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十話

拠点の間一刀がデレすぎというコメントを話を頂いたので、

今回は以前のように重い気味にいこうとし……


たらこれですよ。まったく;;

華琳SIDE


黄巾党の首魁、張角たちが居る本城を確認した私たちは、数日で準備を済ませて出立した。

こちらの軍は全部で二万、黄巾党本隊がある本城の総勢は、報告によると二十万。

が、その多い数に比べ、戦うことが出来る者の数は非常に少ないことが判明されたわ。


原因は簡単よ。

一つは私たちが以前攻め落とした砦に、黄巾党の兵糧の半分以上が備蓄されていたこと。

一番の兵糧庫を焼かれたせいで、黄巾党はろくに食べることも出来ない状況で、あっちこっちで兵糧が尽きて後退が続いた。

そして、彼らが辿り着いた場所が、その本城だということになる。


もう一つの理由は、そんな風にあっちこっちから来た敗残兵たちの集まりでは、ちゃんとした指揮体系をつかむことができないこと。

数が多くなるともちろん、軍の指揮に置いて誰が上に立って誰がそれに従う立場かを確かにしなければならない。

でなければ、誰もが自分のしたいように動き、幾ら多くの兵があろうがただの烏合の衆でしかなくなる。

私の場合、黄巾党じゃなくてもそういうことを常にやっている馬鹿を一人知っているけれど…まぁ、彼のことは今どうでもいいわね。


とにかく、その2つの理由からして、今黄巾党の本城は言葉通り『的』になっていたわ。

一つ問題があるとしたら、誰もその的がどこにあるのか、未だに知っている者が居なかったこと。

今まで神出鬼没に出ては消えていった黄巾党の動きを見計ろうとした軍がどこにもなかったのよ。誰もが目の前の賊の倒すにも精一杯だった。


だけど、私は違った。

私の部下たちは違った。

他の軍たちが右往左往している間、私たちは黄巾党の本城を探し出し、そして誰よりも先にその場所をたやすく攻める時期を得たのよ。


今この時、天はまさにこの曹孟徳の味方をしていたわ。

これから張角を討てば、我の名を天下に轟かせ、我が覇道の第一歩を踏み入れることが出来る。



そうでしょう、一刀?



<pf>



一刀SIDE


「既に部隊の一部を黄巾党の敗残兵に装わせて中に忍ばせました。日が頂点に上る時期に城の要所ごとに火を付けるように言っておきました。もうすぐ、城で火があがると、指揮がちゃん取れない黄巾党は慌てるでしょう。そんな状況で私は、東の城門だけ残して3つの門から攻めていきます」


