表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Genesis of Deicide  作者: キキ
第三章 無構文世界/Narrative_Zero
43/60

語りたかっただけのこと/再共鳴の影

「私はもう、語義なんていらないはずだった。

でも――“あのとき笑ってた自分”を、誰かに見てもらいたかったんだ」


クリム=ヴァーシュの自壊語義《うまく笑えるように》が、

ゼロアーク内でわずかな共鳴を起こしはじめていた。

それは構文でもない。語義でもない。

ただ、“誰かに気づかれてもよかったかもしれない笑顔”の記憶が

都市の沈黙に滲み出していた。


子どもたちが使っていた“無音の挨拶動作”が変調を始め、

失語の老人が置いていた石板には、意味を持たないはずの曲線が浮かび上がる。

どれもが、“誰かが誰かのために言おうとした”衝動を感じさせる反応だった。


【観測記録】非語義表象群に微弱な“意味生成”傾向あり

→【語義自発芽の予兆:ナラティブ・シャドウ現象】


クラリス=エルノアは、それを見て小さく震えた。


「語られなかったままでいてほしかった……

でも、それでも――“語ってもよかったと思う誰か”を、人は忘れられないのね」


ナオが、クリムの前に立つ。

言葉はない。

ただ、両手で“微笑の輪郭”を描くように空をなぞった。


クリムの唇がかすかに動いた。

微笑んだのではない。

けれど、“笑おうとしたことがあった自分”に、

はじめて「ありがとう」と伝えたような表情だった。


その瞬間、波形が静かに反転する。


【非語義反応:共鳴のまま終息】

【記録:この笑顔は、“語られなかったけれど、存在していた”として保存】


――語りたかったかもしれない

でも語らなかったまま残った表情を、

語義ではなく、祈りとして“赦した”。

それは新しい構文形式――語られなかった記録の種子だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