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第18話:傲慢なる金の檻

ついに準決勝!


《大試練祭》準決勝・第2試合。


リオ&ミナ vs 名門貴族ペア――ヴェイル=グランドール&マルシェ=トランベール。

豪奢な装備に身を包んだふたりが、戦場へと悠然と歩み出る。


「特殊科の連携だって? ふん……見世物にはちょうどいいか」


前衛のヴェイルがリオを嘲るように笑う。


「この剣、魔導具で五重強化済み。君の光るおもちゃじゃ届かないよ」

「だいたい、“支援魔法で守る女”って哀れよね」


マルシェは背後に浮かぶ従属型精霊を撫でながら、ミナに目を向ける。


「この子の方が、よっぽど優秀なんだから」


ミナの表情が曇る。

リオは静かに剣を構えて言った。


「……口だけじゃなく、技術でも語ってくれよ。俺たちは、全部で戦う」


「ええ、そうだね――全部“金で揃えた”から、完璧だよ」


試合開始の鐘が鳴る。



試合開始直後、マルシェの精霊が空を滑るように舞い、魔力矢を連続展開。

空間に緑金色の魔力が放射状に広がり、ミナの方向を狙う。


「ルゥナ、お願い!」


ミナの召喚陣が光る。

白銀の霧に包まれた幻獣ルゥナが地を駆け、空へと飛び出す。

その身は軌道を描き、魔力矢を尾で払いながら滑空。

淡い銀蒼の魔力が、霧のように漂いながら精霊の発射角度を狂わせていく。


「なっ……!」


精霊の魔力が空中でゆらぎ始める。

銀蒼と緑金――二つの魔力がまるで絵の具のように空中で混ざり、虹色の乱流を生み出す。


ルゥナの咆哮が空間を震わせる。

その波に乗って、マルシェの魔導具が一瞬だけ動きを止めた。


「魔導具の制御が……っ、精霊が反応しない……!」


ミナがすぐに魔法を重ねる。


「《干渉結界・交差》!」


空間に光の粒子が舞い、従属精霊の魔力線を分断する。

精霊の動きが止まり、マルシェが焦りの色を浮かべた。



一方その頃、リオは前衛でヴェイルの連撃を受けていた。

五重強化された魔導具から繰り出される剣撃は、速く、重く、硬い。


「どうした、“具現魔法”くん!君の光、消えかけてるよ?」


だがリオは、魔導具の起動テンポ、エネルギー循環、剣の癖――

それらをすでに見抜き始めていた。


「……ミナ、次の一手で崩す」


「うん、今、ルゥナが流れを引き裂いてる――タイミング合わせる!」


ふたりの視線が合った。


次の瞬間――戦場が、彼らの舞台に変わる。

魔導具の軌道が揃いすぎている。

剣の動きに“意志”がない。

リオは、ヴェイルの剣撃の“空洞”を見抜いていた。


「ミナ、テンポを合わせてくれ」


「了解――《加速結界・重奏》!」


足元に展開された魔法陣が、リオの動きを一段上げる。

魔力の流れが空気を裂き、リオは一瞬で間合いを詰めた。


ヴェイルが剣を振るうが――遅い。


「何っ……?」


リオはその剣ごと、ルミナブレードで“斬る”。

武器ではなく、魔導具の魔力線だけを断ち切るような鋭い一閃。


ヴェイルの剣が爆ぜ、光を放って動作を停止した。


その直後、空中では――


「ルゥナ、行って!」


ミナが叫ぶ。

ルゥナが精霊の背後へと回り込む。

空気が揺れるのように歪み、精霊の制御核を覆う。


ルゥナの咆哮が、精霊の魔力を震わせる。

マルシェが慌てて魔導具を再起動するが、魔力が反応しない。


「動いてよ! この子、お願いっ……!」


その叫びは、空に溶けた。


ルゥナの尾が霧を振り払い、精霊を飲み込むように包み込む。

精霊が消失――魔導具から完全に切り離された。


同時にリオが一歩踏み込み――


「ルミナブレード、《輝剣》!」


一条の光が、ヴェイルとマルシェの足元を断ち切る。

魔法陣が弾け、二人の動きが止まった。


試合終了の鐘が、静かに鳴り響く。



「勝者、リオ=フレイ&ミナ=クローディア!」


歓声とざわめきが交差する。

観客席では、教師たちが静かに頷いていた。


「具現魔法と召喚魔法の交差か……想像以上に完成されている」

「これは、“特殊”という言葉ではもう括れんな」


一方、セラが観客席で目を細める。


「……あの剣、やはり“心”が形になってる」

「ふふ、次はセラの氷で真っ向勝負だね?」

「……そうね。崩すには、冷静さと狙いの精度が要る」



控室へと戻ったリオとミナ。


「ねえリオ、今回の勝ち方……ちょっと気持ちよかったでしょ?」

「……正直に言うと、うん。でも、あのふたり……戦い方、なんか寂しかった」


ミナがルゥナに軽く触れ、微笑む。


「ルゥナ、怒ってた気がする。“命の入ってない魔法”って、嫌だったんじゃないかな」

「そうかもな。……俺もそう思った」


ふたりは拳を軽く合わせる。

勝利の喜びと、少しの寂しさが胸に灯っていた。


そして、その手の先にあるのは――決勝戦。





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