荀彧が黄巾党の本城を攻めることに置いて、今回の戦略を説明していた。

将たちは全部参加しろということだったので仕方なく来たのだが(というよりは典韋と楽進に引っ張られてきたのだが)、結局思った作戦から外れるようなことはなかった。

興味のない話だ。


「桂花、あそこに置いてある部隊は何だ?」


妙才が地図の上で、城がから少し離れたところにぽつんと置いてある部隊を現す駒を差しながら言った。


「あれは……北郷の別働隊よ」

「別働隊だと?何であんなところに居るのだ?城から半里は離れているぞ」

「本人に聞きなさいよ」


荀彧が俺に話を振ってきたので、妙才と元譲、そして他の者たちの目もこっちに向く。


「……その場所、つまり本城の西門から半里ぐらい離れた所に、城と繋がる秘密通路らしきものを見つけた」

「なっ!」

「何故それを今まで言わなかったの?」


孟徳がこっちに険しい顔で聞く。


「荀彧には既に話してあったが、別に大した情報じゃなかったのでな」

「大した情報じゃないとかそういう問題じゃないでしょう。じゃあ、あなたはあそこから張角たちが逃げる可能性があるって話?」

「……『必ず』来るだろう」


中の黄巾党たちはともかく、張角たちは既にこの乱で自分たちの負けを自覚しているだろう。攻められれば、ただちにその通路を使って脱出しようとするだろう。


「そこにはあなたと…また誰が行くの?」

「愚問だ。例え烏合の衆となった黄巾党とは言え、数を考えれば将兵を全部城攻めに使わなければならない。俺一人で十分だ」

「……凪、一刀と一緒に行きなさい。あなたの部隊で何人か連れて」

「はっ!」


……何のつもりだ、孟徳。


「孟徳、この戦いは孟徳の今後のために重要な一戦だ。たやすいとは言え、一つでも状況に歪みがあれば何が起こるが分からない」

「だから、この戦に興味がないあなただけそこに行って張角たちを捕獲するですって?」

「そうだ」

「許可できないわ」

「お前に許可を取られる立場ではない」

「そういう立場よ、あなたは。自分の姿を見てからものを言いなさい」

「………」


ふん、


まぁ、孟徳にとっては、こっちの動きが分からなくては困るだろう。

何か妙な動きがあれば直ぐに制止しなければならないからな。

警戒されて当たり前か…


何だかんだ言って、俺がこの軍に置いて、いや、どの人と混ざっているとしても信用が欠けてる人間だということは違いない話だ。


「まぁ、良いだろう。そんなに心配なら監視役を付けるのはお前の自由だ」


その時、一瞬だけ場の空気が重くなった。

……そろそろ面倒だ。


「……ちょっと、あなた何勘違いしてるのよ」

「俺は帰る。これ以上興味のない話に付き合うのはごめんだ」

「ちょっと待ちなさい。一刀……!」


孟徳がその次なんと言ったが、天幕を出る俺の耳には入って来なかった。


<pf>


華琳SIDE


「ちょっと待ちなさい、一刀!そういう意味じゃなくて…!」


私の話を全部聞かずに、一刀はそのまま天幕を出て行った。


「アイツ!華琳さまの言葉も聞かずに…華琳さま、私が捕まえてきます!」

「……いいえ、放っておきなさい」


たまに変なところで辺な勘違いするのよね、一刀は。


「華琳さま、アイツ、もしかして今華琳さまが凪を付けるのを、『自分を監視させるため』だと思ってませんでした?」

「え?」

「監視役?どういうことですか、華琳さま?」


桂花の話を聞いた流琉と、私に一刀の『護衛』を任された凪がきょとんとした顔になる。


「今一刀は、私が自分に凪を付けるように命じたのを、私が彼の行動を制限させたと思ってるのよ。自分を信用しないって」

「信用しないって…でも兄様は今『怪我』をしているのですよ?護衛を付けずに行かせるという方がおかしいです」

「本人はそう思ってないのがお気の毒だけどね…」


本当に、他の仕事の時は的確なのに、人が自分をどう思っているのかに関しては完全に的を外す。

興味がないとかの話で済ませる以前に、とんだ勘違いしてくるから困るのよ。


「一刀様は、私のことを信用してくださらないのでしょうか」


そう、そもそも一刀は人を信用するという概念がないのかもしれないわ。

彼が信用するのは、その者の才能やら、己の才を以て考えた未来予想図のみ。

それ以外には、例え自分の直属部下の凪だとしても、彼女という個人を信じるということはない。

逆に、自分が人に信用されてるとも考えてないようだ。


なんだかんだ言って、一刀とも仲良くなってきたと思ったら、まだまだ一刀を完全に理解するには道が遠そうよ。


「彼のことは気にしないで、桂花、話を続けて」

「………あ、はい」


少しぼうっとしていた桂花だったけど、直ぐに会議は続いた。



<pf>


一刀SIDE




「………」

「…一刀様」


例の隠された通路の出口まで、数人の兵を連れて、後文謙も連れて来た俺は無言のまま遠くの城で煙が上がる姿を見ていた。


「一刀様はどう思っているかわかりませんが、華琳さまは一刀様のことを心配なさって私をお供いたしたのです」

「ああ、そうだろう、文謙。わかっている」

「でしたら……」

「文謙、孟徳は覇王を目指している人間だ」


有能な才を持った人間が多く集まっていることは必ず良いこととは言えない。

下の者が有能すぎればその中には君主の座を狙う者も現れる。

本人がそうでなくても、周りの人たちによってそう言った裏切りによって軍や国を乗っ取られるということは、不可能な話ではない。


最もこの世は乱世、例えそれが今は自分の部下としてある者だとしても、その能力を見ぬいているとすれば、自分ほどの才、野望を持った者を警戒することは決して心が狭いとかではない。


