九話
いろいろと早まりすぎたせいで至らないところが多く、皆さんにご迷惑おかけしました。修正出来る状況じゃなかったためとりあえず消して上げ直しました。
華琳SIDE
「皆集まったわね」
夜、私は春蘭と秋蘭、桂花を集めさせて言った。
「今さっき討伐に出た季衣から報告が入ったわ。賊の遭遇したけど、その数は二千以上」
「二千!?」
「確か季衣と北郷が連れていった兵は五百ぐらいしかないはずです」
「そう、追われていた義勇軍と合流して戦ったけどその後直ぐに近くの村に後退したそうよ」
三人は驚いて、特に春蘭は季衣のことが心配なのか、今でも出ていきたい気持ちで山々なのが目に見えている。
「ええい、北郷は一体何をしていたのだ!季衣を危険な目に合わせるなど、決して許さん!」
「とにかく、至急に兵を集めさせます」
「既にやっているわ。明日の昼頃には三千ぐらいはあつまるでしょう」
「華琳さま!私だけでも先に行かせてください!」
「ダメよ」
春蘭が焦っているのも分かる。
季衣はここに来てから春蘭に良く懐かれて、まるで本当の姉妹かのように仲良くしていた。
まだ小さい季衣に何が起きたか心配なのでしょうね。
だけど
「春蘭、あなたが焦るのもわかるけど、あなたが数少い兵で援軍に行ったところで、焼け石に水。兵だけ消耗するだけよ」
「しかし…!」
「安心しなさい。助けないと言ってるわけじゃないでしょ?出来るだけ早く準備を整えて、万全に賊を叩く準備をして向かわなければ、季衣を助けることはできないわ」
「…うぅ…では、私は早く出立出来るように役人たちを促してきます!」
春蘭はそう言って私に断りもせず外へ向かった。
相当慌ててるわね。かわいいわ。
でも、興奮して役人を斬ったりしないかちょっと心配ね。
「華琳さま、アイツは何をしていたのですか?」
「『アイツ』とは…?」
桂花が言ってる意味を知っていながら私は聞き返した。
「北郷のことです。元ならあいつが大将なはずなのに、季衣に全部押し付けて更には村で孤立状態。元なら、あそこで義勇軍があっても構わず、こっちに伝達して待機するべきです。何故アイツは季衣を止めなかったのですか?」
「確かに私もそれは疑問です。北郷の普段の性格なら、勝てない戦はしようとしないはず。それが今回は何故…」
「その一刀なのだけれど……」
私は残った秋蘭と桂花の顔を交互に見て、落ち着いた顔で言った。
「義勇軍の殿部隊を助けてる途中で負傷したらしいわ」
「「!!」」
それを聞いて秋蘭は平静な顔を崩して、桂花は真っ青になった。
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季衣SIDE
一度黄巾党たちと戦ったけど、数が多すぎてとても戦線を維持できそうになかったから反転して、残っていた義勇軍と一緒に残りの義勇軍たちが向かったという村に逃げたよ。
逃げること自体は別に問題なかったのだけど、問題なのは……
「………」
「お兄ちゃん……」
お兄ちゃんが楽進という義勇軍の隊長を守るために賊に腕を斬られてしまったよ。
傷は腕に結構深くまで入ってしまって、その場で血止めをしたにも関わらず、逃げてる間貧血で倒れちゃったよ。
それだけならまだいいけど、衛生兵の話によると、肉まで斬られると、傷が治っても斬られた筋肉を直すことは難しいらしく、このままだと右腕を自由に使えなくなるかもしれないって……
「……っ!」
いけない。
ボクがこうしてると、他の兵たちの士気まで落ちてしまうよ。
まだ賊が来てない今は、義勇軍たちと力を合わせて村を砦のように囲んで防衛戦のための準備をしてくれているけど、戦いが始まったらボク一人で皆を守らなければいけない。
ボクが頑張らないと……ボクが無茶をしたせいで兵たちもお兄ちゃんもここで死んでしまう。
そんなことは絶対にさせない……!
