ダンジョン暮らし
「水」
「はい、どうぞ」
「お、おう」
水を要求した直後に、水の入った皮袋を渡されて戦士のダンは戸惑いつつ、水を口に含む。フェリックスと呼ばれた少年は他のパーティメンバーにも、水を渡していく。女戦士のサナには干し肉ものを渡すのも忘れないし、女魔法使いのルシアにはレーズンをいくつか、僧侶のジャンにはダンと同様に水のみだが、果実酒を薄めたものだ。
「鑑定すらまともにできないダメ鑑定士が、人の顔色ばかり、うかがって気持ち悪い」
「ほんとにね」
ルシアが呟き、サナが同意する。そう言う割には要求に即座に応えられないと文句どころかダンやサナから拳骨が飛んでくる。まあそれでも、こうしてダンジョンに同行させていくれるだけマシだと小僧こと、フェリックスは思っていた。
職業『鑑定士』。女神が12歳の年の初めに授けてくださる職業は、その職業に応じて様々なスキルやの能力を与えてくれる。鑑定士なら相手の職業や強さなどが分かる人物鑑定、アイテムの効果や価値が分かるアイテム鑑定が初期スキルだ。だが、フェリックスの初期スキルは観察のみ。スキルの効果は注意深く見て気づきを得るというもの。今のように空気を読むことには便利だがアイテムを見てもアイテム鑑定がないからアイテムの効果や価値は、わからないし、人物鑑定がないので相手の職業やレベルも分からない。しかもまともな鑑定スキルを持っていたとしてもスラム街の孤児だったフェリックスが商売を始めるのは難しい。人物鑑定があれば門番にはなれたかもしれないが。それでも生き抜くためには稼ぎが必要だった。だから誰でもギルドに登録さえすればなれるハンターになった。ハンターになっても戦闘系の職業でないため、薬草採取など採取や雑用をこなして食いつないできた。他のハンターの荷物持ちやモンスターの死体から魔石や必要な部位を取り出す解体、ダンジョンの罠発見役やモンスターの気を引く囮役なんて命懸けの仕事もこなした。それらも運び屋、解体屋、盗賊などの専門職の実力には遠く及ばない。
そんな役立たずをダンたちのパーテイの同行者として荷物持ち兼、雑用として雇ってくれた。専門職を雇うより、はるかに安い賃金ではあるが。それでも薬草採取や街の中での雑用をするよりはマシな稼ぎなため、フェリックスは働いている。それにダンジョンには財宝が眠っているかもしれない。もし見つけられたら、ケチなダン達でも分前をくれるだろうと淡い期待を抱いて。




