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守銭奴聖女

作者: 山田裕子
掲載日:2026/08/08

当代の筆頭聖女は、ひそかに守銭奴聖女と呼ばれている。

何かと手当を要求するからだ。

聖騎士団と魔獣討伐に行く際は、必ず危険手当を要求する。

時間外の仕事は、時間外手当を請求する。

今までの聖女は誰もそんな請求はしなかった。

黙って言われた通りの仕事をしていた。


筆頭聖女ジェニーは、枢機卿に呼び出された。


「何の御用でしょう?」


「近頃肩こりがひどくてな。何とかしてくれぬか?」


「何とかと言いますと?」


「治療をしてくれということじゃっ!」


「通常の業務以外の個人的な依頼でしたら、料金が発生しますが、お支払いいただけますか?」


「同じ教会の一員なのに、料金を取るのか?」


「個人的な依頼ですから。」


しぶしぶ枢機卿は支払いをした。

筆頭聖女の治療だけあって、効果は申し分ない。

しかし料金もなかなかのものであった。


しばらくして教皇も聖女を呼びつけた。


「腰痛が悪化して、痛くてたまらん。

痛みを消してくれ。」


「治癒の代金を支払ってくださるなら、やりましょう。」


「私は、教皇だぞ。それでも金をとるのか!」


「もちろんです。皆平等にお支払いいただきます。」


「後で払うから、早く治療をしてくれ。」


「本来でしたら、原則前払いなのですが、早く治療をということですから、

特別に後払いにいたしましょう。

必ずお支払いくださいね。

さもないと大変なことになります。」


「つべこべ言わず、さっさと治療しろ!」


ジェニーは、教皇の腰痛を治療した。

しかし教皇は何かと理由をつけて、支払いを拒んだ。

金がないわけではない。

なんとなく、聖女の言いなりになるのが嫌だったのだ。


あーぁ、知らないよ。

女神さまを怒らせると、大変なのに。

ジェニーは、少しだけ教皇に同情した。


様々な手当の要求は、女神さまの入れ知恵だった。

教会幹部は高い報酬なのに、教会付属の孤児院は予算が少なく、運営に苦労していた。

長年、高位聖職者の贅沢三昧に女神さまは不満を持っていたのだ。

そこでジェニーに、あれこれ手当を要求するようにさせた。

ジェニーは、その金を貯めて、各地の孤児院に渡していた。

ジェニーも孤児院育ちなので、ひもじかったり、寒さで眠れなかったりする辛さは、よくわかる。

今回の教皇の不払いは、女神さまの怒りに触れてしまった。

腰痛は、以前にも増してひどいものになった。

教皇は痛みに泣きながら、治癒代金を支払うことになった。

やがて執務もできなくなり、療養のため教皇の地位も降りた。


「さて、今度誰かが不払いをしたら、どんな罰にしようかしら?」

心なしか女神さまが楽しそうに見えるのは、どうしてだろう。


これからも女神さまと一緒に、支払わない者には、強引に取り立てる、

守銭奴聖女の汚名を甘んじて受けよう。

それで少しでも孤児たちの力になれるのなら。

ジェニーは、そう思うのだった。

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