「孟徳が行く道は結局独りで行かなければ成さない道。孟徳が目指す道が覇道な限り、孟徳が俺を信用するということはない」

「そんなはずは…!」

「最も、そう考えた方が正しい。俺はいつか君たちを裏切る」

「…はい?」


俺は常に事に興味本位で近づく

その人がどれほど興味深い人生を生きるか、その理想がどれほど興味深いか。

それを見て俺は孟徳を助けてきた。


だから逆に、それがなくなると俺はここを去ることを躊躇しない。

ぶっちゃけると、『飽きたら捨てる』。

興味のないことに気を使うほど俺は普通の社会生活を楽しみたい人間ではない。


「何故そのようなことを仰るのですか?」

「……当時に君や他の者たちが慌てないようにするためだ。特に文謙、君に俺を無条件で信用している。そのうち俺がここを去ることになっても俺はお前を連れていくつもりはない。その時は文謙、お前と俺は敵だ」

「!」

「…分かったら必要以上に俺に近づこうとするな。そうする必要もないし、危険でもある」

「あなた様は私の命の恩人です!そんな方を信じることの何が悪いというのですか!」


…何を怒っているんだ。


…………


ガタッ


「…!」

「あっ」


その時、地面がガタッと動いたと思ったら、地面だと思った場所に穴が空いて、その中から手が上がってきた。


「っ……!!」


そこから出てきていた眼鏡をかけた女は俺たちを見た途端固まった。


「諦めろ、もう逃げ場はない」

「どうして…ここを…」

「人和、何で行かないの?ちぃはもう早く外出たいわよ」

「人和ちゃん、まだー?」

「……ッ」


<pf>



人和SIDE


もう……ここでお終いなの?

まさか、この逃げ道を気付かれていたなんて……


「取り敢えず出てこい。中の姉たちが文句が多そうだからな」

「っ……!」


このまま戻る?

いや、そうした所で既に城は陥落されたはず。もう、逃げることはできない。

もう諦めるしかない……


「あっ」


そう思ったら急に足に力が抜けた。

下の隠れ道は、出口に出る前に直角に曲って上に上がるようになっていて、ここで足を挫けると下に落ちる。


「っと」

「あっ」


でも、その時、私に話をしていた、少し不気味な男が左手を伸ばして(右手は怪我をしたように包帯を太く巻いていた)私の手を掴んだ。


「…無理もない、2kmも這って来たのだから、疲れが溜まっただろう」

「あ、きゃっ」


その人にそのまま引っ張られて私は穴かが上がって来ました。


「文謙、下の二人も上がってくるのを手伝ってあげてくれ。疲れてるだろうから、持ってきた兵の保存食も分けてあげろ」

「はい」

「…?」


何なの、この男。

私たちを捕まえるために待っていたのは間違いなさそうなのに、にしては待遇が良い。

どの道でも、官軍なら私たちを殺さなければならないわけなのに、どうしてこんなに……?


「君が張角か?」

「え?」

「……いや、違うか。どっちかというと……そうか、お前が末の張梁か」

「…どうしてそれを……」

「見た目が末だからな。今上がってきた小さいのが張宝で、残りが張角だろう。指名手配の書に描かれた顔のような化物じゃなければ良いがな…あ、君は自分の姉のモンタージュを見たことがあるか?軍では張角の顔をを骨が6つも付いた化物のように描いて手配していたぞ」

「……どうして、私にそんなことを言うのですか?私たちを捕まえて殺せばそれに済む話ではないのですか?」

「殺す…か。まさか、孟徳がそうするとは思えん。せいぜい……」

「へ?」


どういうこと?

