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三十八話

一刀SIDE


謹慎から半年ぐらいが過ぎていた。


農繁期を終え、冬が訪れ、やがてその冬も終わりを迎え、屋敷の屋根についたつららが溶け始める頃。


そして、曹操軍と劉備軍が結んだ不可侵条約及び徐州中立条約は満期を迎え、孫策も打った刃を抜く時が来た。


天下に混沌の時が再び訪れようとしていた。


『今日も朝議で稟と桂花がいがみ合っていたわ。風が真ん中でうまく調定しているけど、あの二人はどうも仲良くなれそうにはないわね。皆時が経つにつれ焦っているのよ。無理もないでしょう。最初の考えでは孫策がもうちょっと早く動くだろうと思っていたのだから。このままだと本当に劉備と両面対策しなければならなくなるわ。稟は今にでも先に許昌を打つべきだと言っているけど、桂花はそれだと逆に孫策にいいことしてあげるだけで袁術の強い抵抗と劉備を同時に相手しなければなくなると決死の勢いで反対中よ。


冬場では桂花の意見を尊重してあげていたけど、冬もそろそろ終わって来ているわ。春になるとあなたが劉備と結んだ条約も終わる。そしたらもう時間切れよ。もしかしたら孫策もそれを狙って我慢しているのかもしれないわね。私たちが横取りできないようにするために。


それなら私もこっちから動くつもりよ。先に動けば許昌ではなく、あわよくば汝南までも頂くことが出来る。どれだけ早く豫州を落とせるかが鍵になるでしょうね。そこは稟の策に期待しているわ。長くの休憩で軍備もある程度整ったし、命からの援助のおかげで今年は飢えた民の数もほぼない。豫州は例によって餓死者が続出だったそうだから今が絶好の機でしょう。


またあなたの顔を見て話せる時が来るのも間近よ。いつでも動けるように準備なさい。


華琳より』


正直、俺も孫策がこれだけ我慢強いだろうとは思っていなかった。冬のさなかに敢行すると思いきやこっちの足元を見ていたらしい。それだけ袁術への復讐を邪魔されたくなかったのだろう。もしかすると今は桃香の対処よりも、孫策の方をどう捌くを悩んだ方が良いかもしれない。


「あの…」

「ん?ああ、忘れていたな」


手紙で忘れられていた少女が注目を求めたので俺は再び目の前の忍者娘を目にした。


「久しぶりだったな。連合軍の頃はお前にも世話になったし」

「うぅ…私、あの頃のことあまり思い出したくないんですけど…その後思ったら私、とても大変なことに助力していました」


連合軍の時を思い返してみると、あの時の策の大半は幼平の、働きという名の酷使があったからの出来事だった。昼夜を問わずに情報線を断ち切ってくれた彼女らのおかげで洛陽の放火という策が成ったのだった。


「一緒に結果物を見れたらよかったのだがな。あんな大きな火事はなかなか見られるものではないぞ。ましては都に火を付けておいてこうして生きていられること自体が…」

「あああああうああああ!!!!」


理由あ知らないが何故が自分が洛陽を燃やしたことに助力したことに深い罪悪感を感じているらしかった。俺としてはわけが判らなかったが。


「お前が数ヶ月前からここを含めて陳留のあっちこっちを偵察していた事は知っていた。袁術を攻める時を測るためのものだっただろう」

「どうしてそれを知っていながら今までずっと黙っていたのですか」

「謹慎中の身でな。出来ることがない」


まあ、しようと思えば華琳に伝えることは出来ただろうと思うが、教えた所で何が出来る。他国の諜報活動なんて常にあることだし、普段の防ぎで捕まらないものならこいつ程の腕前の奴を捕まえるなんて道程無理だった。


