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第1話:魔法が使えない少年

「魔法が使えない僕に、剣は応えてくれた。」

リオの無力感と、初めての《ルミナブレード》発現の衝撃を象徴。

入学式の鐘が鳴り響く。

空に浮かぶ学園都市セレスティアの中心、白亜の講堂には、数百人の新入生が集まっていた。


「ようこそ、セレスティア魔導学院へ!」


壇上に立つ学院長の声が響く。

リオはその中で、ひときわ緊張した面持ちで立っていた。

(ついに……始まるんだ)

兄が通ったこの学園。

リオにとっては憧れであり、目標であり、そして——試練の場所だった。

入学試験の結果は、最悪だった。

魔力量は高いと判定されたものの、どんな魔法も一度も発動できなかったのだ。


「魔法が使えないのに、どうしてここに?」


そう言ったのは、魔導科の首席入学生、セラ・アルヴィナだった。

銀髪に氷のような瞳。完璧な魔法制御と冷静な判断力。

まさに“天才”と呼ぶにふさわしい少女だった。

リオは言葉に詰まり、ただ俯くしかなかった。


「……俺だって、やれるはずなんだ」


その言葉は、誰にも届かなかった。



数日後、リオは「特殊科」に配属された。

そこは、魔法の適性が不明な者や、異能持ち、落ちこぼれが集められるクラスだった。


「おい、また魔法失敗かよ」

「魔力だけあっても意味ねーんだよな」


訓練場では、他の生徒たちの視線が冷たかった。

リオは黙々と、魔力の制御訓練を繰り返していた。

(魔法が使えないなら、せめて魔力を……)

彼にできるのは、魔力を圧縮して魔力回復薬を作ることだけ。

それは誰にも評価されない、地味な特技だった。

けれど、リオは諦めなかった。

毎朝早く訓練場に立ち、魔力を瓶に詰めては、ひとりで実験を繰り返していた。



そんなある日、声をかけてきたのは、召喚科の少女だった。


「リオ! やっぱりあなただったんだ!」


元気な声と共に駆け寄ってきたのは、ミナ・クローディア。

リオの幼なじみで、幻獣「ルゥナ」と共に学園に通っている。


「久しぶりだね、ミナ」

「うん! でも、なんで特殊科なの? リオ、魔力量すごいって昔から——」

「……魔法が、使えないんだ」


その言葉に、ミナは一瞬だけ驚いた顔をした。

けれど、すぐに笑って言った。


「そっか。でも、リオはリオだよ。あたし、信じてるから!」


その言葉に、リオの胸が少しだけ軽くなった。



そして、事件は起きた。

魔導科・剣技科・特殊科の合同実技訓練。

リオは見学扱いで、訓練場の隅に立っていた。

そのとき、訓練場の結界が破られ、暴走魔獣が乱入する。


「きゃあああああっ!!」


生徒たちは逃げ惑い、教官も対応に追われる。

そして——セラが、魔獣の前に立っていた。


「……動けない……魔力が……っ」


魔獣の爪が振り下ろされる。

誰もが目を逸らしたその瞬間、リオの足が動いた。


「やめろおおおおおおお!!」


叫びと共に、リオの手が光に包まれる。

空間が震え、右手に“剣”が現れた。

それは、魔力が結晶化したような、透明な光の刃——《ルミナブレード》。

リオは剣を振るい、魔獣の攻撃を防いだ。

火花が散り、衝撃が走る。


「……これが……俺の……魔法……?」


セラは、リオを見つめていた。

氷のように冷たかったその瞳に、ほんの一瞬だけ、揺らぎが生まれた。

それが何なのか、彼女自身にもまだわからなかった。

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