この男、一体何を考えてるのかまったく分からないわ。


「ちょっと、離しなさいよ!」

「大人しくしてくれたら何もしません!」

「冗談じゃいわよ!ちいたちは何もしてないのよ!周りの奴らが勝手に暴れだしただけなのに、どうして私たちまで殺されるのよ」

「えー、私たち殺されちゃうの!?」

「……随分と暢気の張角だな。アレは。ふふ、興味深い」

「………」


この男…もしかしたら、


「ちょっと、そこのあんた!人和に手出したら許さないわよ!」


ちぃ姉さんが捕まってる状態でもこっちを見てそう言った。


「…姉に心配されてるようだから、向こうに行け」

「あ、ちょっと待って」

「…何だ?」

「………姉さんたちのこと、逃がしてもらえませんか?」


私は他の兵士たちが姉さんたちと一緒に居る間、その男にだけ聞こえるように話しました。


「…ここで君たちを逃しては、またこのような乱が起きるだろう。それを何の益もなく見逃せと?」

「もうこんなことはしません。最も、私たちはただの芸人です。周りの人たちが暴れただけで…後、これのせいです」


そう言いながら、私が彼に出したのは『太平要術書』。

天和姉さんは置いていこうって言ったけど、どの道使いどころがありそうだったから持ってきた。


「……妖の力を持った本か」

「はい、これの力で、人たちを集めたのです。これがあったら、あなた達でも、こんな風に人を集めることが出来ます。これをあなたにあげます。だから、私たち姉妹のことは逃がしてください」

「…その本も、君たちを捕まえたところでこっちのものです。何故それが協商の道具となれる」

「何故なら……」


……


「……私がここで一言言ったら、この本の内容をすべて消せるからです」


これはウソ。

でも、もしこれが欲しい人なら、この条件を飲まないわけにはいかないはず。


「私たちを逃してください。私たち三人を殺すことはたやすいですが、代わりに、この本の力を利用することはできないでしょう」

「………確かに、太平要術所の内容、興味深い………良いだろう」

「!」


良し!


<pf>





凪SIDE


「離しなさいよ!」

「神妙にしろ。貴様たちが今までやってきたことを分からないのか」

「知らないわよ、そんなの!ちぃたちは何もしてないもん!」


とにかく、これで張角らを全員捕まえた。

これで、この乱も終わってまた世は平和になるだろう。

…うん?


「……興味深いな」


ふと向こうで張の三姉妹の一人と一刀様が話をしているのが聞こえた。

一刀様?


………


『俺はいつか君たちを裏切る』


いや、一刀様がまさかそんな…


「文謙」

「は、はい」

「……こいつらは張三姉妹ではない。影武者だ」

「…え?」


どういうことですか?


「な、何を言って……」

「何故この人たちが影武者と…」

「…俺が個人的に調べさせた情報と外見が違う。おそらく、本物はどこか他の所で逃げたのだろう。隠れ道がここだけだったとは限らない」

「なっ!じゃあ、本当の張角たちは……」


もう他の所に逃げた!?


「……直ぐにこの周り調べて…」

「まぁ、その必要はない。コレがあれば、張角なんて居てもなくても同じだ」


そうおっしゃる一刀様はある本を持っていました。


「それは…?」

「太平要術書。孟徳が欲しがっていた本だ」

「それは…確か張角たちが持っているという妖の本…何故それを影武者たちが…」

「彼女らの話では、張角たちは城の中で既に死んだそうだ。そして、影武者であった自分たちがこの本を持って、もう一度黄巾党を起こすつもりだったらしいが……もうこっちのものだ」

「それは本当なのですか?」

「さあ、内容はまだ見てないからなんとも言えんが……これをもらう代わりに、この三人を逃がすという条件付きだった」

「なっ!」


この三人を逃がす!?


「そんなこと出来るはずがありません!」

「何故だ?」

「この三人が本物である可能性もありますし、それに影武者だってからと言って、ここで逃してもいいというわけではありません!」

「それは確かだ、文謙。だが、たかが影武者三人を連れていくより、この本をもっていった方が、孟徳にもお得だ」

「…どういうことですか?」

「孟徳は以前からこの本を欲しがっていた。これで何をしようとするかは、俺も詳しくは想像しかねるが、影武者の首よりも、この本の内容が孟徳により興味深いものであることは確かだ。しかもこの本にはある仕掛けがあって、この者たちがある呪文を言えば内容が消えるという。だから、俺はこの三人を逃して、この本を持って帰る方を選ぶとした」

