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第3話:揺れる視線、交差する想い

「選ばれること、選びたいこと——その間で、心が揺れる。」

リオ・ミナ・セラ・カイン、それぞれの視線と感情が交差する

《ルミナブレード》の発現から数日が経った。

学院内では、あの事件の話題で持ちきりだった。


「魔法が使えないはずの特殊科の生徒が、魔力を剣に変えたらしい」

「しかも、あのセラ=アルヴィナを助けたって……マジ?」

「いやいや、そんなの作り話だろ。特殊科だぞ?」


噂は尾ひれをつけて広がっていく。

だが、リオ本人は——


「……ふっ!」


早朝の訓練場で、ひとり剣を振っていた。

右手に握られた光の刃、《ルミナブレード》。

魔力を“形”にするという、自分だけの魔法。

まだ不安定ではあるが、発動の感覚は少しずつ掴めていた。


「昨日より、少しだけ長く保てた……かな」


魔力の流れ、集中の仕方、イメージの鮮明さ。

それらがすべて噛み合ったとき、具現化は成功する。

まるで、自分の心がそのまま形になって現れるようだった。


「……やっぱり、剣が一番安定するな」



「おはよう、リオ!」


振り返ると、ミナ・クローディアが手を振っていた。

肩には幻獣のルゥがちょこんと乗っている。


「また朝練? ほんと真面目だね〜」

「うん。まだまだ不安定だから、慣れておきたくて」

「そっか。でも、あの剣、すっごくかっこよかったよ!」


ミナは笑顔で言ったが、その瞳の奥に、ほんの少しだけ陰りがあった。

リオが“自分だけの魔法”を見つけたことは嬉しい。

でも、それでセラとの距離が縮まることに、気づいてしまったから。


「……ねえ、リオ。今度、あたしとも訓練しない?」

「え?」

「召喚科の訓練でペア組むんだけど、その、リオと組めたら心強いなって」

「……うん、いいよ。俺でよければ」


ミナの顔がぱっと明るくなった。

けれど、その笑顔はどこかぎこちなかった。



一方その頃、学院の別の場所では——


「……あの“剣”、見たか?」


剣技科の訓練場で、カイン・ヴァルグレイヴが剣を振るっていた。

その動きは鋭く、正確で、そして苛立ちを孕んでいた。


「魔法が使えないはずの奴が、あんなものを……」


カインは、リオの《ルミナブレード》を思い返しながら呟く。

そして、セラがそれに興味を示したことも思い出していた。


「……あいつ、何者なんだ」


剣を振るうたびに、地面が震える。

その怒りは嫉妬か、警戒か、それとも——



その日の午後、学院の講堂で特別講義が行われた。

テーマは「魔法の多様性と未知の系統について」。

講師は、学院の魔法理論担当の老魔導士だった。


「魔法とは、魔力を“形”にする技術である。

詠唱、魔法陣、触媒……それらはあくまで“手段”に過ぎん」


リオは、その言葉に思わず身を乗り出した。


「魔法の本質は“意志”と“想像”だ。

既存の体系に当てはまらぬ魔法が現れることも、決して珍しくはない」


その瞬間、セラの視線がリオに向けられた。

そして、ミナもまた、リオの横顔を鋥々と見つめていた。

──それぞれの想いが、静かに交差していく。



講義のあと、学院の掲示板に新たな告知が貼り出された。


《大試練祭・予選バトル 開催決定》


年に一度の学院最大の行事。

実戦形式のペアバトルを通じて、実力と絆を試される試練。


「ペア、か……」


リオは掲示板を見つめながら、考え込む。

誰か組んでくれるだろうか。

そのとき、背後から声がした。


「お前と組む奴なんて、いるのか?」


振り返ると、そこにはカインが立っていた。

その瞳は剣よりも鋭く、冷たかった。


「魔法が使えない落ちこぼれが、ちょっと剣を出したくらいで調子に乗るなよ」

「……俺は、調子に乗ってなんか——」

「だったら証明してみろよ。お前の“魔法”とやらが、本物かどうか」


カインの言葉は挑発ではなく、宣戦布告だった。

リオは拳を握りしめた。


「……わかった。やってやるよ」


その言葉に、カインは薄く笑った。


「大試練祭、楽しみにしてるぜ。具現魔法使いさん」

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