「それでも、俺の前に姿を表したという事は、もうここでの用は済んだという事。つまり孫策は攻める時を決めたというわけだ」

「……」

「…そしてお前は俺にその情報が渡せることになると判っていながらも俺の前に現れた。で、目的は何だ?」

「へれなさんという方をご存知ですね?」


チョイの妻の名前が出てきて、俺は眉をひそめた。嫌な予感がした。


「まあ、知ってるかと聞かれれば知っているな。それがどうした」

「へれなさんのお渡しします」

「……その代わりに俺に軍の豫州侵攻を止めろと」

「はい」


こういう話が来ないことを祈っていたのだがな…。


「孫策はそこまでして袁術への復讐を成し遂げたいらしいな」

「へれなさんはこちらに居る人の大事な人であると聞いています」

「そうだな。俺にとっても彼女は三番目ぐらいに重要な人物だ。そしてお前らは何をした。天女に祭りあげて宣伝のための偶像として使っただけではなく、使い捨ての政略的の道具として使おうとしている。俺が孫策に孫仲謀を人質にとっているから豫州を渡せと言って来たら孫策は受けると思うか。全軍持ち出して俺を殺しにかかるんじゃないのか。なら俺もちょっとイラッと来て戦場で孫策を暗殺するぐらいは出来ると思わないか」

「今のあなたにそんな力はないはずです」

「謹慎だから?お前の君主を殺すのに軍など要らん。やろうと思えば俺一人だけでもお前らの故郷を吹き飛ばすことだって出来る」


桃香の時はチョイを簡単に連れて来れたから忘れていたが、正直これが正しい使い道だった。もちろん桃香が俺と知り合いって理由もあったけど。


けど、だけどな。


つまり逆に言えば、俺もお前の知り合いではないんだ。


俺にとってお前も袁紹も一緒だ。くたばった所で俺は一切構わない。ぶっちゃけさっさとくたばってくれた方が助かるのに良くも人の所にそんな挑発飛ばしてくれるな。


「いや、逆にこうしよう。今から俺が五まで数える前にお前がこの場を去らなければ今この場で俺が江東を草一本残さず更地にしてやる」

「…はい?」


そう言った俺はスマートフォンを取り出していじりながら数字を数え始めた。


「一」

「ちょ、ちょっとまってください。いくらあなた様でもそんなことは」

「二」

「できるはずが…」

「三」


俺がいじり終わったスマートフォンを幼平に見せ付けるように卓に叩きつけるように置くと、その画面には『自爆装置稼働』という文字と共に下にはわかりやすく漢字で数字がカウントダウンされていく。


「孫策に伝えろ。迎えに行く時にヘレナ・チョイの身に傷一つでもあればお前だけでなく孫家の血族を根絶やしにしてやると…四!」

「…っ!」


幼平は真っ青な顔で逃げるように俺の部屋を去っていった。幼平が見えなくなった途端、俺はスマートフォンを取った。


「Cancel the self-destruction sequence」


すぐにタイムマシーンの自爆装置が作動を止めた。


らしくなくイラッと来てしまった。これも長く引き込んでいてストレスが溜まったせいだった。


「さて…」


待ちに待った時間が来るようだ。


<pf>


華琳SIDE


「考えなおしてください、華琳さま!」

「くどいわよ、稟!華琳さまは既にお決まりになったの」


朝議で論議がしまらず私の政務室にまで突撃して来た稟、そしてその稟を止めに来た桂花が政務室でうるさくしているのを私は流し聞きながら手紙に集中していた。


「これ以上待っていて何の意味があるというのですか。これ以上遅滞すれば結局周りが準備する時間を渡すだけ。それなら寧ろ攻め入って状況に変化を起こすべきです」

「これは我慢比べよ。焦って先に動いた方が損する戦いなの。こっちが先に動いた所で、劉備と孫策が同時に動けばそれこそ両軍の思うツボよ」


最初こそは可愛いものだったけど、ここまで来ると本当に消耗的な論争だった。止めようかなとも思ったけど、この二人が表側でこうして言い争っていれば、その分私が知らない所で起きる権謀術策は減る。そう思ってぐっと我慢して二人の話を聞いて…居る振りをしていた。


