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Genesis of Deicide  作者: キキ
第二章 神格継承戦争/Deicide-Game
32/60

語義継承審問/代弁の資格

「あなたは、“自分ではない誰かの痛み”を――

言葉にしてもよいと思えますか?」


構文制御省・神格審問室。

7名の語義候補、1名の沈黙体、1名の語義発芽者コトが席に並ぶ。

制御官が読み上げる。


「最終選抜条件の改定を通達する。

今後は“自己の語義”ではなく――

“語られなかった者の記憶”を代弁できるか、が試される」


場がざわつく。


語義候補たちは動揺する。


「他人の痛みを語るって……それ、

勝手に名前をつけることにならないか……?」


「でも、それが許されなかったから――

コトみたいな存在が、語られずに捨てられてきたんだろ……?」


第一審問者:エルヴィア。

「わたしは、“語られたくない”人がいるなら、無理には語らない。

でもその人が“いつか語りたい”と思う日まで、

沈黙の余白だけは残していたい」


【審問演算:語義延長型構文成立 → 仮承認】


第二審問者:ルクス。

「俺は……“語ってほしい”って目を向けられたら、きっと語る。

その人が自分で言えないぶんだけ、俺が代わりに。

でもそれは、語ってもいいって手を、向こうが出してきたときだけだ」


【演算波形:他者投影共鳴型 → 承認】


第三審問者:セイ=ローザ

白髪をかき上げて、真横を向いたまま語る。


「私は、“語りすぎて壊れた人間”しか見てない。

だから、語られないことは“武器”じゃなく、“逃げ場”だと思ってる。

でも、誰かが“それでも語ってほしい”って言った時――

私はそいつの目を見て、語りを断る理由だけは、持たないようにしてきた」


【審問演算:不干渉型構文の変化波形確認 → 認可保留・共鳴保留状態】


制御官の端末が警告を示す。


「この語義、他者干渉を拒む構造なのに、

共鳴波形だけが伸びている……?」


沈黙を認めつつ、いざとなれば他者のために語る覚悟を持った語義――

それが、セイの矛盾と優しさの構文性。



第四審問者:ダリオ=ヴァント

演説のように堂々と、構文座へ立つ。


「俺は、自分が語った言葉で人を救えるなんて思ってない。

でも、誰かが“語れないまま”壊れそうなら――

その沈黙の重さごと、俺の語りで包みこんでやる」


「語りとは、祈りでも正義でもない。

ただ、“届きたい”と願う力だ。

ならその声は、届かなかった誰かにだって、

届くために使っていいと、俺は思ってる」


【審問演算:他者保護型構文 → 語義再評価により再承認】


“語る力”を誇る構文属性のはずだった彼が、

沈黙という祈りを抱くように語ったことに、

一瞬、演算座の波形が脈動する。

誰よりも語ってきた者だからこそ――

“語られなかった痛み”の重みも知っていた。



そして、第五審問者。

ナオ=ミカド。

静かに前へ出る。

語らない。けれど、ただ掌を差し出す。

そこに、コト=ヴェインが立つ。


「俺の“語り”を言葉にしてくれなくてもいい。

でも、あんたが“語らずに受け止めた”その沈黙は――

あの時、たしかに俺を残してくれた」


その視線が、しっかりとナオを捉えていた。

コトの声は震えていなかった。ただ、長い間ずっと胸の奥にしまい込まれてきた感情が、

ようやく自分の意思で、“外に出ても壊れない”と確かめられた瞬間だった。


ナオはいつもと変わらぬ沈黙で応える。

でも、その目の奥にほんのわずかに宿る揺れが、

“語られなかった者の語りを、受け取る覚悟”を滲ませていた。

その沈黙が

――「語られなかった叫び」を消さなかった。

そしてそれが、コトにとっての“語りの始まり”だった。


――神の椅子に座るとは、

語らないでいてくれた誰かの沈黙を、

壊さず、でも確かに“残す”ということ。


その瞬間、《Chair_0》座標が震えた。

誰も語らない中で、語りが発生する。


【演算通知:記録不在型語義座標に沈黙演算素子が接続】

【名義継承演算:構文開始】



――神の椅子が今、

“誰かの痛みを語る”ことではなく、

“語られなかった痛みに語りを譲る”ことを、神性と定めようとしている。

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