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Genesis of Deicide  作者: キキ
第四章 祈りが語られる前に/Pre-Narrative
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再語義化命令/構文国家の干渉

「語られなかったことを、

語れるように変えてしまえば――

それは、語られたものではなくなる。

それはもう、“誰にも祈っていない”ことになる」


Emotion_Latency圧を記録不能と判断した構文国家管理庁は、

ナオたちに対し“再語義化命令”を発令する。


『語義未満祈祷圧について:定義形式による整形処理を実施』

→構文庁決議第4401項:「Emotion_Latency波形の社会語義登録義務」


ナオの祈りは、記録庁の処理装置へと誘導される。

意味になる前に、構文が“これは悲しみ/これは希望/これは怒り”と定義しようとする。


クラリスが叫ぶ。


「ダメ――それ、語ったことになってしまう!

祈っただけでよかったのに……言葉にされたら、祈りじゃなくなる……!」


Emotion_Latency波形が揺れる。

祈りが“意味になろうとする圧”によって、歪み始めた。




再語義化が開始された瞬間、祈りは自壊する。

ナオがゼロアークで残した“語られる前の記憶”が、

意味の波形を押しつけられたことで、構文に触れてしまう。

結果――記憶は誰のものでもない“語義残骸”に変化する。


【Emotion_Latency崩落圏発生】:語義圧接触により記録素失陥

→状態:誰にも語られず、誰のものでもなくなった祈り


ユンが言う。


「……それってさ……

語られたから、もう祈りじゃなくて、“意味になっちゃった”ってこと……?」


オルが反応。


「定義されたら、思った通りになったって思われる。

でも実際には、それは“語った誰かの言葉”でしかない。

誰の祈りでもないことになっちまうんだよ……」


ナオは、初めて感情の核が“誰にも残らず”壊れるのを目の当たりにする。

沈黙が、語られることで、存在しない情報に変換されてしまった瞬間だった。





ナオがEmotion_Latency炉にアクセス。

“語られる前の記憶”を、構文圧器官へ直接干渉させるための技術、《語義化回避構文》を起動する。

それは、語る前に祈りを“空間に分散”させる形式。

言葉ではなく、空気圧”熱”触れた気配で記憶を残す術だった。


【回避術式発動:Pre-Narrative_Latency_Escape】

→定義波形と逆相干渉開始/構文タグの接続阻止


セリエント=コアの記録庁が一時的に沈黙する。

構文圧が逆相によって中断され、“語る前の祈り”が接触不能状態に入る。


ナオの祈りは、誰にも語られないまま、

定義されることなく、熱として庁舎壁面に残る。

都市のどこかで、それに触れた者が――意味にはならない()()()()()()可能性が生まれた。




国家官吏が発言する。


「……意味になっていない情報が空間に残っている。

それは危険だ。語られていないならば、記録できない。

記録できないなら、管理できない。

管理できないものは、社会秩序に干渉する」


この瞬間、構文国家は“語られないまま残るもの”を初めて、“存在しているが扱えない情報”として認識する。

それは秩序にとって、制御不能の痛み。

祈られただけなのに、誰かに深く刺さる可能性を持つ、語義化不能の熱だった。


クラリスが言う。


「語られないからこそ、誰かに届く。語られたら、誰にも届かない。

……その違いがわかってしまったなら、

あなたたちはもう、祈りを“語義だけじゃ測れない”って認めてるんだよ」


Emotion_Latency圧が、都市空間に再び響く。

意味にならず、誰にも語られず、

でも確かにそこに在る“祈りの痕跡”。





ナオたちは都市を離れる。

セリエント=コアでは、再語義化処理は停止された。

理由は――祈りが“語られる前に壊れる”ことを、都市が初めて体験したから。

ナオは語らなかった。

でもそれでも、誰かが“意味にならないまま祈りに触れた”ことを、都市の記録庁は忘れられなくなっていた。


ユンが言う。


「祈りってさ……語ってないときの方が、ずっと深く残るんだよ。

語るって、誰かに奪われるってことでもあるからさ」


Emotion_Latency圧は、沈黙のまま空気を震わせながら、

次なる都市――意味にならなかった神々が祈られぬまま消えていった《セリオト神体層》へ向かう。


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