12.まもなく成人を控えて
「まぁ、なんとかセイブルの件は認めて頂いたけれどね。今度は君たちが成人するだろう?」
ローワンの言葉にアシェルとソフィアは顔を合わせた。
この国の成人は十八歳。
だが誕生日を迎えたその日に成人するのではない。
古い戦争の勝利を記念した祝日がある。
その祝日に十八歳を迎えていた若者たちが一斉に成人するのだ。
かつての戦争で活躍した若い騎士たちを讃えてのことらしい。
よってアシェルとソフィアは、まもなく揃って大人の仲間入りをする予定にあった。
なお王族以外は特に決まった儀式などなく、各領地それぞれに祝いの祭りが開催された。
その際領地を持つ貴族の子女の多くが、領民たちに向け成人のお披露目を行っている。
というわけで、本当ならアシェルは子爵家に戻って、子爵領にて何らかの式典に参加するはずであったのだが。
──誰も成人の件には触れて来ないんだよなぁ。
その日に帰って来いと手紙を寄越してきた家族はなかった。
──そもそも俺の年齢、知らなそうだよね。
アシェルは家族を疑ってもいた。
父親の手紙の内容が急に変わったとはいえ、成人に触れて来ないのだからアシェルの年齢は覚えていないものだとアシェルは捉えている。
もうアシェルに失望もなければ悲しみも生じない。
ここウォーラー侯爵領で一緒に成人を祝おうと、ソフィアをはじめ多くの人たちが言ってくれているのだから。
「是非とも成人を祝いたいから王都に来るようにとしつこいんだ。そのときに二人にこれまでの論文について講義して欲しいとも頼まれてね。断ってはいるが、どうも嫌な予感がするから対策を練ろうと思って、まずはアシェルくんに声を掛けたのだよ」
「え?俺ですか?」
陛下がウォーラー侯爵家に積極的に関わろうとしているなら、子爵家三男のアシェル本人はお呼びでないものと思っていた。
──ソフィアのことは守るけどね。
自身は関係なくても、ソフィアが巻き込まれるなら、やはり冗談ではなく命を懸けて、ソフィアを守ろうと決めているアシェルだった。
ローワンは尋ねた。
「アシェルくんは、これからどうしたい?」
──これから?
「まもなく成人すれば、アシェルくんはもう自分の意思で生き方を選べるようになる。これからはどこで、どんな人たちと、どうやって生きていこうか、今までに考えていたことはあるかな?」
珍しくアシェルは隣で同じように固まっていたソフィアに気付けなかった。
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