「…その結果がこれです!華琳さまのお許しさえ出ていれば許昌はもちろん、汝南も既に我軍の手に落ちていました」

「それは華琳さまが判断を誤ったといいたいわけ?」

「恐れ多くもそうとしか言い様がありませんね」

「なっ…!華琳さま、こいつのこの妄言を聞いてただで……華琳さま?」


ふと騒ぎが消えて顔を上げると稟と桂花両方とも私を見ていた。


「ん?何?話はもう終わったかしら」

「聞いていらっしゃらなかったのですか」

「聞いてたわ。あなたが言っていた言葉をまるっきり同じく言えるぐらい覚えてる。それこそ何度も同じことを繰り返して聞いたかのようにね……いや、ちょっと待ちなさい。本当に同じことをここ数十日聞いていたわね」


私が嫌気がさすことも仕方がないというものだった。


「桂花、別宮に行って、陛下のお許しを得て一刀のからくりを持ち出しなさい。七日ぐらい太陽の下に置いておいて欲しいらしいわ」


まったく関係のない話だけど、一刀のたいむましーんは陛下の別宮に保管されていた。一刀曰く、そこが一番安全だそうだった。


「何故いきなりそんなお話を…」

「いいからさっさと行きなさい。それと、もうすぐ出兵することになると思うから、必要な軍備を整えて頂戴」

「華琳さま!」

「華琳さま、ついに心を決められましたか!」

「そして、稟、あなたは…」


流し聞きしていたとは言え、随分と生意気なこと言ってくれたわね。


「何があっても、許昌を落としなさい。ただし許昌と周りの地を確保したら、それ以上の南下は私が他に命じるまでは許さないわ」

「はい!もちろんです!必ず許昌を曹操軍の元に…」

「そして、その期限は今月末よ」

「…はい?」


私の二つ目の条件に、自信満々そうにしていた稟は顔を曇らせた。


「華琳さま、それはいくらなんでも…」


桂花も難色を見せたが私は構わなかった。


もちろん、二人がそんな反応をするのも当然だった。許昌ほどの規模の城を落とすのには相当な軍勢が動くことになる。許昌にまで進軍するまでも半月はかかった。つまり私は稟に、出征の準備を含めて、十五日ちょっとで許昌とその一帯を落とせと言っていた。野戦でもなく攻城戦だった。


「出来ない、とは言わさないわ。それほどの速さでなければ、孫策から許昌を狙われるはめになるわ。そうなるとあなた達の言ったように劉備軍と両面から迫られることになるでしょう」

「そ、そう仰るということは、もうすぐ孫策が動くと思われるのですか」

「そうよ。だからあなたには今月中に確実に許昌を落とし、孫策が茶々を入れてこれないほど頑固の守りを用意してもらうわ。何ヶ月もあなたは自信満々に許昌侵攻を主張してきた。出来ないとは言わさないわ」

「それは…しかし、許昌まで進軍するだけでも十日ぐらいはかかります。十日ではいくらなんでも…」

「出来ないのならそれで結構よ。出来ると言うであろう者に任せるから」

「っ!わ、判りました。今月中、必ず許昌を落としてみせます」

「そう?功を焦っての猪突猛進ではないことを祈りましょう。もし出来なかったら、もう私の所に帰って来なくてもいいから」

「き、肝に銘じておきます。では、私は準備が忙しいのでこれで失礼します」


稟は硬直した動きで桂花を通り過ぎ部屋を出て行った。


「華琳さま、いくらなんでも準備する時間を除いて十日ぐらいで許昌だけでなく、その一帯を制圧しろというのは…」


稟を見送った桂花はさっきまで喧嘩していたにも関わらず私に呆れた顔で言った。


「あら、最初出会った時に私に速度戦で命懸けの賭けをした娘とは思えない発言ね」

「あの頃とは軍の規模も、そして戦いの規模も違います。私でも十日ならギリギリの所でしょう」

「出来ない、とは言わないのね」

「…必要な手を使えば不可能とはいえないでしょう」

「なら彼女にも出来るはずよ。いえ、出来なければ困るわ。自分で出来ると言った以上、言い訳なんて言わせるつもりはないし。口だけな奴はこの軍に必要ないわ」


私が桂花や一刀みたいな子たちを最初からずっと連れていたのは単に彼らが独特で自身溢れていたからではなかった。二人ともそれに相応する実力があったからだ。特に一刀はあの周りの風波を物ともせず軍の高位職に居られたのは彼の実力と成果があったこそだった。稟にはまだ自分が言っているような口ぶりが言えるほどの成果がない。


