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第17話:火照りと余韻


《大試練祭》準々決勝から一夜。


試合の熱は少しずつ胸の奥に沈み、代わりに柔らかな感情が広がっていた。


「この部屋、ちょっと狭いけど……居心地いいかもね」


ミナがケーキの皿を持ちながら、談話室のクッションに飛び込んだ。


寮の共用スペースには、リオ、ミナ、ノア、エリナ――

そして、少しだけ離れた場所にセラとリリィの姿もあった。


「今日は、お疲れさま会ってことで!」


「勝者のためのパーティじゃないのか?」


ノアが軽く言うと、ミナが笑いながら頭を振る。


「違うよ! 頑張ったみんなの打ち上げ!」


リオは苦笑しつつ、静かに頷いた。

試合は激しかった。勝ったけれど、完璧ではなかった。

でも、ミナが隣にいることが――何よりも、嬉しかった。



「……エリナ、大丈夫?」

「うん。悔しいのは悔しいけど、ノアと一緒に戦えてよかったって思えるから」


エリナはスプーンを口に運びながら、笑った。

その横で、ノアが静かに目を伏せる。


「……お前の魔法、本当はもっと凄い。次は、それを引き出す」


「……ありがとう。次は、ちゃんと支えられるようにするね」


ふたりの言葉に、リオは少し目を細めた。

仲間になるって、こういうことなんだと、胸の奥が温かくなった。



そのとき、談話室の入口がすっと開いた。

セラ・アルヴィナとリリィ・ノクターン。

ふたりは一礼してから、小さなテーブルに静かに座った。


ミナが嬉しそうに手を振る。


「セラ、リリィ!来てくれたんだ!」


リリィが微笑む。

「うん。招待されたの初めてだったから、ちょっとドキドキ」


セラは水のグラスを口に運びながら、小さく言った。

「……勝者の視界を確認しておきたかっただけ」


それに対し、ミナが笑って返す。


「なら、次の準決で思いっきりぶつかってね。リオたちを倒しに来ていいよ!」


それを聞いたリオは少しだけ笑ってセラを見た。

彼女は一瞬だけ瞳を細め――そして黙って目をそらした。


「……決勝で、会えるといいわね」


その言葉に、部屋の空気が静かに高まった。



夜更け。談話室を出たあと、リオとミナは中庭のベンチで並んで座った。

「今日……楽しかったね」

「うん。試合より、みんなで笑えたのが、なんか嬉しい」


ミナがそっと手を伸ばして、リオの指先に触れる。


「次も勝とう。リオが隣にいてくれたら、魔法も強くなる気がする」

「俺も……ミナがいると、剣が迷わない」


ふたりの掌が、静かに重なった。



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