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ねぇ、それ、誰の話?  作者: 春風由実


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93.不明瞭


「あぁ、出所というと……噂の発信者のように聞こえるが。その者たちに噂を流布する意図はなくてだな……。何と説明したらいいものか……」



 急に歯切れが悪くなったオーレリア王女に、誰かを庇うつもりかと捉えたアシェルは厳しい目を向けていたのだが──。



「その、な。アシェル卿を美の女神の愛し子と称し、崇める一派……一派などと本人に説明しては、後で私が責められそうだな……。アシェル卿を好む者たちの集まりと言っておこうか。そういう集まりがあるのだ」



「はい?」



 ──オーレリア殿下まで、急に何を言っているのか分からない人になった。



 ──俺を崇める一派?ねぇ、それ、何の話?



 アシェルだけでなく、ソフィアも大分困惑しているようだ。

 小さな声で「アシェルを好む集まり?どういうことなの?」と呟いている。



「聴取……罪人ではないのだが、関係者に事情は聴いた。だがな、いくら話を聞いても、はじまりというものが一向に見えて来ない」



 ──はじまりも何も。俺にはまだ何も見えて来ないよ。



「アシェル卿がウォーラー侯爵領に移動して、一年後くらいに開始したのではないかという結論に落ち着いたのだが。依然はっきりとはしていなくてだな。元々は一人であったり、親しい者たちに限り少人数で共に楽しんでいたり、あくまで内輪の趣味の話だったようだ。おかげで皆が、その頃はまさかこういう集まりが出来上がるとは思わなかったと、口を揃えて言っていてな。こちらとしては、誰かの計略が働いたわけではないと、それだけは確かめたかったのだが……。すまない。私の力では絶対にないと証明するまでには至れなかった」



 ──謝罪はいいから。頼むから分かるように説明して!



「アシェル卿の子ども時代の絵姿が出回るようになると、盛り上がるあまり隠し通せなくなったと。すると、あなたもそうだったか、実は私もですよ、と。知られたことで互いを理解し合い、意気投合して。こう、な?気付いたときには、ある程度の集団になっていたと。皆がそう話している」



 ──『こう、な?』って言われても、何も納得出来ないって!



「絵姿?俺の……?いやなんで?」



 茫然と呟くアシェルの隣で、ソフィアはより強く反応を示していた。



「アシェルの絵姿ですって?是非見たいのよ!」



 ソフィアの声を聞いて、少しばかり正気に戻ったアシェルは思い出す。



「ねぇ、ソフィア。子どもの頃の絵姿なら、ウォーラー領でいくらでも見られるよ。戻ったら一緒に見よう?」



 家族以上にアシェルを大切に育ててきたローワンたちは、我が子と同じようにアシェルの成長記録も残してくれた。

 アシェル一人の絵姿もあれば、ソフィアと二人の絵姿に、セイブルも加わったもの、それからローワンたちと並んだ絵姿もあって、あの子爵家の庭師だったトム爺と描いて貰ったものまであるくらいだ。

 描かれている場面だって、絵姿のためにと絵師の前でぴんと背筋を伸ばし笑顔を張り付けていたときのものばかりではなく。

 研究中の自然な姿から、食事中の風景、疲れてソフィアと寝入ってしまった姿など、もうそれは様々にあって。


 一体何枚あるのか、その数はアシェルも把握し切れていないほど。



「そうね、久しぶりに一緒に見たいわ。だけど王都の絵姿も見てみたいのよ」



「ソフィアが見たいなら……。見せていただけますか?」



「あぁ、私もやっと手に入れた一枚がある。城に戻り次第、アシェル卿とソフィア卿が見られるように手配しよう」



 ──やっと手に入れた?王女が簡単に手に入れられない俺の絵姿って何?



 困惑しつつ、こんなときでもお礼を忘れず伝えたあとに、アシェルは考える。



「どこから俺の絵姿なんか……まさかウォーラー領から流れて?」







読んでくださいましてありがとうございます♡


作者は今朝からはじめた大掃除の終わりが見えず途方に暮れています♡

皆さまは良き年末になりますように♡

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