16.観察される二人
「結婚はまだだろう?なのにもう妻気取りか?」
「すぐよ!すぐに結婚するのよ!」
「予想通りの急展開だな。だけど結婚したって、誰とどこでどう過ごすか、それはアシェルが決めることだろう?ソフィアはまさか、アシェルから自由を奪う悪妻にはならないよな?」
「あ、当たり前じゃない!つ、つ、妻になるのだもの。アシェルの嫌なことはしないわ!私は良妻になるのよ!でも駄目よ!セイブルは駄目!」
「俺の何が駄目なのさ」
「セイブルにだけはアシェルはあげないわ!当主権限でアシェルを奪おうと思っても、そうはさせないんだからね!」
「嫌々当主を引き受けてやったのに、それくらいも許されないなんてなぁ」
「駄目よ!本当に駄目!アシェルは渡さないわ!」
顔の熱が少し引いたところで、アシェルは手を膝に戻して優しく声を掛けた。
「落ち着いて、ソフィア。大丈夫だよ。セイブルは何も奪わない。俺のことなんか研究対象としか見ていないからね」
「悲しいことを言うなぁ。俺はアシェルのことを大切な友人だと思っているのにさ」
「よく言うよ」
「本当によく言うわよ。いつもこうして仕事を手伝わせて!いいわ、私にも書類をちょうだい!」
書類を一束受け取ったソフィアは、当たり前のような顔をして、アシェルと同じソファーに座った。
また顔に熱が集まって、アシェルは狼狽える。
──今までこんなことにならなかったのに。どうしよう?
「へぇ、ふーん、そうかぁ」
声がした方に目をやれば、にやにや笑うセイブルの顔が目に入って、アシェルの顔からすんと熱が冷えていった。
──セイブルとはあとで……じっくり話すとしよう。ねぇ、セイブル?
何も言っていないのに。
そっと視線が外されて、アシェルは思う。
──本当に厄介な相手だなぁ。嫌な研究をしているから、何でもお見通しだもの。
──だけど……ソフィアのことは許さない。
「アシェルは年々叔父上に似てくるよな。その変化は本当に興味深いよ」
セイブルの言う叔父とは、ソフィアの父親ローワンのことである。
セイブルはたびたび余所の家の子であるアシェルが、ローワンに似てきていると言っていた。
──似ているところなんか、何にも思い付かないけれど。似ていたら嬉しいかな。
実の親に似ていると言われたら、アシェルは嫌な気持ちになっただろう。
でもローワンなら嬉しく思うアシェルだった。
しかしソフィアは違った。
「やめてよ、セイブル。アシェルはお父さまとは似ていないのよ」
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