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第19話:共鳴の頂(後半)

「冷たき魔法、熱き想い。

霜と炎が交錯する決勝戦――

剣と幻獣が響き合うその瞬間、空さえ震えた。」


霜が裂け、氷が軋む。


風を纏ったルゥナの爆風が、冷結の世界へと軌道を穿った。


「今なら……届く!!」


ミナの瞳が揺れる。

その奥からあふれた魔力が、感情と混ざり合い、

まるで脈を打つようにルゥナへと伝わった。


白銀の翼が、低く唸った。


ルゥナの背から風が走り、地面を擦るように霧を巻き上げながら上昇する。

尾の火光が渦を描き、空気を巻き込みながら炎が旋回――


「《火流旋・解放》!」


爆風が起こる。

炎が霜の層に衝突し、冷気と熱気がぶつかり、空間そのものが震えた。


セラの《氷結結界・重奏式》が軋み、魔力の密度に歪みが生じる。

氷の膜が揺れ、霜粒が舞い散り始めた。


その瞬間、セラが再詠唱を開始――


「リリィ、再展――」


「間に合わない!」


霜の術式が軌道を乱し、リリィの指先から放たれた再展陣が爆風で流された。



一方、リオはその一瞬の“空気の隙間”を見逃さなかった。


盾として展開されていたルミナブレードの魔力が収束し、再び剣の形へと変化する。

その光は、霧の粒を纏いながら風と共に剣身を包み――


「《輝刃・疾閃》!」


一条の光が走った。


踏み込みの一歩と同時に、足元の氷層を爆ぜる熱風が押し上げ、

剣が霜の揺らぎを突き破り、セラの結界の中心へと食い込んだ。


氷が砕け、空間に冷気と閃光が混ざり合う。


結界、崩壊。


空気が――止まる。


次の瞬間、


試合終了の鐘が、静かに鳴り響いた。



「勝者、リオ=フレイ&ミナ=クローディア!!!」


観客席の一部が思わず息を呑む。


そして湧きあ上がる歓声。


教師たちは言葉を交わすことなく、ただ頷き合った。


霜と炎。

剣と爆風。

感情と魔法。


すべてが、“共鳴”していた。



セラは静かに立ち上がる。

氷の粒がまだ髪に残るその姿で、リオを見つめた。


「……見事だったわ。風まで纏うなんて、思ってなかった」


リオは剣を納めながら、少し照れた笑みを浮かべる。


「……俺も、想定外だった。でも、ミナがいたから届いた」


ミナが笑顔で拳を突き出す。


「セラ、リリィ。すっごく強かった!」


リリィがふわっと微笑み、拳をそっと合わせる。


「うん。でも、“風は予想外”だったよ。あれはもう、小型幻獣って呼ぶには反則かも」


その言葉に、ルゥナが火光をゆらしながら柔らかく鳴いた。

ミナはその背をなでて、優しく呟いた。


「ありがとう、ルゥナ。……次も一緒に、飛ぼうね」



空は静かに色を変えた。


《大試練祭》――その終わりが近づく。


これから始まる戦いを、羨望するように。

美しい夕日が、静かに輝いていた。


――このあと、優勝者と前回優勝者・カインとのエキシビションマッチ。


試練の幕は、まだ降りない。



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