「しかし……!」

「………」


一刀様はもう心決めたようだ。

もし、私がここで一刀様に反発したり、さっき一刀様が言った言葉に肯定しているのと同じになる。

一刀様は我々の味方だ。今まで一刀様が、我軍に害になるようなことをなさったことは、一度もなかった。

そんな一刀様がなさったこの決断。私はこれに従うべきか、否か。


………一刀様。


「……什長、二人を解放させろ」

「はっ!」


後ろに居た張角たち(の影武者)を解放すると、二人はもう一人の姉妹が居るところに行った。


「れんほー」

「れんほーちゃん。お姉ちゃんこわかったよ」

「二人とも泣かないの……」

「ここからは自由に行け。ここからは俺とは関係ない」

「……ありがとうございます。姉さんたち、行こう」

「うん」

「え、まだ歩くの?」


影武者の三人はそうやって私たちから離れていった。


「…これでよかったのですか、一刀様?」

「…………」

「一刀様?」

「…ソレでいい、『孟徳』」

「え?…一刀様?私は文謙……」

「帰るぞ、文謙」

「あ、はい」


一刀様……今のは…?



<pf>



華琳SIDE


「それで、その三人逃がして、これだけ持ってきたの?」

「そうだが、問題でも」

「問題しかないでしょ、この馬鹿!」


私が居る本陣に一刀が戻ってきて、そこであったことを隠しもせず話した。

今本陣に居るのは私と桂花、そして一刀のみ。

他の娘たちは皆まだ城で戦闘中。凪も一刀がそのまま真桜たちの手助けに向かわせた。


『張三姉妹』を逃して、代わりにこの本を持ってきた。


『太平要術書』。

これは確かに、私が探していた本だった。

この本の存在については以前から知っていた。

黄巾党の動きが活発化する前からこの本を探していたけど、ここに来て会うなんて……


「張角たちを逃がすってどういうつもりよ!下手したら、官軍がこれを言い訳に華琳さまを殺そうとするかもしれないわよ!」

「本物の張角が誰だか誰も知らない状況だ。どの首を持っていった所で変わりはしない。いや、そもそもあの城の中で、自ら燃えている屋敷に入って自害した、だから首は持ってこられなかったと言ったら済む話だ」

「っ……でもその分、華琳さまの功は小さくなるわ」

「重要なのは中央からの評価ではない。大陸の民たちを苦しめた黄巾党の首魁、張角を『曹孟徳』が討ち取った。その事実が広まることが大事だ。それさえあれば、漢朝廷で孟徳にどんな地位を与えるかは、些細なことに過ぎない」

「っ……ああ言えばこう言って…どの道あなたがやったことは間違ってるのよ。分かってるの?」

「そう思うなら処罰すれば良い。俺に自分が間違っていると意識させることが、お前に可能だと思うか?」

「ぐぬぬ……」


…流石一刀。桂花が幾ら罵ったところで、自分の考えをへし折ることがない。

だからあなたのことは『信用』できるのよ。


「もう良いわ、桂花」

「で、でも華琳さま!」

「……一刀が決めたことよ。桂花、あなたは私が見てない所だからって私に危害となることをするかしら」

「そんなはずは……」

「なら、一刀も同じよ。彼は私に害になるようなことはしない。そうでしょ?一刀」

「……………それをどう思うかは、孟徳、お前の自由だ」


……ふっ


「それで、あなたはコレ、読んだの?」




「……読んでない」




「あら、以外ね。あなたのことだからきっと『太平要術書か…興味深い』といいながら直ぐに読んでみただろうと思ったのに」

「俺は俺の智を持ってこの世を生きる、孟徳。妖術だの、魔法だの、そういうものには頼らない」

「……?」

「俺が行く道に、そういったもの、興味はあっても、必要ない。必要ない情報なんて、知っていて百害あって無益」

「…あなたは、私もこの本を読まない方がいいって言いたいの?」

「……お前が目指しているのは覇王だ。妖の術師ではない…最も




そんなものがなくても、俺がお前に天下の道を見せてやる」




………一刀。


「確かに、覇王となる私に、こんなものは要らないでしょうね。最初からこれを利用してどうにかするつもりではなかったわ。ただ、これの存在を知って、他の者の手に入るのを阻止したかっただけよ。私には要らない」

「……」

「だから、コレは、こうすることにしましょう」


私は私の近くにあった、夜陣を照らす時に使う火炉に太平妖術書を投げ入れた。


タタッ、と燃える音がしながら本は火の中で黒く燃えていった。


「……あなた、約束したのよ?私に天下を見せてやるって。頼りにしてるわよ、一刀」

「……………」


…一刀?

