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エピローグ:痛みの夜、始まりの光

大試練祭編終了。次回より新章です

ルゥナは、学院の医療塔で静かに眠っていた。


傷ついた翼は布で包まれているが、かすかに火光が灯るたび、

ミナはその背に手を添えて、小さく呼びかけた。


「……ごめんね。もっと、守れるって思ってた」


ルゥナは応えなかった。

けれど、灯りは揺れていた。

その揺れが、優しさなのか痛みなのか――ミナには、まだ分からなかった。



学院の塔では、リオがひとり剣の手入れをしていた。

磨かれる光剣の表面に、夕焼けが映り込む。

その奥には、あの“本気の一太刀”カインの剣技が、未だ鮮やかに刻まれていた。


「……強かった、じゃ言い足りない。あれは、何か抱えてた」


剣を見つめながら呟く。

セラが静かに階段を登り、リオの背に言葉を投げた。


「彼の剣は、答えを探していたのよ。誰かに、じゃなくて……自分に」


リオは振り向かず、ただ小さく頷く。


「それでも、守ろうとしてくれた。――俺たちを」


セラはリオの隣に立ち、夕焼けに目を細める。


「あなたもそうよ。今のあなたは、“誰か”じゃない。“君自身”として、そこに立ってる」


その言葉に、リオは剣の手を止めた。

――その温度が、じわりと胸に染み込んでいく。



ミナは夜の庭園で、カインと向き合っていた。

風に揺れる水面の前で、カインは頭を下げる。


「ミナ。ルゥナに、申し訳ない。――君にも」


ミナはしばらく黙っていた。

そして、小さく言った。


「そんな謝罪なんてっ……」


二人の間に静かな時間が流れる、


「気にしないでください。試合だったので。」


カインの瞳が揺れる。

痛みと、感謝と、赦しが交差していた。


「……すまない。もし今後私にできることがあれば何でも言ってくれ。」



その夜、学院の塔に小さな魔力の揺れが走った。


塔の奥底――魔導記録室の封印が、一部軋みを見せた。


それは、かつて暴走した魔法の“痕”。

誰にも気づかれない静かな震えが、次なる試練の序章を告げていた。





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