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第2話:はじまりの剣

「この手に宿った光は、偶然じゃない。」

自分の魔法を“意志”として受け入れ始めるリオの第一歩。

轟音とともに、魔獣が地面に倒れ込んだ。


「《雷鎖陣》、展開完了! 拘束完了です!」

「魔力封鎖結界、維持中! 魔獣の反応、沈静化を確認!」


訓練場の空気が、ようやく落ち着きを取り戻す。

学院の教官たちが次々と魔法を展開し、暴走魔獣を完全に鎮圧していく。

その中心で、リオは呆然と立ち尽くしていた。

右手には、まだ微かに光の残滓が漂っている。

透明な光の刃——《ルミナブレード》。

自分の魔力が“剣”という形を取った、それが信じられなかった。


「……消えた……」


ふっと、剣が光の粒となって空に溶けていく。

リオの手には、何も残っていなかった。


「今の……魔法、だったのか?」


誰にともなく呟いたその声に、答える者はいなかった。

ただ一人、セラ・アルヴィナを除いて。


「……あなた、いったい何者なの?」


氷のような瞳が、リオをまっすぐに射抜いていた。

その視線に、リオは言葉を失った。



「魔力の急激な消耗による軽度の脱力症状。しばらく安静にしていれば問題ないでしょう」


医務室で、回復魔導士がそう告げた。

リオはベッドの上で、天井を見つめていた。

(あれは……本当に、俺の魔法だったのか?)

魔法が使えないはずの自分が、魔力を“剣”に変えた。

それは、今まで誰にも教わったことのない、未知の魔法だった。


「具現化……魔力を、形にする……?」


思い返せば、魔力回復薬を作るときも、

リオは魔力を“液体”として圧縮・凝縮していた。

それも、ある意味では“形にする”行為だったのかもしれない。

(じゃあ、あれも……俺の魔法だったのか?)

自分だけの魔法。

誰にも真似できない、誰にも教わっていない力。

リオの胸の奥に、小さな火が灯る。



翌朝、リオは訓練場に立っていた。

まだ誰もいない早朝。

右手を前に出し、深く息を吸う。


「昨日と同じように……魔力を、集中させて……」


イメージする。

剣の形。重さ。質感。光の流れ。

そして、誰かを守りたいという気持ち。

——光が、集まる。


「……出ろっ!」


リオの手に、再び剣が現れた。

《ルミナブレード》。

昨日よりも少しだけ、輪郭がはっきりしている。


「……できた……!」


喜びと驚きが入り混じる中、背後から声がした。


「それが、あなたの魔法?」


振り返ると、そこにはセラが立っていた。

制服の裾を風に揺らしながら、冷静な瞳でリオを見つめている。


「昨日の戦い、見ていたわ。あの剣……普通の魔法じゃない」

「……うん。俺にも、よくわからない。でも、これが……俺の魔法なんだと思う」


セラはしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。


「興味があるわ。あなたの魔法に」


それは、彼女が初めて見せた“肯定”だった。

リオの胸が、少しだけ熱くなる。



その日から、リオは毎朝訓練場に立ち、具現化の練習を始めた。

剣だけでなく、盾や鎖、弓など、さまざまな形を試していく。

魔法が使えない少年は、

魔力を“形”にする魔法使いとして、歩き始めた。

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