閑話 侯爵令嬢ソフィアの憂いと決意②
アシェルは王都でも沢山の男女を狂わせたと聞いたわ。
セイブルが言っていたのよ。
特に貴族の夫人たちにはとても可愛がられていたんですって。
将来娘の婿にと狙っていた夫人は多いと言っていたわ。
そういう話を聞いていたから。
セイブルが言ったことは、またいつもの実験ねなんて流していられなかったのよ!
だって本当に、私たち成人するんだもの。
そうしたらアシェルは、自分で未来を選べてしまう。
これはお父さまも言っていたことよ。
この先ずっと一緒にいられるのは、アシェルがここに残ると自分で言ったときだよって。
どこかに行くと言ったらどうしよう?
アシェルがいなくなっちゃうなんて。
嫌、そんなの嫌よ!絶対に嫌!
だからね、お父さまが将来について話をするときには、絶対にアシェルの隣に居ようと決めていたのよ。
うふふ。作戦は成功したわ。
だけどあとでたっぷり怒られちゃった。
お父さま、あぁ見えてとても怖いのよ。
私が狙って現れたこともお見通しだった。
お父さまは怒るととぉっても嫌なことを言ってくるの。
あのセイブルが褒めるくらいの、それは嫌なことよ。
そのうえ罰を与えられるわ。
今回はね、しばらくアシェルとの時間を少なくしなさいと言われっちゃった。
嫌だったわよ。
でもこれも破ったら、一日中アシェルと会わせない期間を作ると言うのだもの。
我慢するしかないわよね?
そうしたら思った通りよ。
セイブルがアシェルを取っていくの。
それに伯父様だって、大叔母様だって。
どうしてみんな気付くのかしらね?
私が罰を受けている間に、アシェルに沢山声を掛けてくるのよ。
もう嫌になっちゃうでしょう?
だからね、王都ではずーっと。
もうひとときだって、側を離れないんだから。
私がアシェルを守るの。
アシェルは私の、お、お、お、夫ですもの。
そうよ、アシェルは私の夫なのよ。
誰にも渡さないんだから。
「それってさぁ、本当にアシェルの意思なのかなぁ?」
ふんっ。もうセイブルの話なんか聞いてやらないわ。
「アシェルはソフィアの願いを何でも叶えようとしてきただろう?プロポーズだってさ、ソフィアが言ったから、願いを叶えただけかもしれないよな?」
なんですって?
「王都でアシェルが本当に好きな人を見付けたら、ソフィアはどうするつもり?」
な、な、な、なんですって?
「だってアシェルはいつもソフィアと一緒にいて、他に女を知らないじゃないか」
それはセイブルだって同じようなものじゃないの!
「俺はちゃんと好きになって好きになるよう育てたからさ。ソフィアは違うだろう?」
……それはちょっとおかしいと思うわよ?うぅん、大分おかしいわよ?
「アシェルもいつか、本当に好きな人と結婚したくなるかもしれないよねぇ?それにさ」
セイブルはいつものにやにやした顔で言ったのよ。
「王都の誰も成長したアシェルを知らないだろう?こんなに綺麗に育っていると知れたら、俺たちも口が出せないような高貴な人たちが、アシェルが欲しいと言い出すかもしれないよな?」
駄目よ!こうしちゃいられないわ!
アシェルの側にいなくっちゃ!
お父さまとの約束なんて──っ!
違うのよ、違うのよ、お父さま。
今は駄目よ、止めないで、お父さま。
違うのよ~!!!
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