突然何でそんな険しい顔で……


「報告します!」


その時、報告の伝令が入ってきた。

私は黄巾党のお城に居る春蘭たちからの報告かと思った。


だけど……




「黄巾党の城の西側から一里ぐらい離れていた場所で待ち伏せしていた部隊が、逃亡中だった張角たちを捕まえ、今連行中です!」

「………」





一瞬、何を言っているのか分からなかった。


「…!!」


そして、それの意味に気付いた時に私は一刀の方を見た。


「………俺の仕事は終えた。興味を失せたから俺は帰るぞ」

「あっ」


待って、一刀!これは違う!私が命じたわけじゃ……


「ふん」

「!」


だけど、一刀の鼻笑いに、私は何も言い訳することも出来ず、彼が消えるまま見ていることしかできなくなった。


『お前が俺を信用するだと?こんな根回しをしておいてか?笑わせるな』


と言わんばかりのその顔に私は何を言えばいいのだろうか。


「………」

「…華琳さま?」


隣で桂花が話すのも聞こえなかった。

一体……誰が一刀の監視をさせた。


「桂花…アレはあなたが出した部隊?」

「…いいえ、私も初耳です」

「……彼らが捕まえたという張三姉妹、解放させなさい。馬もつけて」

「…!それはいけません!もし我々が張角たちを逃したことを誰かに知られたら……」

「私の命令が聞けないというの!」

「っ!」


一体誰が!

顔を見たらその場で頸をはねてやりたい。


貴様に…貴様に覇王の生き方がわかるの?!

覇道の道のりが分かるというの?

何故勝手な真似をして、それが私のためだと勘違いするの?

この怒り、この穢された思い、どこにぶつければいいのよ!


「……<<ブルブル>>」

「…華琳さま」

「…私の言うとおりにしなさい。私は少し休むから誰も入らせないように言っておきなさい」

「あ」


私は桂花を一人に置いて、私の天幕に向かった。



<pf>



一刀SIDE


「………」


君主にとって最も重要なのはなんだろうか。

己の武、智謀、あって損はしない。

でも、一番大事なのは下に居る者どもの心を掴めるカリスマ。それは何でもアリだ。覇気、徳、それとも血によった絆。

何でもいいけど、いつもそういった者たちが仕事をするかといえばそうはいかない。

部下が君主を裏切ることを心に決めれば、そういったものたちは不要で、重要なのはそういった裏切る素地がある者を追い払ったり、それとも常に監視すること。

少し違うが演義に置いて諸葛亮と魏延の関係が良い例になるだろう。

孔明は魏延がいつか裏切ることを知っていつつも、蜀の実情上、彼を排除することが出来なかった。

代わりに、生きてる時は彼を常に用心に監視し、自分が死んだ後までもしっかり準備していた。


五胡十六国時代と呼ばれる中国の大混乱時代及び、戦乱の時代には部下が君主を殺して軍や国を乗っ取るという類の例は枚挙に暇がない


その点に置いて、俺と孟徳はどうか?

名目上、俺は孟徳の下に居る。

俺自身は文謙がいった通り、孟徳に忠義を誓ってもなければ、興味次第でいつでも裏切ることも出来る。

それを孟徳が知らないわけがない。だから、孟徳が俺の突発的な行動を阻止するために根回しをしていたことは、俺から見ても正しい選択だし、俺も孟徳の立場であらばそうしただろう。


だけど、しかし


「………<<ギュー>>」


思わぬ痛みに胸の辺りを握り締める。

……既に知っている苦痛なんて、痛くもなんともないはずだったが………これは……


「……があぁっ!」


っ……きた……か……


「あぁ…………ぁっ……はぁ…っ」


『大局の示すまま、流れに従い逆らわぬようになされ。さもなければ、貴方の身はあなたの言動一つ一つで破滅されていくであろう』


試す必要があった。

それがどういったものか?

肉体的な苦痛?

精神的な破壊?


「はぁ……あがぁぁ…っ」


何にしろ、情報が足りなかった。

だから……俺は………


「ぐぁあぁあああああああああああああ!!!!」


……倒れ……ベッドで…倒れないと……怪しま……


……



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