「許楮将軍、よろしいですか?」
後ろから義勇軍の代表級の人、楽進が来たよ。
「斥候に出ていた官軍の兵が戻ってきました。賊の群れがこっちに向かって近づいているらしいです。防衛のための準備はほぼ完了しています」
「……わかったよ。直ぐに行くよ」
「はい……あの、申し訳ありません」
「楽進さんのせいじゃないよ。お兄ちゃんを行かせたのはボクだから」
ボクはお兄ちゃんが寝ている寝床から楽進さんに目を向けたよ。
「それより、楽進さん」
「はい」
「この村で、なんとしてでもあの賊たちを食い止めよう。一緒に皆を守ろう」
「…はい」
ボクは楽進さんと一緒にお兄ちゃんが居る負傷兵たちのための天幕を出た。
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「村大通りの東西南北、四カ所に主な柵を立てておるで。賊は最初は西側から来るはずやけど、そのうち四面包囲される形になるやろう」
「結局四カ所全部防衛兵力を置かないと駄目ってことか」
「なんかもう絶望的なの」
「諦めちゃ駄目だよ!」
ボクは楽進さんと、他の義勇軍を率いる代表二人と話をしていたよ。
「ボクたちはボクたちを信じてここまで戦ってきてくれた人たちと共に居るんだよ。あの人たちの信頼に答えるためにもそんな弱音を吐いていちゃ駄目」
「……そうですね。なんとしても皆を守らなければならないという覚悟で行きます」
「許楮ちゃん、年下なのにしっかりもんやな」
「ほんとなの」
「こら、二人ともそういう言い方はやめろ。官軍の将軍さまだぞ?」
「良いよ、別に。幼いのは見ての通りだし」
今までは春蘭さまや秋蘭さまが居たけど、今回はお兄ちゃんも駄目でボク一人。
ボク一人で五百の官軍と三百弱の義勇兵たちを守らないと行けない。
「敵が一番最初に来そうな西側にはボクが先ず居るよ。他の三箇所は兵たちに言っておいたから楽進さんたちが指揮を取って。何かあったら直ぐに連携出来るようにするから」
「はい」
「わかったの」
「夜まで地獄絵図やで……皆気をつけてな」
「うん…」
ここからが本番。
春蘭さまたちが来るまでなんとしてもここを守る。
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一刀SIDE
…………
目を開ける力さえも出ない朦朧な意識の中で、俺は考えた。
俺は正しい選択をしたのか。
俺にとって『正しい』とは『興味のあるもの』のために動いたか。
幼い時、俺から全てを奪い取った熱病は、代わりに違うものをくれて行った。
世界はいつも決まった方向にしか動かなかった。
ただ人類にはそれが理解できなかったけど、人類はいつも一つの大きな道から外れたことがなかった。
俺にはそれが見えていて、他の者にはそれが見えなかっただけのことだった。
全てを理解している上で生きる世界はとても興味のないものだった。
俺は何度も死ぬつもりでいた。
でもその度に俺の中に囁く声があった。
『興味』が欲しかった。
俺が欲しいのはただ『興味』。
俺の予想をはずれてくれる世の異端者たち。
それは時には英雄、時には悪党、相手が善を名乗っても悪を名乗っても構わなかった。
相手が俺の『興味』に応えてくれるのだったら、
俺はこの身に何一つ残らなくなるまで世界を見ることが出来る。
「……っっ」
右腕がちぎれそうに痛い。
だけど顔には出さない。
予想できているものに感情を表すほど、俺は易いに人間ではない。
外から戦う音が聞こえる。
剣の音、何かが壊れる音、悲鳴、喚声、銅鑼の音………
外は夜が近い様子。
もう直ぐ黄巾党も引いて行くだろう。
少数で奇襲をかけたいところだが、今の兵たちでは疲労が溜まりすぎているだろう。
このまま明日に備えた方が良い。
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凪SIDE
「皆、もう少し頑張ってくれ!もうすぐ賊も引いていく!」
日が落ちて行って、賊の攻めもどんどん勢いを失っていく。
今までどれだけの人たちがここを守るために死んでいったのだろう。
後どれだけの人たちが私の過ちのせいで死んでいかなければいかないのだろう。
「はぁあああああーーー!!!」
今日で何十発目か知らない気弾を拳に込めて薙ぎ払う。
体から力が一気に抜けていく。
まだ……まだ倒れるわけにはいかない。立て!まだいける!まだ戦える!
「楽進さま、無理をなさらないでください」
隣に居た、故郷の村から出発する時から付いて来てくれた兵が心配そうにそう言ってくれた。
「……私は大丈夫だ。……!」
その時、私はその兵の胸を見た。
「お前……!」
「あ…大した傷じゃありません」
「……!」
そいつの胸には賊の弓兵に受けたらしき矢が刺されていた。
抜くと同時に血が噴き出るだろう。もう助けることはできない。
後もうちょっとだというのに……!!