やめなさいとは言わない。ただし相応の実力を見せられなかれば、私が選んで選出したと言ってもここを追い出すことになるでしょう。


「それに、この内容だと今月が終わる前に孫策が動き始まると思うし」

「はい?恐れながら申し上げますけど、何を読まれていたのですか」

「一刀からの伝言よ。昨夜部屋に孫呉の将が来ていたらしいわ」

「!」


桂花は驚いて手紙の内容をしたけど、私は手紙を折って引き出しに他の手紙と一緒に入れた。


「……その手紙の量…まさか定期的に連絡をしていらっしゃったのですか」

「定期的に言うか毎日ね」

「一言言ってくださっても…」

「絶対内密にしてと言われているのよ。今言ったのも、後で彼にバレたら何を言われるか判らないわね」

「……」


桂花が不満そうに私を見つめた。


「もう、そんな顔をしないで。私だって一人で知っていなきゃいけないのが辛かったのよ」

「そう仰ってる割には顔色が以前と比べて大変よろしいのですけどね。にしても半年も誰も気づかないなんて…そういえば、最近良く流琉がお菓子の配達に来ると思えば…てっきりアイツも居ないし仕事で甘いものを食べるようになられたとばかり…」


私の前でこんな悔しそうにしている桂花はとても久しぶりだった。彼が居ないと桂花のこんな顔はめったに見れないものだった。


「稟にはああ言ったけれど、あなたにも頑張ってもらうわ。稟がどんな無茶なことを要求して来てもそれをこなして頂戴。後であなたのせいで出来なかったなんて話が出ないようにね」

「それは当たり前です。しかし、アイツは本当に動かないつもりみたいですね」

「どうかしらね、私が頼めば動くかもだけれど、本当にダメな時じゃなきゃ彼の意思を尊重するつもりよ。それに、本当に大事な時に現れて解決してくれた方が、連れ戻す口実としても良いじゃない?」

「……」


それでも桂花は釈然としない顔をした。


「隠していたのが腑に落ちない顔ね。どうしたら私の可愛い子猫ちゃんが私を許してくれるかしら」

「え、ちょ、華琳さま?」


私は座ったまま腕で桂花のの腰をぐいっと抱き上げ、桂花の顎を何回か撫でてやった。少しの間されるがままになっていた桂花はぱっと私の手から抜けだした。


「か、華琳さま!猫じゃないんですから!」

「あら、失礼。今まで猫だと思っていたわ」

「アイツに言うまで我慢なさるのではなかったのですか」

「私は猫の顎を撫でたまでだけどね?」


嫌みたいに言うけど、桂花本人も何月もお預け状態だったし、顎を何度かなぞられただけでももう顔が紅潮していた。


禁欲を辞めるというわけではなかった。ただ、彼と話をしながら、これぐらいの余裕は取り戻したつもりだった。彼を連れて来れば、この問題についても話をつけるべきでしょうね。


「行きなさい。夜にでも稟が無理難題押し付けて来るだろうから、全部準備しておいた方が良いわよ。多分風も連れて行かれただろうしね」

「ふう…判りました」

「ちゃんと準備出来たらもっと撫でてあげるから」

「か、華琳さま!」


喜んでるのではなくちょっと否定しているような返事がまたそそる。線を越えないようにするのが勿体無いぐらいだった。


「冗談…ではないのだけれどね。体を重ねないからって、あなたへの愛が薄まったとは思わないで欲しいわ。…あなたもそうだと思ってるから」

「…当たり前です。失礼します」


そう言った後桂花も部屋を出て行った。


豫州の方はこれでひとまずなんとかなる、と見ていいでしょう。


後は徐州の方だけれど…。


<pf>


桂花SIDE


華琳さまの部屋を出て廊下の角を曲がった所で私は壁に背を向けて心を落ち着かせていた。直接触られることも久しぶりだったけど、あの人を弄ぶような言動を見るのが本当に久しぶりだった。ここ最近ずっと消極的で、失礼を承知で言えば守りたい気持ちをそそり立たせていたけど、今日の華琳さまは以前私が知っていた華琳さまの調子に戻っていた。こんな風に華琳さまを変えられるほどの内容がその手紙に書いてあったのかしら。何はともあれ華琳さまが本調子に戻られたことは良きことだった。


