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第4話:君と並んで戦う理由

「守りたいのは、君の隣にいる自分だった。」

リオが“誰と戦いたいか”ではなく“誰と並びたいか”を選ぶ決断の章

《大試練祭・予選バトル 開催決定》


その告知が貼り出されてから、学院の空気は一気に熱を帯びた。

廊下ではペアの相談が飛び交い、訓練場では即席の連携練習が始まっている。


「今年は魔導科と剣技科の混合戦らしいぞ」

「召喚科と組めたら、後衛支援が安定するな」

「セラ=アルヴィナと組めたら優勝確定だろ……!」


そんな中、リオはひとり、掲示板の前で立ち尽くしていた。


(俺は……誰と組むべきなんだろう)



「リオ!」


声をかけてきたのは、ミナだった。

制服の袖を軽くまくり、いつものように元気な笑顔を浮かべている。


「ねえ、ペア……もう決めた?」

「いや、まだ。どうしようか迷ってて」

「そっか……じゃあ、あたしと組まない?」


ミナは、少しだけ早口でそう言った。

その瞳には、期待と不安が入り混じっている。


「召喚科の訓練で、リオと組んだときすごくやりやすかったし……

あたし、リオの剣となら、ちゃんと戦えるって思ったんだ」


「……ありがとう、ミナ。そう言ってもらえるの、すごく嬉しい」


リオはそう答えながらも、心のどこかで引っかかっていた。

あのとき、自分の剣が“本当に”誰を守りたくて生まれたのか——

その答えを、まだ言葉にできずにいた。



その日の午後、魔導科の演習室。

リオは、セラに呼び出されていた。


「あなたの魔法、少しだけ見せてほしいの」


そう言って、セラは魔力で氷の槍を作り出す。

それをリオに向けて放つと、彼は反射的に《ルミナブレード》を具現化し、受け止めた。

氷と光がぶつかり合い、空気が震える。


「……やっぱり、普通の魔法とは違うわね」

「そう、なのかな……俺にも、よくわからないけど」

「でも、確かに“意志”がある。あなたの魔法には」


セラはそう言って、リオを見つめた。

その瞳は、以前よりもずっと柔らかくなっていた。


「大試練祭、私と組む気はある?」

「えっ……」

「あなたの魔法、もっと見てみたいの。

それに……あなたとなら、勝てる気がする」


リオは言葉を失った。

セラの申し出は、まるで“選ばれた”ような気がして——

けれど同時に、ミナの笑顔が脳裏をよぎった。


(どうすればいい……?)



その夜、リオは寮の屋上でひとり空を見上げていた。

星々が瞬き、セレスティアの浮遊島を照らしている。


「……俺は、誰を守りたいんだろう」


魔法が使えないと思っていた自分が、

今は“誰かと組む”ことを求められている。

それは嬉しくて、でも怖かった。


「リオ!!」


背後から声がした。振り返ると、そこにはミナがいた。


「……セラと、組むの?」

「……まだ、決めてない」

「そっか。……でも、あたし、負けないから」


ミナはそう言って、笑った。

その笑顔は、どこまでもまっすぐで、切なかった。


「ミナ……」


リオは、ゆっくりと口を開いた。


「俺の魔法が初めて出たとき、守りたかったのは——

たぶん、君だったんだと思う」


ミナの目が、驚きに見開かれる。


「だから、俺は君と組みたい。一緒に戦って、一緒に勝ちたい」


ミナは、しばらく黙っていた。

そして、ふわりと笑った。


「……うん。あたしも、そう思ってた」



翌朝、学院の中庭。

ペア登録の締切が迫る中、リオとミナは並んで歩いていた。


「じゃあ、登録しに行こうか」

「うん!」


その背中を、遠くから見つめる視線があった。

セラ・アルヴィナ。

彼女は何も言わず、ただ静かにその姿を見送っていた。

(……選ばれなかった、か)

けれど、その胸の奥に灯った火は、まだ消えていなかった。



こうして、リオとミナのペアが誕生した。

友情と想いが交差する中、

《大試練祭》の幕が、静かに上がろうとしていた。

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