「楽進さま、俺はあなたと一緒に戦った日々を忘れません。あなたと共に闘った数ヶ月のために今この年まで生きてきたと言っても良いです」
「お前……」
「どうせ俺はここで死ぬでしょう。だけど、楽進さま、あなたはこんなところで死んではなりません。あなた様は、もっともっと大きくなる器だと俺は信じてます」
「……私にそんなことが出来るか…」
私を信じてくれた人たちさえも守れないこの私が……これ以上何になれるというんだ?
「さあ、今夜が俺にとっては最後の日!てめぇら、隊長には指一本触れさせねー!!」
その兵はそう叫んで、柵を壊して迫ってくる賊たちに突っ込んでいった。
そして、次の瞬間倒れるその兵の姿が、私がその夜最後に見た姿だった。
「大人と子供の差は大したものじゃない。ただ自分の身の程を知っているか否か、それが違いなだけだ」
「………」
「休め。見ては居ないが、この修羅場で君が生きているだけで十分に俺の興味に応えてくれた」
・・・
・・
・
<pf>
真桜SIDE
日が落ちて、賊は後退したで。
やっと一息できる、と思えば話はええけど、ウチの兵の被害も無視できないほどやった。
それに、作っておいた柵も半分以上壊れとる。
村の中には柵を十分に修復出来るほどの材料も残ってへんし…
なんとか明日もアレで凌ぐしかないけど、あの感じだと明日の昼まで保つかどうか……
「真桜ちゃん!凪ちゃん見なかったの?」
「いや、知らへんけど……」
修復作業の監督をしていたところ、沙和がやってきた。
「どこにも居ないの!医務室にも行ったけど居なかったの」
嘘や…凪が死ぬわけあらへん!
きっとあいつのことだから、どこかで自責しているに違いない。
「ウチが探してみるで。沙和は安心して負傷兵たちの治療の方を頼むで」
「わ、分かったの。見つけたら直ぐ沙和にも教えてなの」
「ああ」
ウチは作業場から離れて、街の隅々まで探すつもりで先ずは中央に向かったで。
その時、あの人がそこに居たんや。
「君が李典か?」
昼殿の凪を助けてくれたという官軍の将の兄さんがそこに立っていた。
「せやけど……兄さんは確か官軍の……倒れてたんじゃあらんかったの?」
「俺のことは良い。それより、これを見てくれ」
突然、その官軍の兄さん紙一つを差し出した。
「あの、悪いけど、今ウチちっと忙しいんやけど……そういうのは許楮ちゃんと…」
「楽文謙なら、俺の天幕で寝ている。戦で力尽きて倒れたのを持っていった」
「なっ!そうだったんか」
まったく、凪の奴無茶しやがって……。
「義勇軍の隊長は彼女だな?」
「うん?ああ、まぁ、基本的なことは三人で一緒に決めてたんやけど、戦になると大体隊長は凪がしてたな……」
「で、自分たちよりも明らかに数が多い敵に突っ込んだと」
「そういうことじゃあらへん!凪が悪かったわけじゃあらへん!」
最初は少ない数だったんだ。突然すんげえ数の援軍が現われて、気づいていたらウチが圧倒的に不利になってた。
「周りをちゃんと確認していたらそうはならなかったこと…兵の命を守るべき指揮官としてあるまじきことだな」
「凪を貶すつもりならもう行ってええか?官軍が助けてくれたことも、兄さんが凪を助けてくれたのも感謝するけど、ウチらはウチらが正しいと思ったことをやってるつもりやで」
ウチは真剣な目でその兄さんに言った。
「……彼女が言った通りの者で間違い無いとみた」
「あん?」
「それより、李典。君はからくり造りなので腕が立つらしいが、これを見てくれ」
「……」
ウチはその兄さんが差し出した紙を取って内容を見た。
最初はただのこの村の地図だと思ったけど、良く思ったら違った。
これは……陣?
「何や、これは?」
「造れるか?」
「造るって……村をコンナにするっていうねん?」
「察しが良い」
「んな無茶な……こんな風にしたら村がどうなると思ってるねん」
「それでも村の被害は最小限にしたつもりだ。どうせこのままでは明日の賊の攻撃に昼がすぎる前に防衛戦が落ちる」
「っ……!それは……」
「村長らの説得はこっちに任せろ。お前は兵たちを総動員して明日まで村をその形に作ってくれ」
「………」
この兄さん、いったい何者なん?
