが書いたものではないという証拠は見つけることが出来なかった。


「つまり、私たちがあなたを守ってあげられると思えないから、興味があってもこっちに来るつもりはない…と」

「……半分はあってる」

「半分?」

「言ったはずだ。俺は世界全部を敵に回している。俺が孟徳と一緒に居ても、今ここに居てもその危険は常に僕と共にある。にも関わらず、俺がここに居るのは……」

「…つまり、」


ここが私たちの居るより興味がある、と……





結局、それね。

結局、あなたを動かすにはそれしかないというわけ。


「私はこれからもっともっと強くなるわ。あなたは、そんなことより、ここであんな君主の下に居る方が興味深いと、そう言いたいの?」

「……彼女は俺に一度だけ真名で呼ばれたことがある」

「!!」

「それが俺の答えだ」


華琳さまは口を閉じた。


あ、駄目だ。これ以上コイツを説得するものが、私たちにはない。

これ以上…何かコイツの興味を惹くものがない限り、このままコイツを手放すしかない。



……諦めない。



「あんた、私を賭けをしなさい」

「……?」

「桂花」


ここであんたを放すわけにはいかない。


「私が勝ったら、何も言わずに凪を連れて戻って来なさい」

「…興味深いな、荀彧。俺が勝ったら、どうする」

「その時は、私が凪のようにあんたの所に行くわ」

「!!!」


動揺した。

今明らかに動揺した。

どうする、北郷一刀。


あんたはもうこの手に乗らないという選択はないわ。


私の勝負に乗りなさい。




・・・


・・




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