私も準備しなきゃね…。


「桂花ちゃん、こんな所で自分を慰めているなんて恥ずかしくないのですか」

「してないわよ!何人を痴女にしようとしてるのよ!」


突然現れた風がとんでもないことを言うから私は大きな声で叫んでしまった。


「おやおや失礼、つい桂花ちゃんがついに顎まで性感帯に開発したのかと」

「何を馬鹿なことを…!」


考えながら撫でられた顎をなぞっていたのをこんな風にいじられるとは思いもしなかったわ。


いや、本当に思いの他気持ちよかったとかじゃないから!久しぶりすぎて驚いただけだったから!


「で、あなたはどうしてここに居るのよ」

「ぐぅ…」

「寝るな!」

「おおっ!…稟ちゃんが緊急会議と呼んでいますので、一応報告しに来てみました」

「…一応私があなたを稟ちゃんに譲る筋はないと判ってるよね?」

「部署も違うし最もですけどね…どうやら友達の窮地みたいなので、できれば休暇を取ってでもお手伝いしたいものでして…」

「有給なんてこんな所で使わないでよ…もう行けば?私は一人で忙しく出立の準備するから」

「それじゃあ、頑張ってくださいねー」

「少しは申し訳無さそうにしなさいよ!」


そう逃げてゆく風に叫んだものの、結局一人で準備しなければならなくなったみたいね。今日も徹夜決定よ。


「あ、あの……」

「ん?」


ふと後ろから声がして振り向いて見ると、そこには久しぶりに見る顔が居た。


「愛理?官庁にはどうしたの?」


愛理は凪が復帰した以後も復帰せず一刀と一緒に居た。愛理を見るのはアイツの謹慎一ヶ月目以来になった。


「ふ…」

「ふ?」

「ふ…復帰…しようと…思ってるんですけど」

「は?」


一応言うと、愛理は謹慎されたわけでもなく、かと言って凪みたいに正式に休職か退職したわけでもない。謂わば無断欠勤だった。もちろん状況なんて判ってるから無給で黙っていたけど、こうして面前で言われてみると、


「それで、私にどうしろと言うの?」


となる。


いや、久しぶりに帰ってくるのだからぎくしゃくするのも判るけど、屋敷に居た時の自信感はどこへ消えてまた生まれたての子鹿になったのよ。。本当に真面目な時とそうでない時の差が激しい娘なんだから。


「監査部は…どうせ私だけ居ても作動しませんから、桂花さまのお手伝いしたいんですけど…さっき風さまが行くのを見ました。軍事に稟さまと風さまが行くようになると、内政は桂花さまだけということになります。桂花さまもその方が良いと思います」


確かに…今は猫の手でも借りたい状況だった。


「まあ、良いわ…アイツはこの事知っているの?」

「…どうでしょう?多分ご存知だと思いますけど」

「何よ、その曖昧な返事は…」

「うぅ…すみません。ここ数ヶ月お目にかかっていなくて…」

「……は?」


どういうこと?一刀の屋敷に居たわけではないの?


「それって、あなたずっとアイツの所に居たわけじゃないの?」

「いえ、えっと…冬が来てからちょっと里帰りとか色々していました」

「里帰りって…徐州に居たわけ?」


そしてうちの諜報からは何の話も流れて来なかった、と……徐州の間者は復帰ね。


「で、徐州で何していたわけ?単に里帰りってわけじゃあないでしょうし」

「それは…えっと……」

「…まあ、今それはどうでも良いわ」


一人で徹夜するより、二人で徹夜すれば早く終るでしょう。


…言葉に矛盾がある気がするけどそんなことはどうだって良いのよ。


「早速手伝ってもらうわよ。今夜は寝かさないからね」

「あうあう…お手柔らかに…」

「できないわね。稟の無茶振り次第では朝まで徹夜よ」

「あうー!」


愛理が徐州で何をしていたか私が気になるぐらい余裕が出来るようになるのは結構先の事になる。



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