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第5話:交差する剣と視線

「剣は交わり、視線はすれ違う。それでも、誰かの隣に立ちたいと思った。」

リオとミナの初陣

リオ&ミナ、初陣へ


《大試練祭・予選バトル》初日。


学院中が熱気に包まれる中、リオとミナは控室にいた。


「うわぁ……緊張してきたかも……!」


ミナが両手をぶんぶん振って、肩の力を抜こうとしている。

その隣で、リオは静かに深呼吸を繰り返していた。


「大丈夫。ミナとなら、きっと上手くいく」

「……ふふっ、そう言ってくれるとちょっと安心する」


ミナは笑って、リオの腕を軽く小突いた。


「昔のリオは、転んでばっかりだったのにね。

今じゃ剣を出して、魔獣を止めるんだもん。かっこよすぎ!」


「……あのときは、ただ夢中だっただけだよ。

でも、今はちゃんと戦いたい。君と一緒に」


ミナの頬が、ほんのり赤く染まった。


「……うん。あたしも、そう思ってる」



試合開始の鐘が鳴る。

観客席からの歓声が、訓練場全体に響き渡る。


「第一試合、開始!」


対戦相手は、剣技科の突撃型と錬金科の後衛支援型。

前衛が一気に距離を詰め、後衛が罠や補助魔法で援護する、バランスの取れた構成だ。


「ルゥ、お願い!」


ミナが幻獣を召喚し、後方支援に回る。

リオは《ルミナブレード》を具現化し、前に出た。


「来るぞ!」


相手の剣士が突進してくる。

リオは剣を交え、受け流し、反撃の隙を探る。

だが、錬金科の後衛が放った煙幕が視界を遮る。


「くっ……!」

「リオ、左!起爆魔法陣!!」


ミナの声に反応し、リオはすんでのところで回避する。

すぐさま反撃に移るが、動きが噛み合わず、攻撃のタイミングがずれる。


(まずい……連携が取れてない)


焦りが胸を締めつける。

そのとき、ミナの声が飛んできた。


「リオ、あたしに合わせて! 次、右に誘導して!」

「……わかった!」


リオは敵の剣士を右へ誘導するように動き、

その瞬間、ミナの幻獣が敵の足元に魔法攻撃を展開した。


「今だよ、リオ!」

「《ルミナブレード・第二形態》!」


剣が光を帯び、刃が延びる。

一閃。敵の武器を弾き飛ばし、勝負が決まった。


「勝者、リオ=フェルナ&ミナ=クローディア組!」


歓声が上がる中、リオとミナは顔を見合わせて笑った。


「やったね、リオ!」

「うん……ありがとう、ミナ。君のおかげだよ」

「なにそれ、こっちこそ!リオも、すっごく頼もしかった!」


ぎこちないながらも、確かな連携。

それは、ふたりの絆の証だった。



観客席の上段では、セラが静かにその戦いを見つめていた。

その視線の先には、光の剣と幻獣が交差する、ふたりの姿があった——

光の剣が閃き、幻獣が駆ける。

リオとミナの連携は、まだ粗削りだったが、確かに“噛み合って”いた。


(……あの剣、前よりも安定してる)


リオの《ルミナブレード》。

初めて見たときは、衝動と本能の産物のようだった。

けれど今は、意志と制御が宿っている。

そして、その剣を支えるように動くミナの幻獣。

彼女の支援は的確で、リオの動きに自然と寄り添っていた。


(私じゃ、あの剣は引き出せなかったのかもしれない)


そう思った瞬間、胸の奥が少しだけ痛んだ。

選ばれなかったことへの悔しさ。

それとも、リオが誰かと“並んで戦っている”姿への、言葉にできない感情。

けれど、セラは目を逸らさなかった。


…私が、あそこに居たなら。

あの剣の隣で、あの笑顔の中に、私もいたのだろうか

リオの剣が誰かを守るとき、

その“誰か”に、私はなれなかった

でも……それでも、私は——


彼女は立ち上がり、静かに観客席を後にする。

次の試合に向けて、準備を整えるために。

その背中には、迷いも、揺らぎもなかった。

ただ、凛とした意志だけが宿っていた。


セラ・アルヴィナ。

魔導科首席。氷の魔女と呼ばれる少女は、

静かに、しかし確かに、戦いへと歩みを進めていた。

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