「出来るか?」
「……ああ、任しときぃ。ウチの名に賭けてこれよりも更にええもんに作ってやる」
「いや、ものはその地図の形で良い」
<pf>
季衣SIDE
「お兄ちゃん!」
ボクの天幕に来たお兄ちゃんを見てボクはひとまず怒鳴り上げた。
「一体どこに行ってたの?!兵士さんにお兄ちゃんが医務室に居ないと言われてボクほんとびっくりしたんだよ!」
「何だ、許楮、心配していたのか?」
「当たり前じゃない!!」
……あ
「あ、…えっと、だから…」
「……当然だな。俺の身にこれ以上何があったら典韋を見る面目が立たない」
「そ、そ、そう。それだよ。だからだよ」
うん……
「そ、それで、いったいどこに行ってたの?腕は大丈夫なの?」
「問題はない。どうせ今後使えない腕だ。これ以上痛くなったところで何も変わらない」
「何が大丈夫なんだよ、この馬鹿!」
思わず岩打武反魔を投げ出して、お兄ちゃんの足元手前にぼっかりと穴が空いたよ。
「…良いから休んで!」
「俺の天幕は文謙に貸してしまってな」
「っ……!じゃあ、ここで寝て!」
「お前はどうするつもりだ?」
「ボクは他の所でも大丈夫だから」
「大将が自分の天幕を部下にゆずしては示しがつかない。その話は呑めないな」
じゃあ、ボクにどうしろと言うんだよ……!
「…じゃあ、じゃあ、ボクもここで寝たらいいじゃない!」
「……………」
……………
「……まぁ、良いだろう。そろそろ歩くのも疲れて来たところだ」
お兄ちゃんはそう言ってボクを通り過ぎてボクの布団に入ったよ。
「まさか病者に毛布を敷いて寝ろとは言わないだろうな」
「……」
「……お休み」
お兄ちゃんはそのまま動かなくなったよ。
……いや、死んだんじゃないよ。寝ちゃったんだよ。
ほんとはもっと疲れてたんだね…
「ボクも眠いのに……」
毛布を持って来たくても、もう皆に配った後だから今更行くのも悪いし……
「…………」
仕方なく、ほんとに仕方なく、ボクはお兄ちゃんが先に眠りついた布団に潜り込んだよ。
「……起きないよね」
「…………」
「……お休み、お兄ちゃん」
・・・
・・
・
<pf>
華琳SIDE
「何これ……」
春蘭に加えて、秋蘭と桂花、増しては病状に居た流琉まで話を聞いては兵を集めて出立の準備時間を縮ませてくれたおかげで、私たちは朝に出発、昼すぎる頃に最後に報告が届いた村まで辿りつくことができた。
でも、私たちが来た時には、既に全て遅れていた。
一刀たちは見事に勝利していた。
私が見た姿は村の中央で黄巾党の死体が並んでる姿だった。
「一体どういうことなの?」
「……これだ」
一刀が差し出したのは、村の地図だった。
だけど、少し形がおかしかった。
「何これ……村の姿が陣になってるじゃない」
桂花も横でそれを見て驚いていた。
後ろでは春蘭が一刀を斬りかかろうとするのを秋蘭と季衣がなんとか塞いでいた。
地図に描かれている街の様子はまるで大きな陣を描くような形になっていた。
驚いたのは私も同じだった。だって……
「これって、私が考えていた陣とほぼ同じじゃない。考えはしていたけど、誰にも言ったことはないのに、どういうことなの?」
「『八門金鎖陣』。孟徳の考えを少し貸してもらったぞ。まぁ、丸写しではない。ちゃんと俺流だ」
「なんですって…?」
確かに、私が考えていたのとは少し形が違った。
ちょっとツメが甘いと思っていたところがちゃんと補われている。
「どういうこと?あなた、人の考えでも読めるというの?」
「…………」
私は無言のまま私の前に立っている一刀をただ見つめた。
怒ってるわけじゃない。ただ、ほんとに、この男と居ると暇しないって思っただけ。
「兄様ーー!!」
「っ!!!」
