第15話:剣と魔法の距離
朝の訓練場に、剣の音が響いていた。
リオとノアが向かい合い、木剣を交えている。
「……構えが甘い。もっと腰を落とせ」
「う、うん……!」
ノアの指導は相変わらず厳しい。
けれど、そこにあったのは冷たさではなく、真剣さだった。
リオは汗を拭いながら、息を整える。
剣を握る手に、少しずつ“重さ”が馴染んできていた。
「……前より、動きが素直になったな」
「え?」
「無駄な力が抜けてる。剣に“迷い”がない」
ノアの言葉に、リオは少しだけ目を見開いた。
それは、かつての彼からは想像できなかった“肯定”だった。
「……ありがとう。ノアのおかげだよ」
「礼はいい。お前が変わっただけだ」
ふたりの間に、静かな風が吹いた。
剣と魔法。違う道を歩んできたふたりが、今、同じ場所に立っていた。
◇
訓練場の外、木陰のベンチでは――
「ふふ、あのふたり、なんだかいい感じだね」
ミナが笑いながら言うと、隣でエリナも微笑んだ。
「うん。リオくん、すごく楽しそう」
「……ちょっと悔しいけど、嬉しいよね」
ふたりは並んで座りながら、剣を交えるリオとノアの姿を見つめていた。
「ねえ、エリナ。明日の試合、緊張してる?」
「少しだけ。でも、ノアがいるから大丈夫。……ミナさんは?」
「うーん……リオが隣にいると、緊張よりも“負けたくない”って気持ちが強くなるかも」
エリナはその言葉に、少しだけ目を細めた。
「……わかる気がする。私も、ノアとなら、どんな相手でも戦えるって思えるから」
ふたりの視線が、自然と交差する。
そこにあったのは、敵意ではなく、静かな敬意だった。
「明日は、全力でいこうね」
「うん。楽しみにしてる」
◇
訓練を終えたリオとノアが戻ってくる。
ミナとエリナが立ち上がり、笑顔で迎えた。
「お疲れさま、ふたりとも!」
「……お前らも、明日は覚悟しとけよ」
ノアの言葉に、ミナがにやりと笑う。
「望むところ!」
その笑い声に、リオもつられて笑った。
剣と魔法。違う力が、少しずつ重なり始めていた。
そして、明日――
ふたつのペアが、真正面からぶつかり合う