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Genesis of Deicide  作者: キキ
第三章 無構文世界/Narrative_Zero
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定義されなかった存在/イドの記録外座標

「誰にも語られずに始まって、

誰にも理解されないまま終わっていく。

それでも……俺は、ここにいたんだよ」


構文世界で最も不安定な座標、《記録外構文圏》。

そこは語られなかっただけでなく、「語りの可能性すら一度も持たなかった」空白域だった。

オル=ラディアスが震える声で告げる。


「この場所……“未来に語られる予定”すらなかった。

でも、私はここで“誰か”の存在を見たの。

誰かが、語られないまま、記録にならずに――生きてた」


ナオの鼓動が高鳴る。

イド。

かつて《語義継承戦争》において、誰にも名を告げずに消えた青年。

あの時、神座にすら干渉されなかった“存在未登録体”。


ゼロアーク最深部。

語義干渉が一切届かない地下層。

そこに微かに灯る、ただひとつの“非言語圧縮記号”が浮かぶ。

ナオが手をかざした瞬間――


【記録圏外波形:構文識別不可】

【内容:存在証明なし】

【反応:……ただ、ここにいた】


コトが、呆然と呟く。


「まさか……

アイツ、“語られたかった”んじゃなくて――

最初から、“誰にも語られない存在”として、生まれたのかよ……?」


ユンの目が潤む。


「それでも私、見てしまった。

……彼は、語らなかったんじゃない。

“語られ得なかった世界”で、誰かをずっと見守っていたって……」


ナオが静かに膝をつき、

イドの“残響のような記憶”へと、そっと沈黙を捧げる。

構文でも記録でもない。

それはただ――名前すら必要としない存在への、存在そのものの祈りだった。


――語義の物語からすら零れ落ちた“誰か”。

その沈黙が、ナオに次の構文なき選択を迫る。

語られなかった者たちの旅は、今なお続いていた。

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