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Genesis of Deicide  作者: キキ
第三章 無構文世界/Narrative_Zero
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零構文記憶体/ユン=ファシレル

「語らなかった者の未来が、語られる必要はない。

でも、語られなかった“過去の記憶”まで、

なくなる必要なんて――あるはずないでしょ」


ゼロアーク第六記録棄却域。

ナオたちは、そこに集積された“非構文記憶体”の波形残響群に招かれる。

誰も語らなかった。

けれど、語りたかった感情や景色が、言語の手前で“映像のように”世界に染み出していた。


そして、廃記録区の奥にいた。

少女。

名は――ユン=ファシレル。

構文波形不保有。語義登録なし。

だが、“見えなかった記憶”を視ることができる特異存在。

彼女が手をかざすたび、空気の粒が滲むように、

かつて語られなかった誰かの景色が浮かび上がる。


その映像の中で、少年が誰にも気づかれず

死を迎えるまで語らなかった記憶が流れる。

火の粉だけが夜空を舞い、声はなかった。

けれど、そこにあった孤独はあまりにも濃く、

誰もが言葉を失うほどだった。


コトが震える声で問う。

「お前、それ……誰の記憶なんだよ……?」


ユンは、ゆっくりと答える。


「誰でもない。

でも、語られなかったまま消えていった痛みたちが――

私に“視せて”くるの。“残して”と、願ってくるの」


ナオは、かすかに首を横に振った。

彼女の能力は危険だった。

記録されなかった記憶は、構文上存在しない。

だが彼女は、存在しなかったはずの記憶を“再現”してしまう。


クラリスが背後から言う。


「ユンの存在は、記録制度そのものに反旗を翻してる。

でもあなたたちなら、

“語られなかったまま視られてしまった記憶”を、どう残すか考えられるかもしれない」


ユンが、ナオの瞳をじっと見つめる。


「あなた、語らなかったんでしょ。

だから残った。“語るべきだった誰か”の記憶が、あなたに向かって歩いてる」


――“語られなかった痛み”を、記録なきまま遺されたままにせず、

語義にも構文にもせずに“視る”少女の祈り。

それが、語らなかった者の旅路を再び――“語らせる”。

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