閑話 妻ソフィアの悲しみと希望①
お城で泣くつもりはなかったわ。
お城で話すつもりだってなかったの。
でも二人になったら我慢が出来なくなって。
だって信じられない。
信じられなかったのよ。
アシェルのお父さまも。
お母さまも。
それにお兄さまたちも。
誰もアシェルの名前を呼ばなかった。
そのうえお父さまは、アシェルを怒鳴っていたわ。
お兄さまたちは、アシェルを睨みつけていたし。
お母さまは、自分のための嘘ばかり言っていたのよ。
元々アシェルが家族と仲良くないことは知っていたわ。
だけど私は、それを深刻に捉えていなかったの。
家族だからって合わない人もいるでしょう?
ほら、従兄妹の関係だけれど、私とセイブルが合わないみたいに。
私はそういうことだと思っていたの。
それでもずっと気にしていたわ。
時々そっと聞いてみることもしたわよ。
だけどアシェルはいつ聞いたって、家族のことは話したくなさそうだった。
私はアシェルが嫌な想いをすることが一番嫌なの。
だからいつもすぐに話題を変えていたわ。
それで詳しく聞くことが出来ないまま、時間が過ぎていったのよ。
おかしいと思ったのは、成人のときね。
アシェルは帰ってしまうものだと思っていたわ。
それなのにずっと一緒に居てくれて。
それは嬉しかったけれど、本当に家族と合わないだけなのかしら?って。
怪しむようになったわね。
アシェルのことではないわ。
アシェルの家族を怪しんでいたのよ。
よく考えてみれば、アシェルはこんなに優しいのだもの。
優しいアシェルが付き合おうとしないのだから、とっても悪い人たちかもしれない。
私は疑うようになったのね。
王都に来たら、さらに怪しいと思うようになったわ。
アシェルは子爵家には行かないと言ったのよ。
結婚するなら挨拶は必要でしょう?
それなのにお父さままで子爵家の誰にも会わなくていいと私に言ったわ。
本当は邸にアシェルのお父さまが来られると聞いたときも、一緒に挨拶しようと思ったのに。
アシェルもお父さまも私は同席したらいけないと言ったのよ。
そこまで言うなんて、もう悪い人たちで間違いないでしょう?
そこで私は、とても悲しくなった。
私はアシェルの妻なのに。
妻になれたのに。
いつまで隠しごとをされるのかしらって。
そう思ったら、とても胸が痛くなって。
セイブルの言葉が沢山思い出されたわ。
ますますセイブルが嫌いになったわね。
アシェルも本当に好きになった人には、全部話すのかしら?
気になったら、ますます胸が痛くなって。
それでも私はアシェルの嫌なことはしたくないから。
何も聞かないと決めていたのよ。
私の気持ちに気付かれても駄目。
アシェルは私のために、言いたくないことでも言ってくれるでしょう?
だから今回は頑張って隠したのよ?
アシェルはすぐに気が付く人だから、隠すのは大変だったわ。
でも私、頑張れていたでしょう?
少しは変だと思われてしまったけれど、お城に行く前だから緊張しているということにして納得して貰ったわ。
それなのに。
あの王様がアシェルの嫌なことをしちゃうんだから。
駄目なのよ、駄目なのよ。
私は奇襲に弱いのよ~。
王様は予定にないことをしないで欲しかったのよ。
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