そんな時、流琉が一刀に抱きついて一刀はそのまま後ろに倒れた。
「兄様の馬鹿!人には無理するなって言っておいて、なんですかこれって!どうしてこんなになっちゃったんですか!」
「………典韋。何故ここに居る」
「兄様が心配で来たに決まってます!最初から私が来ていたら、風邪ぐらいかかっていたところで腕を斬られるなんて間抜けなことしません!」
「…ああ、そうだな。典韋の実力はそんなものじゃない」
「……兄様……」
流琉は泣いていた。
この中で一番一刀のことを心配していたのはきっと流琉でしょうね。
でも、流琉。
「流琉、そろそろ一刀の上から退いて頂戴。一刀が腕が痛んで苦しんでるわよ?」
「え?ああ、ごめんなさい!兄様!」
「……いや、なんともない」
嘘言いなさい。
「それで、一刀。その後ろに居る娘たちは?」
私は後ろに立ち下がっている三人の娘たちについて一刀に聞いた。
「義勇軍の代表者たちだ。彼女たちが居なければあの陣は実現できなかっただろう」
「へー。随分と高評価じゃない。もしかして、以前言っていた人材って?」
「……彼女だ…文謙、彼女が陳留の刺史、曹孟徳だ」
三つ編みの、武人のような女の子が、少し疲れた様子で前に出た。
「楽進と申します。字は文謙。此度は一刀様のおかげで命を助かって頂きました」
「…どういうこと?」
「一刀様の傷、実は他の義勇軍たちを逃がす間殿を務めていた私が危険な時を庇ってくれた時に出来たものです」
「……!」
そう、そういうわけだったのね。
「あなたとしては随分と荒れたことをしたわね」
「彼女には俺の腕一つぐらいの価値はある」
「そう……あなたがそれほど高く評価しているぐらいなら、私も文句出せないでしょうね」
季衣と流琉はなんとしてでも離そうとしていたくせに、自分が思った者のためには自分の身の安全も顧みないか……そういうところ、才を好むと自称する私も見習うべきかもしれないわね。
「なら、楽文謙。私の名は曹孟徳。この度に私の戦列に加わるつもりはないかしら」
「はっ。ただ、3つだけお願いがあります。宜しいでしょうか」
「あなたも3つ?」
「はい?」
「…あ、いえ、なんでもないわ。申してみなさい」
思わず昔のこと思い出しちゃったわ。
「先ず、先に逝った義勇軍の共たちの遺体を集めて葬礼させてあげるまで時間を与えてください」
「そう…それぐらいは当然でしょう。2つ目は?」
「2つ目は、私の後ろに居る二人の親友、沙和と真桜も、曹操さまの戦列に加わらせてください」
「…人材が増えることに越したことはないわ。こっちからも願ったものよ。最後は何?」
「最後は…私を一刀様の部下として曹操さまの戦列に加わらせてください」
「へ?」
あまりにも以外な発言だったので、私は一刀を一度振り向いた。
彼の顔にも少なからず驚いた様子が見えた。
もちろん、彼が見つけた人材だし、以前から彼は仕事に押されていたから彼女たちのことは一刀にまかせようとしていたわ。
でも、文謙本人から買って出るなんて……あの男がどれほど恐ろしい男が知らないからそう言えるのよ。
「……楽文謙」
「一刀様は二度も私の命を戦場で拾ってくれたお方です。どうかお側で仕えながらその恩を返させてください」
「ねえ、真桜ちゃん。凪ちゃんがあの人の部下になると、沙和たちも一緒に入るのかな」
「そうなるな……ウチはああいう人はちっと苦手なにゃけどな」
「沙和も、ちょっと怖いの……」
後ろの二人の反応が正しい反応。
やっぱり、この子、ちょっとおかしい。
「…俺は部下を選ぶぞ」
「はいっ!必ずやご期待に添えて見せます!」
やめなさい、あなた!
死ぬわよ?戦場じゃなくて部屋の中で過労死するからやめなさい!
