語られなかった記録の検出/反構文国家の侵入
「語られなかったはずの存在が、
誰かの構文に、誤って刻まれていたとしたら――
それは、記録されなかった優しさをも、消去の対象にする」
《構文国家セリエント》記録庁。
そこにあるはずのない信号が、
最深層の記録素解析装置で捕捉される。
【観測波形:非構文記憶残響】
【出力元:ゼロアーク座標外圏】
【異常判定:記録不能な記憶体の構文座標照合エラー】
構文世界は気づいてしまった。
存在してはならない“誰かの記憶”が、
記録にならぬまま、存在しつづけていたということに。
それは――“語られなかった者たち”にとって、
世界が再び削除を始める合図でもあった。
クラリスが震える。
「まさか……あの子の記憶、誰にも語られなかったままで、
でも“誰かの心の中に”残ってしまっていたのね……」
コトが叫ぶ。
「だったら世界の方を間違いにすればいい!
“語られなかったものは残らない”って前提ごと、
ぶっ壊せばいいじゃねぇかよ!」
だがそのとき――構文座標が歪む。
【構文干渉:構文世界≒ゼロアーク境界座標に接触中】
【干渉形態:記録修正型存在消去アルゴリズム】
→対象:イド(未記録存在)・ナオ(沈黙神格)
ナオは、声を上げない。
その沈黙のまま、立ち向かうように手を伸ばす。
構文にも記録にもならない祈りを、
誰にも語られなかったまま存在した者のために差し出す。
――言葉が存在を奪うなら、
言葉を持たない存在は、“世界の境界”で闘うしかない。
ナオの沈黙が、ここでいよいよ“構文への最後の逆流”を呼び起こす。