「孟徳、失礼なことを思って居ないか?」
「別に彼女を思ったまでよ?」
「………」
「何?」
「……まぁ、いいだろう。荀彧!」
「ひゃっ!な、何よ」
一刀は興味を楽進から桂花に移した。
「俺が出した宿題はできてるか?」
「そ、それは……その、アレよ!あんたが負傷したせいで、私もいろいろ忙しかったから……!」
「できてるか?」
「………できなかったわ」
「……」
「だって仕方ないでしょ!あんたも倒れたって言うし、季衣一人だけじゃ何倍もする敵相手にどうなるか分からないし……だから…ひゃっ!」
突然、一刀が桂花の耳元に何か囁いた。
「んじゃあ、俺は先に退かせてもらう」
「なっ、一刀様?」
「先にって、まだこっちはやることが残ってるのよ?あなたが酷い様にした村も復旧しないといけないし」
「その他にもある」
「なんですって?」
「孟徳たちに無駄足をかかせてしまったからな。そのお詫びだ。大きな手柄あるからそれを荀彧に教えてあげた。じゃ、そういうわけだから……典韋、帰るぞ」
「へ?兄様、ひゃっ!」
そして、一刀はそのまま流琉を拉致してどっかへ行ってしまった。
あのまま馬一頭だけで帰るつもりでしょうね。
「あの、曹操さま。一刀様は」
「私のことは華琳って言いなさい。後ろの二人もよ。あ、後、あいつの部下をするときっと腰が曲がるほど無茶ぶり言われるはずだから、帰ったらせいぜい頑張りなさい」
「はいっ!」
「ふえぇ、嫌なの」
「何か嫌な予感がするで……」
「……何か、ヤケに機嫌が良さそうにしてるわね…」
………まさか、気のせいでしょう。
・・・
・・
・
先ずは今回の話がベタな件について謝罪いたします。
…と言わず全体的にこの外史が皆さんのアクセス入れてくださるほど大した物語じゃないことについて謝罪いたします。
正直に言いますと、最近ここ、にじファン(小説家になろう)にこの外史を上げることに負担を感じている所存です。
理由は、見る人が多すぎることです。
最初は思った以上に、というか今までで見たことのない数の人たちが自分の外史を見に来てくださるのを見てびっくりしました。一回あげたらその日のアクセス2000越え3000越えとか、TINAMIでは考えられない数でした。
で、最初はそんな感じで嬉しく思ったのですが、ふと気づくと、自分が韓国人で、それで日本語で書くことがすごく不自然で、いろいろとこんな多くの方々に見られるには不具合な点が多すぎるというところに気付きました。
もちろん、皆さんに言われたとおりに、推敲して、修正してあげることが大事ですし、今回は正直最初のものは書き終えて一見もせずにあげちゃいました。ちょっと忙しかったし、TINAMIでは早くあげなければならない理由もあったからです。
でも、そんな自分の力で十分になんとか出来るところを除くとしても、この外史はこんなに多くの人たちに見られるには色々と至らない…ぶっちゃけ恥ずかしいところが多すぎます。
それでこの外史をにじファンで上げるのはやめた方が良いなと慎重に考えている所存です。
自分の外史以外にもにじファンには沢山の外史がありますし、その中では週間アクセス一万越えとかそれなんて神?と思うぐらいの外史もありますけど、自分は今これほどの注目も結構きついです。
TINAMIはいまさっきリモデリングする前まではすごく小規模なサイトで、皆家族的な感覚だったので、ここでもそういうノリで書いて皆さんの気に障る発言もややあったかと存じます。
最初ににじファンに外史をあげようとした時は、TINAMIで書いたものを保管する『保管庫』のようにしようと思ったぐらいで上げたのです。だから修正もあまり真剣にやらずに過去の作品、そしてこの人類には(ryの場合はTINAMIと同じく上げているものまで気安くあげていたのですが、今までTINAMIでは思えない数の方々に見られて、いろいろと混乱しているところです………ええ、何が言いたいのかと言いますと、とりあえず色々と大変申し訳ありませんでした。これから真面目にやります。で、真面目にやっても駄目だったらコレ以上皆さんの気に障らないように去った方がいいだろうと思っています。
次回は拠点になります。
相手は今考えてるのは先ず、流琉、季衣(この二人、今回は一緒にやろうと思ってます)、桂花と、凪と(凪だけ)、……華琳さまは今回は出番ないかなぁーと思ってます。そのうちネタが浮かんだら書くかもしれません。
TINAMIでは書いたのですが、この外史だと夏侯姉妹がかなり疎くなる感じです。春蘭はともかく秋蘭とはもうちょっとどうにかならないかなぁとは思いますけど…まだ良い策はありません。
では、次回はまたいつになるか既約がありませんが、その時にまたお会いしましょう。
ノシノシ




